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暮らしの日記「父子家庭のおもてなし術」 Posted on 2020/08/22 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日は昨日の日記の予告通り、我が家にママ友数名が食事にやってくる。土曜日ということもあり、キャンセルされたり、いきなり行きたいと言い出す人がいたりで、最終的な人数が見えないが、3~4人かな。ともかく、朝から料理をはじめた。お招きするからには「美味しかった」と思ってもらえる料理と時間を創出したい。そこで、ぼくは料理を担当し、相棒の息子君には部屋の掃除をお願いした。各部屋に掃除機をかけ、雑巾がけをし、トイレ掃除をやり、ごみを出す、など、彼の仕事はてんこ盛りだが、まんざらでもないみたいで、楽しそうにやっている。こっそりと覗きに行ったら、ちゃんとカーペットの下も掃除機をかけていたので、偉い。こうやって、生活に参加させることで、子供は大人化していくのだ。

暮らしの日記「父子家庭のおもてなし術」



コロナの時期なので、マスクを着席するまでしてもらい、入室と同時に、息子が全員の手を消毒。靴は脱いでもらい、荷物は指定の場所に置いてもらう。体温測定器で額の温度も図るという細やかさで、日本人は普通ここまでやります、と言っとくと文句は出ない。みんな日本人の真面目さを尊敬しているからである。消毒ジェルもいろいろと取り揃えており、好きなものを選んでもらう。笑。フランスは感染者が増えて、全土で4000人ほどとなった。昨日のテレビ番組で科学者がウイルスの感染力が強まっていること、しかし、弱毒化していて、集中治療室の数は感染者数に対して低く、増えていない、と語っていた。

暮らしの日記「父子家庭のおもてなし術」

さて、料理は想定していたものよりも一品増やすことになった。あれもしたいこれもしたいというアイデアが沸いてくるが、大事なことはお客さんを飽きさせないことなので、ぼくが出来るだけテーブルを離れないことが大事となる。午前中はお皿を決め、サーブする順番を決め、その手順を息子に教えた。この後、リハ―サルもやり、息子には白シャツを着てもらい、ぼくはエプロン姿にコック棒といういで立ちで決めた。よし。

本格的に指導しているうちに、息子君、楽しくなってきたのか、真剣さが出てきた。フォークナイフの置き方はもちろん、サーブする時のお皿の置き方、お皿の下げ方、和食なのでご飯とスープの関係などについて、蘊蓄を語ってやった。(後で気が付いたのだけど、今日はお椀が無かった。あへ)

暮らしの日記「父子家庭のおもてなし術」



おもてなし、という言葉は日本独特のものだけれど、ぼくはいい言葉だと思う。フランス人にも人を招く時のやり方があるようだが、日本人のおもてなしのようなしっかりしたものではなく、もっとフランクだ。そういえば、マクロン大統領に招かれベルサイユ宮殿の晩餐会にお招きされたことがある。(自慢、笑)さすがに、その時のサーブはすごかった。ベルサイユ宮殿の晩餐会は、ゲストの数よりも多い給仕たちが二列隊列で料理を持って軍隊的に入室し、各テーブルに同時について、同タイミングで、一斉に料理をゲストの前にさっと置いてみせるのだ。思わず心の中で、ぎゃおおおお、すんげーーー、と叫び声をあげてしまった。いやはや、本当に素晴らしかった。

その時の、動画はこちらから⬇️



それと比較して、フランス人の家に招かれるとめっちゃフランク、料理に辿り着く前に3時間くらいアペリティフがあって、テーブルについた頃には疲弊しきってたりする。徹底的に会話が中心で、正直、料理はたいしたことがない。笑。辻家の夕食会は日本スタイル、アペロは短め、すぐに、アターブル(ご飯だよー)、とする。なぜなら、ぼくは彼女らに、自分の料理を披露したいのだから、食べる前にへべれけになってほしくない。彼女らが、ぎゃおおおお、すげーーー、と心の中で叫んでくれるのを、小さな目標としている、日本のおもろいおやじなのであった。さて、デザートも二品に増えたし、詳しくは明日の朝の日記へと、≪続く≫

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