JINSEI STORIES
父ちゃんの料理教室「おせち炒飯だけじゃない!おせち再生術を大公開」 Posted on 2023/01/03 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、一月三日ともなると、そろそろ、おせちに、飽きはじめているのではないか。
二日目はなんとかなるのだけど、三日目、今までの経験からして、あのやさしいうちの息子でさえも、笑、
「おなかすいてない」
と、さりげなく、否定された。
これは、どこも一緒なのじゃないか。
いくら縁起物と言われても、そこまで食べられない。
そして、捨てるのは罰が当たるというものである。
そこで、毎年、おせちを作り続けてうん十年の父ちゃんが、ささやかながら知恵を授けたい。
おせち炒飯だけが再生術ではない!
そもそも、おせち炒飯には、食材組み合わせの問題や、炒め合わせる形の問題で、無理がある。
おせちの食材って、実に個性的なのである。
小魚は、炒飯の中で浮くし、カレーにはそぐわない。
黒豆も、他に、転用がきかない食材の一つである。
もっともダメなのは、数の子、さんである。
数の子スパゲッティとか、数の子炒飯とか、気持ちはわかるけれど、あまり美味しいとは言えない。
なので、これら転用がしにくい食材を最初から大量におせちにいれないことが、いまさらではあるが、コツ、となる。
いきなり、身も蓋もない結論からはじまった。まずは転用のききにくい食材は、痛む前に食べてしまうのがいいだろう。
海老とか、豚とか、牛とか、貝とか、蟹とか、捨てるにはもったいないものをいろいろと欧風に再利用していみようではないか・・・。
※ 毎年、父ちゃんはこのような豪勢なおせちを作ってきました。
※ 蟹とか海老は、再利用できます。
※ ちなみに、こちらが、2023年用、簡易おせち。不意に息子がやってくることになり、慌てて、大晦日に準備をした食材で間に合わせたのだけど、これは一瞬で完食となった。作り過ぎないこと。味を飽きさせないものでまとめることが、コツなのであーる。
では、父ちゃんのおせち再生術を・・・。えへへ。あまり期待しないでね。
まず、甲殻類、魚介類はパエリアにすることをお勧めしたい。セビリアに行った時、安いサフランを買っておいた。(サフランがない場合はターメリックとバターでぼくはごまかす)
伊勢海老や大海老やオマールやカニの甲羅に残っている身をキレイに削ぎだし、たとえば海老の頭部には味噌がびっしりと入っているので、これで魚介だしを作ることから始めよう。
海老の頭部を捨てるのは本当に愚かである。あそこが一番おいしいのだ。
(新鮮な海老の場合である)
この魚介だしは万能なので、スープはもちろんのこと、パスタでもラーメンでも何にでも使うことができる。
巻貝はパエリアよりもニンニクとオリーブオイルでアヒージョにするといい。
ぼくはそうしたけど、本つゆと砂糖を加えれば簡単につくだ煮だって作ることが出来る。
アヒージョはガーリックの香りが食欲をそそるので、海老とか、牡蠣なんかでも美味い。
おせちからのアヒージョは、息子も「あひー」と唸る美味さである。お試しあれ。
再生術、その2.
筑前煮を、どうするか、・・・。
筑前煮はカレーやカレーうどんに変化させるのが一般的だ。
でも、一工夫すると、ぐんと美味しくすることが可能なのだ。
たとえば、筑前煮からの餃子など、いかがであろう。
もしも、焼き豚とか、唐揚げなどがあるならば、ミキサーにかけミンチにして餃子に詰める。
(蓮根だけは食感が大事なので包丁で粗みじんが良い)
ニンニクと生姜をたっぷりと加えることで極上の餃子が出来上がる。
正直な話し、中身は工夫次第で、なんとでもなる。
どうせ、家族に見切られた余りものなのだから、失敗を恐れてはならない。
餃子に生まれ変わった筑前煮や、焼き豚や、唐揚げは、きっと、喜んでいるに違いない。
あ、蟹の中身というのは子供があまり好きじゃないので、もったいない話だけど、これと卵で蟹チャーハンという手もあるけれど、ぼくなら「蟹酢」にする。
日本酒のお供にちょうどいい。
おっと、パエリアだけど、刻んだ玉ねぎやニンニクなどを炒め、そこに研いだ米を投下し、さらに甲羅やエビ頭で出したストックや白ワインなどを加えながら、はじめちょろちょろ中ぱっぱ、と手際よく調整していく。
残った海老の身などは完成してから盛り付ければいい。リゾットにするならば、最初に米をフライパンで炒ってから、ストックを加えていく。
手順が違うが、どちらも美味しい。
なんならフライパンごと、食卓に出して、スペインっぽく家族でつついて食べるってのは、どうだろう。オーレ!!!
正月の気分が一気に変わる。
アンダルシアの風が吹き抜けていく~。
家族が幸せならば作る者も幸せになる。それが家庭料理というものであろう。
お試しあれ!
さて、次の地球カレッジは、1月29日、日曜日になりました。参加を希望される皆さん、以下をご参照ください。
「エッセイの書き方教室、第1回」
今回の地球カレッジ「文章教室」は、どうやってエッセイを構想し、実際に書き、また、推敲をしていくのか、についての講座となります。課題応募されたエッセイの中から選ばれた数本のエッセイを、辻仁成が細かく指導、推敲、研磨していきます。
「エッセイ依頼内容」
今年最初の課題は、また一から、食にまつわるエッセイとなります。
「お子さんやパートナー、家族、同居人に日々作る、作ってもらっている、頂いている、ごはん。外食も含め」について、その人生の深部、喜怒哀楽を書いてください。題して、「日々のごはん」です。字数は1000字前後、1500字以内、とします。締め切りは1月22日とさせていただきます。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。