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滞仏日記「災害とコロナ、今、もっとも気がかりなこと。台風シーズンを前に」 Posted on 2020/07/08 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、豪雨によって50人以上の人が命を落としている。胸が痛い。災害とコロナということを考えた。ブラジルやインドで感染が拡大している。夏になってもコロナが沈静化する見込みはなさそうだ。これから台風のシーズンに入る。去年の台風の被害は甚大だった。地球はどうしてしまったのだろう。今年が去年よりもおとなしくなるとは到底思えない。大きな台風が次々やって来て、人々が避難をすると、3密になる可能性が高くなる。地震だって大きいのが来るかもしれない。関東に大地震が起こったとする。避難所に人が溢れかえった場合、コロナの感染をどうやって防げばいいというのだ。実際、感染しなかったとしても、神経質になるのは当然で、倒れる人が出てくるかもしれない。十分に想定できることで、同時に、そうなると分かっているわけだから、十分に今からでも準備が出来る。それが危機管理能力というものであろう。新型コロナの出現はさすがに予知できなかったにしても、台風や地震が来ることは子供にだって想像できることだ。



ぼくが今、一番懸念しているのは、自然災害とコロナとのダブルパンチをどうやって防いでいくかということでもある。何度もツイートしているので、この日記を読んでくださっている皆さんは、建築家、坂茂さんとぼくとの対談を読まれて、その対策方法があることをすでに理解されていると思う。坂さんが考え出した「間仕切り」はプライベートを確保した上で、コロナの感染をも抑制するという優れたものだ。坂さんは、出会った10年ほど前から、ずっと、世界中の被災地を回って「間仕切り」の避難所を設置し続けてきた。彼が凄いところは政府に頼まれたからやるのではなく、危機意識を持って、建築家としてやるべきことだと信念で行動している点である。ぼくは熊本地震の直後、益城町の避難所に設置された「間仕切り」を実際に見て、避難されていた高齢の方々と話しもして、彼の行動力と知恵に感動した。でも、一個人がやれることには限界がある。せっかく、素晴らしいアイデアなのに、これを震災に生かせないのは本当にもったいない。大勢の人が避難をして、社会的距離など関係なく一晩を過ごさないとならなくなった場合、感染する確率が高くなる。でも、坂さん考案の「間仕切り」があればある程度それを防ぐことも出来るのだ。災害とコロナ、この問題はこれから台風シーズンが始まろうとしている日本には緊急で考えないとならないことだと思った。
※坂さんと2016年に行ったインタビューの前編、後編をここに入れておきたい。関心のある方には読んでみて頂きたい。坂茂という人間が分かる。

坂 茂インタビュー前編➡️https://www.designstoriesinc.com/special/h_tsuji-interview_shigeru_ban1/

坂 茂インタビュー後編➡️https://www.designstoriesinc.com/special/h_tsuji-interview_shigeru_ban2/

滞仏日記「災害とコロナ、今、もっとも気がかりなこと。台風シーズンを前に」

※この写真はぼくが熊本地震のあと、坂さんの「間仕切り」を見るために熊本益城町の避難所を訪れ、撮影したもの。本当に、有難い、とおばあさんが言っていたのが印象的でした。



自然災害というのは、不意にやって来る。今回の大雨にしても、大雨になるというのは予報出来ていたけど、蓋を開けるとこんなにすごい被害が出てしまう。こんなに多くの犠牲者がでてしまう。実はコロナだって、何年も前から感染症が世界を破壊することを予言していた科学者や経営者はいた。でも、ほとんどの人がその時は遠い世界の話しだったのだ。これだけ科学が進んだ時代だというのに、いつだって、蓋を開けてみるまでわからないのである。台風も地震も、出たとこ勝負のようなところがある。喉元過ぎれば熱さを忘れる、という言葉はまさに言い得ている。備えあれば患いなし、という言葉も同じだ。人間はなかなか学習できない。でも、今回ばかりはそうは言ってられない。来るべき日のために、今すぐに準備に取り掛かろう。

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