JINSEI STORIES
リサイクル日記「自分が変われば出会う人も変わる」 Posted on 2022/08/06 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、ふっと思うことがある。人間ってどうやって人を集めているのだろうって。なんで人が集まってくるのだろう。その出会いには何か理由があるのかな?
出会いって単語が日本語にあるけど、出会うって偶然じゃないんだよね。
もしも、ろくでもない、悪い友達に囲まれてるとするなら、それは今の自分が彼らを集めてるからじゃないかって、思うことがある。
いい人に囲まれるにはどうしたらいいのかなって考える。ぼくの歌の中に、「自分が変われば出会う人が変わる」という歌詞がある。
この曲は昔、ぼくが比叡山に登った時に生まれた。
根本中道で手を合わせ下山しようとしていた時、比叡山の入り口に、一隅を照らす、と彫られた石柱を発見した。
伝教大師最澄の言葉だそうだが、この言葉の本来の意味とは無関係に、この響きから僕はメッセージを受け取った、気がした。
考えて作ったものじゃなかった。
あとから、意味がつけられていく。
そのことを誰かに説明するのが難しかった。でも、ぼくが言いたいことはだいたい、次のようなことである。
人間って、いい人たちに囲まれるとやっぱり穏やかで楽しい人生になる。
人の悪口が大好きな連中とか、悪いことばかりしているような仲間たちに囲まれているとやっぱりそういう影響を受けてしまうのは当然で、気が付くと、人の悪口とか同じように口にする人間になる。
だから、いい人に囲まれたいと思うのだけど、誰がいい人か見分けるのも簡単じゃないし、そもそも、いい人なんてそうざらにいないし、出会い方もわからない。
じゃあ、どうする?
一番手っ取り早い方法はまず自分が変わることなのである。
悪いやつらとはつるまないと決めたり、自分は自分なんだから自分らしく周りに関係なく生きていこうと思ったり。
こういう当たり前のことって、簡単そうだけど、気づけば簡単なんだけど、気づけないことの方が多い。
でも、ちょっとものの見方を変える。
今いる場所から、少し距離をとってみる。
意識して、自分を変えてみようと思うこと・・・。
自分が目指す理想の人間に精進していけば、おのずと、出会う人も変わってくるということなる。
それは実はそんなに難しいことじゃない。
自分が変われば、出会う人も変わるのだ。
今朝「コトノハナ」を歌ってみた。昔の自分に教えられた気分になった。
悪口を言われたくないから、ぼくは言わない人間でいたい、とこの歌を作った時の自分の気持ちを思い出した。
世界を変えたいのならば、まず、自分が先に変わる方が近道なのである。
過去の自分にいいことを教わった。そういう今日が悪い日であるはずがない。
人生は長いものだから、大勢の人と出会ってはすれ違っていく。
その長いストーリーをたまに読み返してみると、同じ過ちの繰り返しに気づくこともある。
出会う人はだいたい自分が招いているものだから、まずは、自分が変わってみるのが、違う世界への入り口からもしれない。
比叡山の入り口に書かれていた「一隅を照らす」
これは今日の本題とは関係ない言葉だけど、とってもいい言葉なので、ちょっとだけ自分の意見を残したい。
一隅を照らす、には、「片すみの誰も注目しないような物事に、ちゃんと取り組むことが人間にとって大事なこと」が含まれている。
実際には、対句があり、「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」となる。
この世界で派手に活躍することだけが立派じゃないよ、ということだといわれている。
今朝の日記にも書いたけど、みんなが、それぞれ、自分の居場所で、出来る精一杯の人生を言い切ることが、つまり、そこで、一隅を照らして生きることが、つまりは、そういう意思が共時的に集まって、世界を幸せに導く一番の方法なのかもしれない、という教えであろう・・・。
この一隅を照らすことで、この世界が成り立っているのだから、自分にはそんな力がない、などとがっかりする必要はないのである。
何かに気がつき、顔を上げた時に、そこに指す光りのなんと尊いことよ。
「コトノハナ」のPVはこちらだよ。
↓
https://youtu.be/pbRxhJaTULA