JINSEI STORIES

滞仏日記「辻家の産業革命」 Posted on 2019/02/05   

 
某月某日、気が付けばSNSを駆使するようになり、そのために大幅な時間が割かれるようになった。「辻さん、日記毎日書かれてますけど、あれ、お金にならないんでしょ?」と言われた。その通り、毎日24時間のうち1時間は確実に時間を割かれている。でも、「あの日記、面白くてつづけてください」という読者も意外に多い。とくに面白いことを書いているつもりもないし、テーマもバラバラなんだけど、どこか小説のようだからかもしれない。そもそも小説と日記の間のようなことを目指して書き始めたので「小説」と言い切っていいのかもしれない。本当の日記じゃないから、書けないことも山ほどある。言葉を選んでいるし。でも、公開日記というジャンルの文学があるとするならこういうことだろう。昔、フランスの国民的作家モーリヤックの息子、クロード・モーリヤックが日記を書いていた。その後、出版され、そのあまりに詳細な独特な時代証言が話題になった。日記文学というのをSNSで連載する面白さこそ、現代的なのかもしれない。泡のような毎日、でも、その泡を日記の中に封印していく毎日。

日記以外にも、webマガジンのデザインストーリーズ、ツイッター、YouTubeの2Gチャンネル、インスタグラム(インスタの品の悪い広告を毎回手作業で消している僕を息子が暇人と笑う。だってさ、美観を損なうじゃん。美意識を共有できる素晴らしい広告もあるけど、なぜか、僕のところに現れるのは趣味が酷すぎる。去年までは広告がなかったので世界観が統一されていて、大事にしていたのだけど・・・。最近は下着姿のお姉さんたちが色っぽい目でこっちを見つめる内室ゲームだとか、美人秘書ゲームみたいな宣伝。ありえますか? あるいは、最新のブラジャーの宣伝とか、なんでそんなのばっかり・・・・僕が59歳のオヤジだからか! インスタグラムさん。お願いしますよ。笑)、など、僕はSNSを駆使している。電子書籍はまだ手を付けていないけれど、活字印刷と言うものとは違う世界で言葉やイメージはどうやってのびのびと存在発信できるのかを研究中だ。最近、一番ハマっているのが、息子にそそのかされてはじめた2Gチャンネル。「YouTubeは別に若者だけの発信場所じゃない。老若男女問わず誰でも使えるツールなんだよ」と言われて、上陸したところその可能性に驚かされた。最初はキャノンの5Dで撮影していたのだけれど、機動力がないので、携帯に変えてみたら、これで十分撮影できることがわかった。ただ自撮り棒持ちながらやりたくない。う~む、なんかもっとスマートにかっこよく撮影できる方法はないか、と探していたところ、OSMOに出会ってしまった。手の中にすっぽりと入るiphon10よりも小さなカメラなんだけど、この機動力たるや凄まじい。走りながらもほぼぶれずに撮影できるし、自撮りも楽々、カメラは回転するし、何だってできてしまう、まさにYouTubeになくてはならない画期的な機材であった。
 

滞仏日記「辻家の産業革命」

最新の2Gクッキング「フランス風イカ飯」はこのOSMOで撮影をした最初の動画になる。OSMOの素晴らしいところは市場、マルシェなどに潜入したとしても誰からも何も言われないし、気が付かないから通行人も自然体、カメラを見ない。逆にインタビューしたい時、OSMOを取り出すと全員が全員、これカメラ?! と驚きだして場が和む。その後の撮影もスムーズという実に優れもの。携帯に繋げることでモニター画面にすることも可能だ。このカメラを辻家が手に入れたことは大きい。例えば、前々回のフランスの肉じゃがはほぼ一日の撮影時間を要した。5Dだとアングルを決めて、カメラを固定させて、みたいな面倒くさいことの連続だからだ。その間に材料は冷めるし、やり直し、やり直し・・・。でも、OSMOだと1時間半で撮影は終了してしまう。つまり、普通に僕が作ってるところを息子が横でカメラ回せば出来ちゃうのだから。スタビライズ(手振れ)機能もついているし、焦点も勝手にあわせるし・・・。この技術革新と僕の意識改革はまさに辻家の産業革命なのかもしれない。本が売れなくなったこの時代、表現者は生き残るために、SNSのプラットホームの拡充を急いでいる。おっと、超楽しみながら、を書き忘れてはならない。面白き事なきこの世を面白く。まず、人生は楽しきことがありき、そして、工夫と努力なのである。