JINSEI STORIES
滞仏日記「めっちゃ寒いパリで、豚骨ラーメンの自動販売機について、激論白熱!」 Posted on 2023/12/03 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、とにかく寒い。
日中は0度とか1度とか、夜になるとマイナス2度にまで下がるパリ。
ぼくと三四郎が事務所を占拠しているので、今日は久々、ジャパンストーリーズの編集部メンバーとオデオン駅周辺でミーティングとあいなった。(フランス人向けの仏語情報サイト、JapanStoriesは細々と継続中)
海外に住んでいる日本人ライターが、父ちゃんのブログを含め、情報発信しているのがDesignStories(DS)になるが、フランス人に日本を紹介するのがJapanStoriesということになる。
今までは、在仏のライターさんらが、日本を紹介する、という編集方針だったが、フランス人の読者さんに、「日本で暮らしている日本人の書き手に、もっとディープな日本を紹介してもらいたい」と指摘され、たしかに、と思って、JS編集部は日本での書き手の発掘をここ最近開始したのであーる。
で、どんな記事をフランス人読者が読みたいのか、アンケートをとってみた。フランス人46人を対象にした、アンケートであった。あはは、すくなっ。
今日は、そのアンケートの集計が終わり、全体ミーティングとなったのである。
フランス人の読者が読みたい、知りたい日本とは何か!
なんと、1位に輝いたのは、コンビニについて(コンビニの違い、商品、コンビニでの過ごし方?)、2位はラーメン屋、とんかつ屋、回転ずしなど大衆料理店の情報、3位が外国人が宿泊しやすい宿、4位が短期間で日本を満喫するツアー行程の提案、5位がディープな東京の遊び場、ナイトクラブ、カルチャーの紹介、であった。以下、温泉、蟹、美術館、アート、アニメスポット、と続く・・・。ふむふむ。蟹???
※編集会議が行われたパリ、オデオン地区のカフェ~。おされ~。
そこで、編集部のシモン・ルドヴィック君が
「辻さん、日本でライターさんを募集しましょう。その方々が書いたリアルな今の日本を翻訳して、もっとJSをグレード・アップさせましょう。パリに住んでいる日本人がパリの日本文化を紹介してもダメです。フランス人が知りたいのは、リアルなコンビニ、なんですよ。セブンイレブンとローソン、ファミリーマートの違いがぼくは知りたい。セブンイレブンのおでんの分析とか、ファミチキの解析とか、なぜ、コンビニ文化が日本人の暮らしに根差しているのか、そこ、なんですよ。この前、ソウルに行ったら、ファミリーマートが大躍進してました。そこら中、ファミマでした。ジャカルタにも日本のコンビニが大進出しています。そういう切り口が必要じゃないですか」
もうひとり、サラ・ヤマモト君が横からサラっと口を挟んだ。えへへ。
「編集長は、しょっちゅう日本に行ってるんですから、そういう切り口はないんですか? もっとディープな日本です。日本の伝統より、今のフランス人は日本人の暮らしに密着した情報を知りたいわけです」
「なるほど、シモン君、サラ君、よくわかった。たとえばだが、ぼくが日本で見つけたおもろいものの写真をみてほしい。これなんか、どうだい?」
前回の帰国時、麻布十番で発見した凄いものを彼らの眼前にたたきつけてやると、2人は、おおお、と驚きの言葉を発し、のけぞった。
「なんですか、これ」
「ラーメンの自動販売機なんですかァ? 凄い!!!」
携帯画面を拡大し、シモン君が、うなった。
「豚骨ラーメンとか醤油ラーメンが、日本では自販機で買えるんですか?」
「そうみたいだ、ぼくも生まれたはじめて見たので、写真だけ撮っといた」
「写真だけ? ダメじゃないですか、試食しないと」
「すまん、忘れてしもうた」
「それにしても、どうやって、ラーメンがここから出てくるんだろう?」
シモン君がぼくの携帯を覗き込んで、
「冷凍、調理が必要です、と書いてありますね(シモン君は漢字が得意)。冷凍の状態で出てくるんだ。そうか、つまり、自宅に戻って調理しないとならないのか」
編集部一同、腕を組んで考え込んだ。
湯気をあげた生ラーメンが出てくる絵を期待してしまったので、冷凍、というところで、ぼくらはちょっとだけ二の足を踏んだ。
「面白いですが、温かいのが生で出てきたら、もっと凄かったですね」
「うん、あ、もっとある。これなんか、どうだい?」
ぼくはあごだしペットボトル詰の自動販売機の写真を見せたのだった。
出汁は、DASHIとして、フランスでも市民権を得ている。一同の目が輝いた。
「このペットボトルの中に長崎近海で釣られたあご(トビウオ)が炭火でじっくりと焼かれ、つけこまれているんだ」
「すいません。意味がわからない」とシモン。
「うーむ、説明が難しいが、そもそもダシは魚介のエキスで作られるんだ。(正確ではありませんが、便宜上、そう説明した父ちゃん)写真だとちょっとわからないけれど、トビウオを炭火で焼くことで、ダシ感が強く出るんだよ。なかなか上等な作り方で、それをペットボトルにいれて、道端に設置した自動販売機で購入できるという仕組みさ」
おおお、と編集部一同、のけぞった。
「恐るべし、日本~」とサラ君が絶句した。
「このペットボトルの中にはあご(トビウオ)がまるまる一匹と昆布がつけこまれておる。(画像をアップして、にょろにょろ、黒いものを指さしてやった)。見た目はおどろおどろしいが、美味しい」
「これは凄い。なかなか見ることが出来ません。編集長、食べたんですか?」
「食べた。夏は暑かったから、これを冷水で薄めて、うどんにかけてホテルの部屋で食ってやった。これがなかなか美味しかったよ」
「編集長、なんで、それを記事にしないんですか?」
「え? そこか・・・。確かに」
「編集長、その写真は撮影しました?」とサラ。サラっと。
「ええええ、それか。いや、食べちゃった」
「あほちゃいますか」
シモンのお母さんは大阪出身~。
「あはは、すまん」
ということで、JS編集部のお笑い編集会議が終わった。
しかし、方針としては、そういうものをフランス人に紹介し、届けようということになったのであーる。さて、どうなることやら。
この二人は日仏のご両親のもと、パリで生まれ育った。つまり、うちの息子のように、日本語も堪能なのだ。
シモン君が来春、日本に、サラ君が夏に日本にいくので、彼らも日本の不思議な自動販売機を探して、記事を書くことになったのであーる。
デザインストーリーズではお届けできない、日本の本当の姿を、フランス人に届ける啓蒙活動は、続く。
ふー、編集会議、楽しかったす。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
ぼくは編集長ですが、名ばかりで、基本は今、新しいボランティアの子たちが中心になって考えてくれています。デザインストーリーズ編集部のセギュール・ちえみさんなども手伝ってくれています。3~5年後にはデザインストーリーズに負けない読者をちゃんと持ったウエブサイトを目指し、一同精進していきますので、よろしくお願いいたします。フランスに進出を考えている日本の企業・飲食業の皆さん、なにかコラボをしましょう。えへへ。
そんな父ちゃんの歌を聞いてみてくださいね、寒い冬に最適です。笑。
福岡国際会議場でのライブ
☟☟
https://m.youtube.com/watch?v=YIi9N-6kt5g
パリ、オランピア劇場ライブ
☟☟
https://m.youtube.com/watch?v=U8_hLfnsUik
横浜、ビルボードライブ
☟☟
https://m.youtube.com/watch?v=V6Cb_gjtLYU
めるしー。