JINSEI STORIES
不仲説を打ち消す夫婦愛をもろに浴びて、呑むしかない父ちゃん Posted on 2025/04/13
ぼくは出不精で、日本人の友だちが少ないから、家呑み男だが、ちょっと気分を変えたいのと、来春にパリ日動画廊のグループ展(2028年1月から3月、らしい。詳しくはまたね)に声をかけたらたこともあり、日動画廊の下見に行き、その帰り、オペラ地区にある「スタンド虎」というバーにふらっと顔を出した、中年の後半にさしかかっている、日本の父ちゃんなのであった~。
そこは、ますみさんというママさんが一人でやっているジャズバーなんだけれど、そのますみさんの旦那が、ぼくの数少ない日本人の友人、野本、なのだった。
なんと、びっくり。
ぼくは、その店に行くのは二回目だった。
ふらっと立ち寄ったら、なんと、満席で、ぼくは端っこの席に陣取った。大盛況。野本に「店しめたら来いよ」とメッセージを送っておいた。
日本人が少なくなったパリだったが、日本語が飛び交い、まるで銀座のBARのような盛況ぶり!
カウンターしかないけれど、ウイスキーとか日本酒がのめて、おでんが食べられる。パリでは数少ないジャパニーズバーなのである。
まもなく、野本がやってきた。横で呑もうと言ったが、カウンターの中に入った。
恥ずかしがり屋で、嫁さんの話など、絶対に、しない。
高知の男だから、いちゃいちゃとかしたないし、のろけとか聞いたこともない。
だから、
「もっと嫁さんのこと大事にしないと捨てられちゃうぞ」
とぼくが言ったら、奥にいたますみさん、珍しく、血相を変えてやってきて、
「辻さん、不仲説を流布しないで! 私たちは愛し合っていますよ」
と満員のお客さんの前で、宣言、御覧いただきたい、この写真・・・
独身の寂しい父ちゃんにあてつけるように、このポーズ、普段ものしずかな縁の下の力持ちのますみさんが、ここまで野本に接近したのを見たのは、在仏23年になる父ちゃん、はじめてのことで、思わず、震えてしまった。
「あの、写真、撮影してもよかと?」
「ええ、撮ってください」
カメラを向けると、恥ずかしがり屋の野本が笑顔になった。
ああああああ、この夫婦愛、なんなんだよ。
※ なんだよ、なんだよ、この幸せそうな二人・・・。
あのね、ますみさん、いつも3歩下がって高知の男を支える昭和の女っぽい人なんだろうな、と思っていたのだけれど・・・、こんなに野本のこと離さないんだ、すごいな、愛しかない、と思ったほどの行動力。
父ちゃんたじたじ・・・。満席なのに・・・。みんな幸せそうな笑顔に包まれた。
そして、何より、かわいい。
野本がうらやまし過ぎて、言葉を失った、独身父ちゃん。
「なんだよ、みせつけんよな」
と野本に小言を言っておいた。あはは。
この「スタンド虎」みたいなカウンターだけのジャパニーズバーは、フランスではたぶん、他にはない。
でも、日本文化好きフランス人で、けっこう、賑わっているのだ。
子連れの仏人親子もいたし、近くのラーメン屋、寿司屋の料理人もあつまり、通りまで多くの人が溢れ、ここは新宿か、という光景。
なごんだ。
たまには、これでいいのだ。笑。
ということで、今日は料理をしなかった。
たまには、外で食べるのもいいね。
日動画廊の崇子さんに美味しい韓国料理をご馳走になり、そのあと、ますみさんのバーで、食後酒を飲んで、野本が作った「からすみ大根」つまんだり、久しぶりにキッチンから離れた父ちゃんでした。
いいよね、そんな日があっても・・・。
ということで、ええと、二日酔いです、笑。
さーて、パリ個展にむけて、仕事に戻りますかね・・・。
つづく。
野本にまけないくらいの親友だった、コロナ禍の時代に急逝した七草諭カメラマンの息子、つばさくんが、不意にそこにやってきたんです。というのも瓜二つで、今彼もカメラマンを受け継いだみたいで、びっくりした父ちゃん。顔も、声もそっくりで、帰り際に、
「つじっち、またね」
と言い残したのだけれど、それが諭と全く一緒で、思わず、号泣しちゃった、ほろ酔いの父ちゃんでした。人間って生きているといろいろとありますね。つばさが諭にそっくりになっていて、ううう、泣ける。
※ 「変な顔して」とお願いしたら、今日は、これです。まだ酔ってないから、ドライブがきいてなくて、すいません。
お知らせ、父ちゃんの生放送ラジオは、次回、15日、日本時間22時からです。朗読とか、やります。詳しくはTSUJIVILLEから
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