JINSEI STORIES
滞仏日記「パリに戻った父ちゃん、世界が一変していて、大慌ての巻」 Posted on 2021/07/14 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、ヴェネツィアの取材旅行が終わり、終わるというか、だいたい目途がつき、調べないとならないところは調べ終わったので、息子が戻って来る前に慌ただしくパリに戻ることになった。
コロナ禍でこういう時代だが、イタリアの空港はけっこう、しっかり水際対策&チェックをしている。
チェックインの時に衛生パスポートの提示を求められ、細かく、調べていた。隣のレーンの人は、2回接種を終えていたのだけど、2回目の接種終了から14日間経ってないことが判明、PCR検査をするように、と搭乗を拒否されていた、・・・すごい。
ところが、パリに到着したら、ノーチェック。行きもノーチェックだったけど、誰からも何も言われないで、スルーで外に出ることが出来た。イタリアは感染者が欧州の中では低く抑えられている。こういうところで差が出るのだろう、と思った。
パリに戻った父ちゃん、フランス携帯を取り出し、久しぶりに電源を付けたら、たくさんのSMSが入っていた。
マノンのお父さんからは、「ムッシュ、息子君のワクチン早く予約しないと大変なこと になるよー」と・・・。これは昨日のマクロン大統領の新たな宣言を受けてのことのようだ・・・。
(詳しくはこちらをご覧ください➡️https://www.designstoriesinc.com/europe/vaccination_obligatoire/)
衛生パスポートを持ってない人(ワクチン接種証明か陰性証明のどちらか持っていればよい)は8月(上旬)からカフェやレストランに入れないばかりか、ショッピングセンターとか50人以上が集まる文化施設にも入れなくなる。
電車(長距離)とか飛行機にも乗れなくなるというかなり厳しいものだ。
英国が全ての規制をとっぱらって緩和したのとは正反対、フランスは逆に、めっちゃ厳しい姿勢を打ち出したことになる。
イタリアにいる時にも予約をするか、迷っていたが、パリに戻ったら、みんなが慌てていたので、息子に連絡をし、どうするか訊いたところ、「打ちたい」というので、アプリから予約を試みたが、 と、とれない。
どこも満杯なのである。やばい・・・。
※予約の空きがありません、と出ている・・・こんなふうに。
ワクチンの予約が一時的にとれない事態になっていたことから、マノンのお父さん、アレクサンドルのお母さん、ロマン君のお母さんなどから、急いで、という連絡が相次いだ。
ワクチンに懐疑的な人たちも、日常生活が送れなくなるなら打つか、という人が殺到したのであろう。(職種によっては衛生パスポートを持ってないと仕事が出来なくなる人も出るらしい。なんだか、この後、ワクチン反対派の方々と政府が揉めそうな雲行きではある・・・)
父ちゃん、家に帰って、携帯を取り出し、アプリ(ドクトリブ)から予約状況をにらめっこ。
しかし、うちの近所は、どこも空いてない。
しかし、これ、空いてない、と諦めると、いつまでもとれないのだ。
前回、自分の時も、5分おきにチェックをしたら、空きが出たので、すかさず潜り込んで予約が出来たという混み具合であった。
しかし、ぼくが予約した直後には、またフルになってしまった。 なので、今回も、5分置きくらいに携帯をチェックし、な、なんと一時間後、ついに一か所、空席 (?)を発見、しかも、家に近いワクチン会場をゲットすることに成功をしたのだった。
明後日と来月、2回分の接種予約が出来たので、息子は9月半ば頃から、衛生パスポートを持つことが出来る。
「予約できたぞ」
と息子にSMSをいれたら、オッケー、と戻ってきた。やれやれ。 今、フランスのワクチン接種率は40%で、これではまだぜんぜん、足りないらしい。
90%の接種が終わらないと変異株の集団免疫はできないだろうという専門家もいた。
でも、カフェとか、レストランに入る時に、どうやって全ての人を、ギャルソンとか店員さんがチェックをするというのであろう。
きっと、ぼくがイタリアに持参したような紙の衛生パスポートだと偽造される可能性もあるだろうから、入口とか席で、アプリでチェックみたいな方法になるのかな。
今現在も、ノートに電話番号や住所を書かないと入れない店もあれば、書かないでもスルーで入れる店もあり、正直、不完全な状態なのに、8月上旬から全部の飲食店で厳格なチェック体制が整うのか、わからない。
ただ、それをやらないと罰金というのだから、みんな戦々恐々としている。
今、フランス政府はきっと方法を模索して、体制をづくりを急いでいるところだろうから、見守るしかないのだけど、8月までに絶対残りの人が全員打つこともできないだろうし、混乱は避けられないような気がする。海外からフランスに入る観光客はどうなるのか、など、わからないことだらけである。