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ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司! Posted on 2025/03/20 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、実に人生は苦難の連続であり、ここ最近の父ちゃんは、息子のことも頭が痛いし、どうにもならない、とママ友たちに弱音を吐いたら、みんなでわいわい騒ぎましょう、ということになり、父ちゃんを励ますためにママ友たちが大集合とあいなった。
何かをしていると、心が安定する体質の父ちゃんなので、マダムたちに食事を作ることになった。みんな、うちの息子と同じくらいのお子さんを抱えているマダムたちで、子育ての苦労とか、そういうことには精通しているのだ、たぶん。
成人したとはいえ、子供は、ずっと子供なのである。
問題もたくさんある。
なので、悩みごとなどを聞いて貰いつつ、お礼にご飯をふるまった、父ちゃんであった。
ま、ぼくは外食はしないので、逆に、こうやって、来てもらって、料理をふるまう。ふるまっているうちに、悩みごとなどが消え去り(消え去るというか、料理をすることで忘れることができる)、苦しみは薄まる、という次第。
まずは、乾杯から、フランスでは「健康~」と叫びながら、乾杯をするんだ。
サンテ~っ!!!

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!



さて、今回のホームパーティ、もちろん、全部「美味しい」と褒められたのだが、あはは、一番その中でも受けたのが、「スズキの漬け握り」であった。
実は、父ちゃんは昔、寿司をやっていた。
え? 
初耳? 
うそー????
真偽はさておき、時々、食べたくなると、ぼくは自分で握って、食べている。
パリの本物のすし屋に行ったら、6万円ほどして、作家にはきつい、と思ったので、じゃあ、自分で握るわ、と「昔取った杵柄」、やったら、6万円に負けないレべチが出現・・・。☜ウソでーす。
とまれ、魚屋の大将に、新鮮な魚はどれか、ときいたら、スズキがいいよ、とすすめられ、一尾をさばいてもらい、もって帰り、骨を丁寧にとってから、昆布でしめた。
写真を参考にしてもらいたいが、中に2ヒレ入っている。その真ん中にも昆布が入っている。白身を昆布で包み込む、ということ。
足りない部分は、塩昆布で塞ぐ、という完全主義。
冷蔵庫で、一晩、こてこてに、漬ける。(薄味が好きな方は、半日とか、数時間でよい)
何が違うか、というと、粘度・・・・。
父ちゃんの漬け寿司は、粘度濃厚なのだ。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

一晩漬けると、こういうねっとりとした感じになる。
キッチンペーパーで、水気や余分な塩味をとる。そして、筋目を切る感じで、薄く、出来る限り、薄く、スライスするのじゃあああああ。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

酢飯は、赤酢にしようと思ったが、東京で買った赤酢が見つけられず、いつもの、酢飯になった。
酢、大匙1半、砂糖大匙1,塩小さじ半、を混ぜて、すし酢を作り、硬めに炊いたご飯に混ぜて、写真のように、ぼくは木の弁当箱にいれて、上に、布をかぶせて、ちょっと休ませる。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

で、薄く切ったスズキの刺身は、二枚セットにしておくと便利だね。
あいだに、紫蘇を挟むので、それも用意しておく。
水道水をちょろちょろとながしながら、手を軽く濡らす。
ま、初めての人はわからないと思うけれど、濡らさないと、米が手にくっついて、どうにもならない。もう、どうにもとまらない~、リンダ困っちゃう~、になっちゃう。
小皿にいれておいた塩を右手の指先にちょんとつけ、それを左手の手のひらで叩いて、水加減と塩加減を調節したりする。
ここ、寿司職人になった気分、演出が大事。えへへ。
で、左手で、米を少な目(食べたいサイズでいいけれど、出来るだけシャリは少な目がいいんだ)につまんでから、すばやく、左手の親指をのぞく4本の指をクランクさせ、そこにシャリを留め、左腕を軽く左右に揺さぶりながら、おおまかなシャリを形成する。
で、右手、ぼくの場合は癖で、右手の人差し指と中指の二本で、丸くなりつつあるシャリを目指す形に握るんだけれど、左手を返しつつ、2,3回、ぎゅっと握ったら、それくらいが程よい、感じになっているので、ええと、二枚セットになったスズキの刺身をまず、一枚載せ、そこにあらかじめカットしておいた紫蘇をそこに置き、さらにもう一枚の残ったスズキをかぶせて、最後に、右手の二本の指で、やや、ぎゅっと、力を(軽くね)こめて、崩れないように、形成したら、器に、すばやく、置くんだよー。
こりゃあ、難しそうだけれど、慣れるとだんだん、面白くなる。
6万円を、自宅で、再現すれば、お得だよね。
あはは。すし屋さん、ごめんなさい。
みんな生きているから、自宅で、寿司、食いてーんだよね。
とくに、海外在住組は、まともな寿司が食べられないので、自力でやるしかないのさ。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

