JINSEI STORIES
退屈日記「ぼくは仏人ママ友グループと在仏日本ママ友グループに在籍中」 Posted on 2022/03/02 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、在仏20年選手になったが、日本のママ友も、フランスのママ友も同じくらい増えた。
どっちがやり取りが多いかというと仏人ママの方が圧倒的に親しいが、現実的なアドバイスをくれるのはやはり、同胞の在仏日本人ママ友たちだったりする。
もっとも、日本人ママ友は
1,純粋な友人
2,デザインストーリーズのライターさん関係ママ友
3,そこまで親しくないけど互助会的なママ友
にわかれる。
2は、仕事を通して知り合っていき、お子さんを通して、親しくなった方々である。3は、渡仏直後に知り合った日本人ママさんたちで、先輩が多く、手厳しい。1は、自然とこっちで仲良くなったママ友さんを通して、そこのグループに招かれ、親しくなった方々・・・。日本人主婦連合、みたいな。笑。
在仏日本人のパパ友はうどんや「国虎」の野本さんとか、料理関係者、カメラマン関係者が多いかな。ま、飲み仲間なので、ママ友とは本質が異なって、飲むだけ、有意義な意見交換はほぼ、ゼロ・・・。
ママ友は、ご主人がフランス人の日仏カップルが多い。
シングルファザーのぼくには、実に有意義なアドバイスをくださる、ご意見番の方々ばかり・・・。
とくに、離婚直後、にっちもさっちもいかなかった時に、法律問題、ビザ取得問題、教育問題などで支援してくださった、本当に、ありがたい存在なのである。
※ こちらは南仏のよーこさん、ダヴィッドさんご夫妻。デザインストーリーズで出会い、親しくなった。二人は最近、南仏料理の本を出しました。
ところで、日本人ママ友に負けないくらい、いや、それ以上かな、仲のいいフランス人のママ友は多い。
分類すると、
1,息子の学校のお母さんたち
2,ご近所のママ友
3,ほんの少しだけど、文学・音楽関係
に分かれる。
仕事関係で友だちになった人はいないかな・・・。
とくに親しいのが、レテシアを中心に集まった、息子の学校のママ友たちであろう。
ちゃんと数えたことはないけど、10人前後はいるのじゃないか・・・。
基本、携帯でつながった友だちである。
フランス版ライン「ワッツアップ」にも招待システムがあり、そのグループに男性としては唯一参加させてもらっているのである。
ぼくがいつも学校行事で浮いた存在だったからか、お母さんたちの方から、「よければ参加しない? フランス語の勉強だと思って」と声をかけられたのがきっかけであった。今から9年ほど前のこと、そうだ、離婚直後・・・。
グループ名は「ジャンヌダルクの黄昏」となかなかに豪傑な名を冠している。
もっとも、ぼくはここで滅多に発言はしない。
オブザーバーみたいな立場をとっている。
仏語が苦手ということもあるけれど、この会、名前負けしていて、ゴシップ話しで一日盛り上がったり、ちょっとだけ、えげつないのである。笑。内緒ですよ・・・。
仏人ママ友の会の中にレテシア、マリアンヌとかオディールのように親しいマダムもいれば、一度も話しをしたことがないマダムも何人かいる。
その中にポーラ(仮)という女性がいる。
多分、東欧出身で、元旦那がフランス人だ。
最近、離婚したばかりだが、原因がとっても複雑。この人からメッセージが入るとぼくは食い入るように読んでしまう。
何せ、一番内容が濃く、面白い。
ぼくのフランス語が上達したのはポーラのおかげかもしれない。ここのところの話題は、離婚の後も、まだ裁判が続いている、とまるで裁判記録みたいなものなのである。
フランスの場合、日本とは異なり、親権は必ず離婚後両方の親が持つことになっている。
でも、元夫は「ポーラは子供たちを精神的に支配していて、あれしちゃいけない、これしちゃいけないと洗脳して、子供が子供らしく生きることが出来ない」と言い出し提訴した。
つまり離婚後、裁判沙汰になっているのだ。
もちろん、一方からの意見なので、詳しいことはわからない。マリアンヌというお母さんが「あんた、裁判って、何をやったの?」とグループチャットで聞いた。
「普通のことよ。テレビをいつまでも見ちゃダメ、とか、好きなものばかり食べちゃダメ、とか、普通の親が言うことしか言ってないの。でも、彼は子供たちに、お母さんがぼくらにいろいろな強制をすると文書を書かせて、それを警察に届けたのよ。自分は子供にはハンバーガーしか与えないし、ゲームし放題させて、そりゃ、好かれるわよ」と激怒。
にわかに信じられない話だけど、それはたしかにそうらしい。するとワッツアップのチャットに「酷い男だ、別れて当然」などの同情メールがわんさか入った。
ぼくはフランス語が得意じゃないしこれだけだと判断できないので、大変ですね、とだけ戻しておいた。
ところが、そのグループワッツアップの外で、他のお母さんたちから「実は、あの人も悪いのよ、時間にルーズだし、学校行事には参加しないし、どうやら浮気もしているようだし、それをご主人に目撃されたという話しもあるし」と教えられてしまうのだ・・・。
ポーラの裏事情を暴露してくる人が、こともあろうに二人くらい、いた。やれやれ。
言いたいことがあれば直接言えばいいじゃないですか、と告げたが、この件に関して返事は戻ってこない。
あまり言い過ぎるとグループを除外されてしまうので、・・・。
内心はやめたいのだけど、下手に抜けると、息子が困るかもしれないので、黙っている。国が違っても、陰口というのはそんなに変わらないということである。あはは・・・
ともかく、ママ友のグループに所属していることで、教科書では決して学ぶことのできないフランスでのリアルな社会面を勉強させて頂いている。
いい時もあるし、厄介な時もある。
いい意味でも、悪い意味でも、彼女らはママ友なのである。
きちんとした距離感を持っていれば、ぼくには常にいい教師でもあった。
もちろん、フランスという国を知る上で・・・。
つづく。