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リサイクル日記「まず動き出せ、まず動きだすことでしか、突破できない」 Posted on 2022/07/12 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ぼくはいつも自分にはっぱをかける時に、「まず動け、まず行動をしろ、ぐずぐず悩むな」と言い聞かせている。人はだいたい、よく考えろ、という。でも、よく考えているうちに時期を逃すというのは真実で、臆病であっては新しいことはできない。間違いなく後悔に繋がる。思い立ったら、すぐに机に向かうべきだ。思い立ったら、スタートラインに立つべきだ。「思い立つ」という言葉は「思い」が「立つ」ことを意味する。言霊がそう教えてくれている。



「思い付く」のは「思い」が「付く」のである。「思い付き」をバカにしてはいけない。思いが付いたからこそそこに始まりが生じる。思い付きさえなければ、何も結果は出ないのだ。その思い付きをバカにするのは一生行動が出来ないことを意味している。コロナ禍のようなこのような大変な時期だからこそ、思い立つ、ことが大事だ。

努力というのはそこからスタートするものだ。思いのない努力はありえない。思い付き、思い立ち、机に向かって、何か一行を書き出せば、自分の思いは実現へ向かって動きだすのだ。思い付き、思い立ち、スタートラインにまず立つことが、物事を始める一番大事な筋道なのである。スタートラインにも立たず、観客席にしゃがみ込んで、誰かがスタートするのを待っている人間であってはならない。グランドに降り、スタートラインに立て。そこからしか、物事は動かない。自分がどれだけのやる気があるか、それが最初の思いなのだ。



だから、ぼくは悩んでいたり迷っている時は「迷わず行動しろ」と自分にはっぱをかける。失敗もあるだろうが、道が開ける可能性の方をとりたい。いやいや、若いのだ、失敗を恐れるな。「まず動き出せ、まず動きだすことでしか、突破できない」と自分に告げる。「一点突破全面展開」という言葉がある。まずは穴をこじ開けろ、そこから一気に世界を開けていけ、という意味である。ぼくは、何かを始める時、いつも自分は最初の一点を突き抜ける弾丸だ、と自分に言い聞かせている。迷っている暇などない。まずは動きだすことである。

リサイクル日記「まず動き出せ、まず動きだすことでしか、突破できない」

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