これは、ぎゅっと、留め握りをやる前の状態でさー。
握ると下の写真のようになる。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

上に載っている黄色いのは、味噌のクリームなのだ。なぜなら、ぼくの寿司は、一切、大豆調味料(醤油)は使わない。ワサビも使わない。
魚のうまみと、昆布のダシ、シャリの甘味と、塩、のみ。
これ、最高なのね。
味噌と生クリーム、オリーブオイルちょっと混ぜるくらい、そこに、実山椒をひとつ、のっけているんだけれど、これを噛んだ瞬間、口の中は、別世界になるよ。
やってみてねー。



ということで、ホームパーティでは、子育ての難しさについて、ママともたちと大議論になって、最後は、子供を信じよう、ということで決着したのであったーマン。
さて、父ちゃんが作ったのは、以下であーる・ぬーぼー。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

こちらは、赤を基調にした通称「情熱の赤サラダ」ベースは、蕎麦粉で出来たクスクスにひよこ豆のクリームをあえ、塩胡椒、オリーブオイルで調整をしたパスタの上に、赤いものをずらっと敷き詰めた。
赤いトマトは白だしのマリネ。
すぐり、ラディッシュ、ザクロ、鱒の卵の昆布締め、赤唐辛子、などなど、とにかく、情熱を感じさせるいけないルージュマジックなサラダとなったのであった。
大好評!!!! 
大絶賛であった。あはは。ほんとーです。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

こちらは、前回も作ったカリフラワーのブルーテなんだけれど、ポルトガルのオリーブオイルで撹拌させ、どっちかというとオリーブ感を強くだしている。
オーブンで作った自家製のクルトンは、タイムやローズマリーで、香りづけ、その横で一緒に焼いたベーコンは千切って、スープにぶっこんでいる。
エスプレッソのカップに入っているので、大匙2杯分のスープ量、そこが、おしゃれだよね。ちなみに、これはアミューズで最初に出した。
胃袋に粘膜をはり、アルコールからマダムたちの胃袋を守る、仕組み。
これも、好評価だったよー、自画自賛じゃああああ。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

これはいつもの、口はじめの、バゲットオープンサンドね。白いのは、二種類あるんだけれど、タラのリエットと、フロマージュブロンのソース。後者は、ギリシャヨーグルトとフロマージュブロン、そしてオリーブオイル、で調整した。
鱒の卵はさっきの、一晩昆布締めしたもの。相性抜群だね。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

これは、ジャガイモのピュレを山椒とか黒七味と和風のダシをまぜて作ったガルニチュール。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

フランス産のたらこをフライパンで焼いて、皮をはがし、唐辛子で漬けて、ようは、明太子を作り、パスタにしたもの。大皿料理として出したんだけれど、下に、築地とかで買った海苔をぐしゃぐしゃに敷き詰めてあるから、すくいながら、撮り分けると、楽しくなりました。上には、紫蘇がたくさん。紫蘇と海苔とフランス産手作り明太子で、もう、日本の勝利であった。めでたし。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

これは、ポルトガルのポルト市で買ったポルト酒で煮込んだ牛肉の煮込み。でも、パプリカも大量に使っているので、ブルギニヨンなのか、グーラッシュなのか、ビーフシチューなのか、もう、何がなんだかわからない煮込み。
こちらも、一昼夜煮込んだのだ。さすがに食べきれず、全員がお土産にして持って帰ると言い出して、いやあ、マジで、何も残らない、ホームパーティなのでありました。



はい、ということで、子育てに苦悩されてい皆さん、同じような悩みを抱えている友だちどうし集まって、ぶちまけると、苦しみから解放されますよ。
子育ての達人でもあるママ友たちに、こうやって、時々、ガス抜きを手伝ってもらっていました。
これから先も、不安は続くのである、マジで・・・。
子供の未来だけを、ひたすら祈って、生きている感じ。ストレス、かなり、あるかなー。
「そうなのよね、子供のウソって、どうやって見抜くかよね」
「大人として、どうやって、子供を導くかよね」
みたいな,話、・・・。
明日からまた、頑張るね。
えいえいおー。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
明日、ノルマンディに戻ります。パリにいると、仕事ばっかりで、ちょっと疲れたりします。でも、友だち、いいですよね。ほんとうに素晴らしいママ友ばかりで、頼もしいです。普段、べったりはしませんが、いざという時に応援してくれる仲間は大事にしましょう。最後は、父ちゃん、ギター持ち出し、歌いましたよー。「ムッシュ、歌、上手~」とか、言われて、あはは、大笑い。
「昔取った杵柄なんだよー」と笑っておきました。おつかれ。

ママとも大集合。父ちゃん飯で一番受けたのが、スズキの漬け握り寿司!

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