JINSEI STORIES
ゴッホの世界で生きる父ちゃんのランチ、トロフィエのトマト・パスタ! Posted on 2025/04/17 辻 仁成 作家 パリ
ぼくがいま、三四郎と生きているところは、フランスといっても、もはや、パリではなく、ゴッホがかつて描いていたような村のしかも片隅なのである。
人とすれ違うこともめったにないが、野鳥ばかり、牛、馬、動物天国である。
三四郎は、ある種、戦々恐々と生きている感じだけれど、ま、次第に、慣れてきたかな。
牛を三四郎が生まれて初めて目にした瞬間、回れ右した、
馬が視界に入った瞬間も、ひゃああ、回れ右、であった。あはは。
小犬には、無理もない。
でも、汚らしいものがない、自然の中なので、じょじょに、この美しい宇宙にも慣れてきた、ようだ。
綺麗な生き物、星、月、太陽、草、樹木、なんとも素晴らしい。
ゴシップのない、悪口陰口もない、静かな世界である。
ぼくは三四郎と走って、心のコンディションを整えている。
エネルギー充電が終わると、ぼくはアトリエにこもり、絵や、小説や、様々な作品をうみだしているのだ。
ということで、ちょっと、見てみますか? ぼく暮らすフランスの田舎世界・・・。
小説に出てくるような、壮大な世界だ。
ゴッホと時々、すれ違う。
「やあ、つじ、元気か?」
「ええ、なんとか、やってます」
「そうかそうか、でも、描き続けることだ。いいな。どんどん描け」
「はい、ありがとう」
ぼくは日本人っぽく、お辞儀をして、ゴッホと別れ、アトリエに戻ると小さなキッチンで、パスタを作った。
ということで、今日、みなさんにご紹介するのは、生ソーセージを使った、トロフィエ、という名前のパスタ。
材料は、コストコとかで売っている生のソーセージ、そして、トマト、あと、トロフィエという名前のイタリアのパスタ。
ミニトマトをココットにいれて、弱火から中火で火をいれ、とろとろになるまで炒める? オリーブオイル、にんにく、唐辛子、アンチョビ、など好きなものを放り込んでよし。
で、トマトが、形を失ったら、缶詰トマトも、いれちゃおう。
トマト系のパスタの作り方と一緒なんだが、違うのはここに生ソーセージの中身を千切って、放り込んでいく、こと。
生ソーセージは、腸詰というくらいだから、ハーブとかで味付けされたマリネ豚肉がつまっている。
生めんたいこを包丁で切り目をいれて、中身を出すあの要領で、生ソーセージに縦に切り目をいれる。
腸だから、するっと皮がむける。
魚肉ソーセージの周囲のビニールをとる感じで、するっと中身だけになる。
別に皮が付いていてもいいじゃないか、という意見はその通りなんだけれど、この中身だけになったソーセージを手でちぎって、鍋にいれる、というところが、めっちゃ、ポイントになるのだ。
ちょっと無骨なひき肉団子みたい、出来の悪いポルペッティになる!!!
なんのためにわざわざ腸詰にしたのがわからないところに食の不思議が存在する!
あはは。マジです。
ともかく、生ソーセージの中身を千切って、トマトソースの中にぶちこんで、ぐつぐつ、煮てもらいたい。
そしたら、ちょっと硬めに茹でたトロフィエを、ココットの中にいれて、よく混ぜて、お皿に盛れば、完成だよ。
あ、パルメジャーノ・レジャーノなんかをたくさん、いれた方が美味しい。
じゃじゃーん!!!!
これが、最高なんだよ。コストコとか、楽天とか、どっかのお肉屋さんで、生ソーセージ見つけたら、やってみてね。
ま、適当な料理のように見えるかもしれないが、父ちゃんは、こうやって作ることが多い。
フランスで売られている生ソーセージは、シポラータという。
だから、ぼくはシポラータのパスタと呼んでいる。トロフィエじゃなくて、リガトーニでも、どんなショートパスタでもいい。
いや、スパゲッティでも、なんでも、おいしい。
やってみて、ボナペティ!
そして、父ちゃんの日仏展覧会最新情報です。
・2025年、5月15日から、パリのグループ展に立体作品を一つ発表します。会期は5月15日~6月中旬くらいまで、一か月、パリ、マレ地区の画廊20THORIGNY。
・7月9日から日本橋三越本店、コンテンポラリーギャラリーで、2週間、個展「LE VISITEUR TOKYO」開催。
・7月23日から、岡山天満屋本店で、六日間、「LE VISITEUR OKAYAMA」開催。
・10月13日から、パリ、20THORIGNY画廊で、2週間、個展開催。
・2026年、1月15日~3月15日くらいまで、二か月、パリ、日動画廊にて、グループ展に5作品展示予定。(詳細は決まり次第、発表します)
ここまで、だいたいですが決まっています。その後も、2027年まで、パリでの展覧会、決まっていますが、ちょっとまだ早いので、詳細は、また、こんどね・・・。