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サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし Posted on 2025/03/23 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、田舎のアトリエの庭先に、たぶん、アーモンドの花が咲いた。
桜のようなかわいい花びらなので、最初、桜かな、と思ったら、工事を手伝ってくれているビクトールさんが、アーモンドだよ、と教えてくれた。※ 一方で、桜じゃないか、という説もあって、調査中。
かわいい花びらだね。
風がふくと、桜吹雪のように、この白い花が舞い落ちるのであーる。
なごんだ。
この風景の中で、父ちゃんは、絵を描いているのだ。
自然の中で、絵を描いていると、気持ちが楽になる。
世の中がせわしないからね、自然というぼくらからするともう一つの非現実に、癒される。
どんなに世界が残酷であろうと、綺麗な花が咲く、春、の仕業だ。
素敵じゃないか。

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし

「窓も塗ろうぜ」
とビクトールが言い出し、結局、アトリエのすべての窓枠を、父ちゃんが好きなネイビーブルーに変更した。
それから、ずっと先月作業していた、外の壁がきれいに乾いて、どう? 
素晴らしいでしょ? 水道の蛇口のまわりを塗るのが大変だったよ。
庭に水を撒くのに、外に水道の蛇口があった方がいいよね、となって、ガレージの外に、蛇口を、つけた。かんたんそうに言ってるけれど、大変な仕事だった。(ほぼ、ビクトールさんがやったんだけれど・・・)

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし



ということで、ビクトールたちに「まかないランチ」作ることにした。
生きていると、これが、必ず、腹が減る。
今日は、サーモンとアボカドのオープンサンド(タルティンヌ)を作ってふるまった。
軽く塩をふったサーモンをオーブンで焼いて、それをほぐし、アボカドと混ぜるだけ。
めっちゃ簡単なのに、めっちゃ美味しい。

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし

中に、いれるものは、ライム、だけ。
まず、フォークでアボカドをつぶし、そこに、ほぐした焼きサーモンを半分ほど加えて、あえる。
で、ライムをかけて、焼いた田舎パンの上に、のせる。
残ったサーモンをその上に、散らす。
ライムがいい仕事をしてくれるよ。
マヨネーズ?
ノン!!!
マヨラーの父ちゃんだけれど、ここは、不要かな。
塩胡椒はお好みで、でも、優しい味付けにしよう。
このシンプルなバランスが、いいんだよね。
最近はまっている「ザクロ」とシブレットの刻んだものを追加で散らし、完成だ。
ザクロは、わずかに、スパイシーな味わいを食材に連れてくる。
アボカドとの相性も抜群。
ザクロは、仏語で、「グルナディン」というのだけれど、めっちゃ、身体にいいんだよ。
適度な酸味と渋みもいいね。

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし



アトリエは夏のはじめに、完成するんじゃないか、と思うけれど、よく訊いたら、ここは昔、鍵を作っていた工房だった、みたい。
仏語で、「セルリエ」という。
だから、天井も高くて、大きな絵の制作には、適している。
暖炉に火をくべて、作業つなぎを着、大きなキャンバスとむかっているよ。
ここで描いた絵は、10月のパリの個展で、初お目見えする、予定。
毎日、少しずつ、高木の枝葉が伸びるような速度で、絵が、出来ていく、その過程が、楽しい。
日々を丁寧に生き、美味しいものをちゃんと食べて、よく眠るに限るね。これが、パリだと眠れないが、田舎は、電磁波がないからか、爆睡、泥寝が出来るから、なるほど、と思った。自然というもう一つの世界の魔法だ。
騒音は、シャットアウトした。
今日もよく生きてやった。
テレビもないので、世の中のことがわからない。
心にはいいんだ。

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
毎週、金曜日に、この近くの教会の横の駐車場に、魚屋さんが立つ、ことがわかりました。まだ、通りがかっただけで、どういう魚屋さんかわからないけれど、数人が並んでいた。この村、数百人の人口なので、数人の行列って、すごいことじゃない? 落ち着いたら、魚を買ってみようかな、と思っています。こんなことが、今のぼくにとっては、大ニュースなの。些末な、下世話な話題から遠ざかり、自然、の中で、深呼吸。田舎暮らし、人間回復にとっても大事なものだと思いました。まる。

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし

ええと、次の生放送、ツジビルは、25日です。

TSUJI VILLE

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし

自分流×帝京大学



【お知らせ、まとめ】
1,エッセイ集「犬と生きる」好評発売中。マガジンハウス刊
2、ラジオ・ツジビル生放送、月3回、次回は、15日、日本時間、22時スタート
3,引退ライブ公演のDVD記念ボックス:
https://tunagate.com/community/vlKQvE5b/products/21
4,個展「LE VISITEUR TOKYO」、三越日本橋本店、2025年7月9日(水)~21日(月)詳細は、6月ごろに三越のHPにて発表。
5,個展「LE VISITEUR OKAYAMA」、岡山天満屋:2025年7月23日(水)~28日(月)
6、サティとラベルの曲を演奏しながら、これまでの作品をも鑑賞できるYouTube

7,パリ個展「LE VISITEUR PARIS」、ギャラリー、20THORINY。10月中旬からだいたい2週間、予定。
8,引退公演「大阪フェスティバルホール」ライブ配信、全プラットホームにて。

サーモンとアボカドのタルティンヌ、シンプル生活を目指す男の昼めし

※ ドッグトレーナーのジュリアが撮影した、冬景色の中の、さんちゃん。ハンサムだね。