JINSEI STORIES
アクアパッツア、家族を喜ばせる10分で出来る最強レシピ公開!! Posted on 2025/03/29 辻 仁成 作家 パリ
三四郎は寝言をいう。
覗くと、寝ているのだけれど、前脚を蹴っている。たぶん、夢の中で、走っているのだ。
小さく、吠えていたりする。夢の中で出会った犬に吠えているのかもしれない。
三四郎は、時々、背中を向けて、考え込んでいることがある。
何について考えているのかわからないけれど、うなだれて、遠くを見ている。
どうした? と訊ねると、お尻をくっつけてきて、ため息をつく。
この子はよくため息をつく犬なのだ。
おやつか、というと、いきなり振り返って、目を輝かせる。
しゃーないから、ビスケットを一枚与える。
食べ終わると、また、ボクにお尻をくっつけ、遠くを眺めている。
頭はそれほどよくはないが、笑、感情だけはけっこう豊かだと思う。
他の動物たちはどうかな?
牛とか、うさぎとか、豚とか、ワニとか・・・。
あまりに、感情が豊だから、人間みたいだな、と思ってしまう。
この子の、生きる使命とか、生きる意味とか、考えながら、ボール遊びをしてあげた。
犬にとって一番の敵は、退屈、なのである。
ぼくが仕事をしていると、ずっと、仕事が終わるのを、横で、待っている。(いい子ですよー。感謝しかない)
創作に没頭すると、三四郎のことを忘れてしまう、ダメな父ちゃん。
それでも、彼はどこにもいかず、ぼくを待っているのだ。
犬には、癒されて、ばかり・・・。
今日は、パリが陰鬱だったので、気持ちを明るくする料理を作ることにした。
午後から、弟子の長谷川さんが、引っ越し(アトリエに仕事道具を運ぶ)の手伝いに来てくださった。
アトリエには書庫(屋根裏部屋を改装した)をこしらえたので、そこに書物を送るので、数千冊の本の荷造り・・・ひゃあああ。
渡仏して、買い集めた古いフランスの本などが、数千冊・・・。
「まかない、何が食べたいですか?」
と昨夜リクエストしておいたら、
「先生、なんでもいいですよ。先生の手料理頂けるなら、リクエストなんて、ありません。でも、一度、先生のアクアパッツアを食べたいとは思っておりました」
とあいかわらず、図々しい注文を受けた。
ぼくのアクアパッツア、実は、評判がいいのだ。
「了解!」
ということで、まずは、主な材料から、ええと、2,3人分かな・・・。
材料は、鯛2ヒレ、プチトマト10個、オリーブ10個、ニンニク2片、アサリ適量、ズッキーニお好みで、オリーブオイル大さじ2、白ワイン半カップ、水1カップ、レモン適量、塩コショウ。
じゃあ、作ってみますか?
身の部分に塩を振り、水気が出たらクッキングペーパーでしっかり拭き取っておく。
鯛の皮面をしっかり焼く。これはいつもの鯛焼きと一緒で、熱したフライパンにちょっとオリーブオイルをひいて、皮目から焼くんだけれど、軽く指でおさえる。30秒くらいで、いいよ。すると、もう反らない。何もしないと、熱で、反っちゃうから。
皮面に焼き色がついたらひっくり返し、ニンニクとズッキーニ、プチトマト、オリーブ、アサリを加える。
全部加えたら白ワインを加え、一旦蓋をする。
アサリが開いてきたら水を加え、そこから5分ほど蒸し焼きにする。ま、これで、もう、完成なんだよー。
超簡単でしょ?
アクアパッツアのアクアって、水だからね、水を加えることが大事。
とくに、塩はほとんどいらない。
最初に鯛に塩ふっているし、自然の味だけで、めっちゃ美味い。
仕上げにレモンをぎゅっと絞り、パセリをちらして、完成!
フランスの人はパンで食べる人が多いね。
でも、ぼくはイタリア好き人だから、生のリングイネを、ちょっとサイドにして、ラーメンみたいにして、えへへ、食べるんだよねー。
「長谷っち、それでいい?」
「先生、いいっすね」
「もっとも、ラーメンにはならないけれどスープパスタっぽくなるよ」
「食べたいっす」
ということで、頂きました。
「最高でした」
と長谷川さん。
そのあと、数千冊の本を段ボール箱に詰めたので、次第に、口数が少なく、最後は、へとへとになって、かえっていかれました。
あはは。
少しずつ、ノルマンディの仕事部屋が稼働しはじめています。
ボナペティ!!!
※ 生パスタをさっと茹で、オリーブオイルを絡めたものを添えました。素材の味を楽しめる一品なり。
綺麗でしょ?
アクアパッツアだからね!
イタリア語で、アクアは「水」パッツアは「暴れる」とか「狂った」という意味。蓋をしないと、油と水が弾けるので、アクアパッツア~「水が暴れた~」、と呼ばれるようになったんだとか。なるほどね。
つづく。
今日も読んでくれて、ありがとうございます。
アトリエは、ぼくの創作の本拠地になりそうです。思った以上に大規模な改修工事になってしまい、立体や彫刻の制作もできるようになりつつあるし、ゆくゆくは、スタジオにもなるでしょう。依頼が増えてきたので、2027年、10月のパリの個展まで、びっしりとなってしまいました。そんな忙しい父ちゃんですが、三四郎がいてくれるから、毎日、自分を失わず、楽しく乗り越えることができています。犬と生きる。だね。早く、みなさんに、作品を観て貰いたい。立体作品も、悪くないんですよ。小説と音楽とアートが現在、ミックスされつつあります。そう遠くない将来、インスタレーションもやるんだと思うな。笑。アトリエはその制作工房という感じかな。キッチンも、整備する予定です。あはは。やはりね・・・。やると思っていたんだ。やっぱり、やるんだ。☜やります。
【お知らせ、まとめ】
1,エッセイ集「犬と生きる」好評発売中。マガジンハウス刊
2、ラジオ・ツジビル生放送、月3回、次回は、4月5日、日本時間、22時スタート
3,引退ライブ公演のDVD記念ボックス:
https://tunagate.com/community/vlKQvE5b/products/21
4,個展「LE VISITEUR TOKYO」、三越日本橋本店、2025年7月9日(水)~21日(月)詳細は、6月ごろに三越のHPにて発表。
5,個展「LE VISITEUR OKAYAMA」、岡山天満屋:2025年7月23日(水)~28日(月)
6、サティとラベルの曲を演奏しながら、これまでの作品をも鑑賞できるYouTube
7,パリ個展「LE VISITEUR PARIS」、ギャラリー、20THORINY。10月中旬からだいたい2週間、予定。まもなく、発表します。
8,5月の中旬から、パリのマレ地区で、初のグループ展に参加。立体作品を発表。
9,引退公演「大阪フェスティバルホール」ライブ配信、全プラットホームにて。
※ 生放送のラジオでは、自著の朗読や、弾き語りなど、かなり、ライブに攻めておりますよ。ラジオ・ツジビルは、こちらから、どうぞ。
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