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暮らし日記「フランスのキャリーバックが凄い。この技術力にやられた」 Posted on 2020/06/20 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、買い物は毎日行くのだけど、週に一度、ワインとか飲料水や米とかパスタ類とか日持ちする食材など大量に買い込まねばならぬ日がある。今日は家から出ないひきこもりの息子を連れて近所のスーパーに大量買いに出掛けた。実は今のアパルトマンは4階なのだけど、エレベーターが無い。広い物件だけど、エレベーターが無いことで家賃が安い。ぼくは足腰の鍛錬になるからエレベータなど必要ない、広いに越したことはない、と思ってここを借りたが、この重い食材を4階まで上げるのが異常に大変なことに後で気がついてげんなりした。これまで使っていた普通のキャリーバックだと階段を一段一段、引きあげながら登っていくしかなかった。ところがある日、80歳は過ぎているおばあちゃんが軽々とバックを引っ張り階段を上げているのを目撃した。普通のキャリーバックは車輪が二つなのだけど、よく見ると、それは六つもついていた。さっそく金物屋に行くと、店員さんがおばあちゃんが持っていた六輪のキャリーバックを奥から引っ張り出してきてくれたのである。



このキャリーバックの凄いところを解説したい。まずはこの2枚の写真を見てほしい。最初の車輪が階段にぶつかり、そこを軸にして次の車輪が次の階段にフックし、バトンを渡すとさらに次の車輪が次の階段にフックしていくという、まるで観覧車のような感じで次から次に軽々と荷物を持ちあげる仕組み、構造を備えているのである。

暮らし日記「フランスのキャリーバックが凄い。この技術力にやられた」

暮らし日記「フランスのキャリーバックが凄い。この技術力にやられた」

二輪だと一段一段ごとに引っ張り上げないとならないのに、この6輪だとぐるぐると巻きこむように上がっていくので、全く力を使わないで済む。年配の、高齢者の方々でも重たい荷物を上げることが出来るすぐれもの。フランスは建物が古いので、エレベーターを入れたくても入れられないところが多い。しかし、このキャリーバックを使うと高層階であろうと楽々と引っ張り上げられるのだ。息子が面白がって、その原理を調べていた。
「パパ、これはかなり頭のいいアイデアだね。思いついた人は天才だ」
と豪語していた。

暮らし日記「フランスのキャリーバックが凄い。この技術力にやられた」



しかし、問題点もあって、6輪なので小回りが利かず、曲がる時にちょっとだけ不便なのである。それでも買い物が楽しくなって、最近は息子がこのキャリバックを引っ張って手伝ってくれるようになった。重たい荷物が軽々と持ち上がっていく時の心地よさは格別である。ぼくの買い物ライフはこのキャリーバックのおかげで一段と楽しく楽ちんになったのである。買い物主夫の嬉しい報告でした。

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