JINSEI STORIES

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天 Posted on 2025/02/19 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、日本とフランスのあいだで行方不明であった、次の個展の絵、14点が、東京の仲介画廊に無事に着いた、という知らせが飛び込んできた。
やった、と思わず、大声が出てしまった。ガッツポーズ。
フェデックスさん、メルシーボク!
何せ、次の個展のメイン作品ばかりだったので、気を揉んでいた。
2月4日にパリを出た荷物は、だいたい、数日で東京に着く。
今までは、全部、予定よりも一日早く到着していた。(だいたいの到着予定日がアカウントに表示されるのだ)
しかし、いくら待っても、つかないし、アカウント欄も、2月5日にロワシーの倉庫についてから、更新がストップ! ええええ・・・。
そこでAIのチャットに、荷物番号などをいれ、どこにあるか、調べて、と問い合わせたところ、10日くらいになって「現在行方がわからない」と返事が来たので、衝撃が走った、という次第。
ところが、問い合わせの電話番号というのがフランスのフェデックスにはなくて、最近はどこもそうなんだろうけれど、AIが受けごたえをする。
でも、AIは、「わからない、調査中」という超シンプルな返事しか、戻さない。
普通の荷物、本とかなら、別にそれでもいいが、夏の個展の中心的な作品、14点なのだから、そりゃあ、神経が切れそうになった。
そこで、AIさんに、
「だれか、人間とやりとりをしたい。個展の作品なんだ、大事だから、人間につないで」
とお願いをしたところ、Dさんと名乗る人物らしき人から返事が来た。
その人が、AIじゃないという保証はないし、引き続き、同じチャットでのやりとりなので、これが、また、ぜんぜん人間ぽくない応答なのである。
しかも、仏語だし・・・。
「調査するので、写真とかありますか? 形状とか特徴を教えてください」
と、いう返事が来て、慌てて、写真などを送ったが、
「現在、たいへん混雑しているので、調査も時間がかかっています。お待ちください。行方不明の荷物を追跡し、探しますので」
みたいな、返事がやってきた。
ゆくえふめい・・・。どうして・・・。
もう、心穏やかならぬ父ちゃん、スタッフさんらにあたりちらし、どうぜ、ぼくなんかもう見放されているんだ、みたいな暴言を吐いていた、という情けない、弱い、男に成り下がっていたのであった~。
というのも、どの作品も、構想から描き上げるまで1年くらいを要しているし、気に入らない時は、何度も何度も筆をいれた。
毎日、10時間、すべての作品の修正を繰り返してきた、いわば、手塩に掛けて育てた子供のような存在で、(実際、話しかけたりしていた)しかも、全部が、今回の個展の重要な大作なのである。134センチも幅がある絵なのだから、・・・眩暈しかなかった。
ところが、昨日の夜、不意に、フェデックスのぼくのアカウントに、江東区にある、というメッセージがいきなり明滅し、おお、と大声を張り上げた父ちゃん。
こーとーく!!!!! 
江東区って、どの辺だったっけ?
思わず、グーグルマップで、江東区を、探したのだった。
ああ、山下さんちの近くじゃん。と仲間のことを思い出したり・・・。えへへ。
そして、ついに、ついに、今日、作品が青山の新生堂に到着した、という次第であったー。
ふー・・・。
疲れた。
でも、マジで、よかった。
フェデックスさんを信頼し続けてよかった。
待てば必ずつきます、というネット記事もあったので、ともかく、よかった。みなさん、ご心配をおかけしました。
心がつながりました。
子供たちよ、ご苦労様。

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天

※ 合計、65キロもある、大輸送作戦。無事、完了となりました。新生堂のみなさん、あとはまかせた、よろしくね。いや、ノルマンディから、パリに送り、パリ事務所で、梱包し、フェデックス・パリからロワシーへ、そこから飛行機で、成田到着、そこから江東区の配送センター到着からの、青山!!!! 1万キロを超える長旅でした。おつかれさま。(さきほど、新生堂さんから連絡があり、絵は無傷だった、とのこと。よかったー)

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天

※ そして、今、ぼくはノルマンディで、アトリエの工事をやっているのである。まさに、こんなだだっぴろい空間、世界にぽつんとアトリエがある。今日も、壁を塗っていた、あはは。

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天



さて、荷物が届いたことだし、疲れたので、心と胃が温まる料理を作って食べることにしよう・・・。
ということで、今日の父ちゃんの献立日記は「釜揚げうどん&鳥天」にあいなった。
かまあげ・・・。
大好物中の大好物となるが、この「釜揚げうどん」のことを好きになったのは、実に、数年ほど前のこと。
関東は蕎麦が主流なので、釜揚げのうどん、に魅力を感じたことがなかった。
釜揚げうどんなんか、うまいわけがない、という先入観しかなかった。
ところがある日、コンサート前に風邪をひいて、熱もあり、しかも、寒かった。
身体を温めないと、声が出ない。
すると、うちの事務所最年長のマントふみこさん(椅子の修復士さん&ライターさん)が、
「辻さん、釜揚げうどんを作ってさしあげます。ともかく、身体が温まるし、喉が開きます。寒い日には一番です」
と、上品に言われたのだ。
体調もよくないので、マントさんに作ってもらうことに。
これが、釜揚げうどんとの出会いであった。あはは。
しかし、一口、ずるっとやった次の瞬間、あああ、うまい、と脳天直撃を喰らった。
人生観を180度も変えられたほどの美味さだったのだから、びっくらこいた。
「美味い!!!! おおお、なんじゃこれは!!!!」
その日から、寒い日、心細い日、喉を開きたい日、風邪っぽい日に、ぼくは生姜たっぷりの「釜揚げうどん」を食べることにしている。
いくらでも、食べられる!!!
今日は、絵が到着したので、間違いなく、釜揚げの夜じゃないか!!!

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天

鳥天は、小麦粉、ベーキングパウダー、水、塩ちょっと、少しマヨネーズ、なのだ。割合とかは、適当なのだ。でも、それがうまいのだ。鶏肉はささみなのだ。

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天

葱好きな父ちゃんは、大量の葱を食べる。栄養源。そして、それに負けないくらい使うのが、生姜。生姜は皮ごと(もちろん、有機)摺って、大量にいれる。胡麻も、すりごまを大量につかう。

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天

これだ。この美味さ。
ぜひ、やってもらいたい。
生姜をとにかく、たくさん摺って、がんがんいれて、ずずずz----っと吸い込んでもらいたーい。
美味いったらないのだ!
あったまった。
よかった。
絵が、ついて、夏の個展が開催できる・・・。
最高だ。よかった!
ありがとうございました。
フェデックス、\(^o^)/

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天

ボナペティ!!!!



いろいろと人生、山あり谷あり、なのである。
無事にいくこともあれば、そうとは限らないこともある。
けれども、ぼくはその都度、きちんと一喜一憂している。
悲しむ時には悲しみ、喜ぶ時には喜んで、人生を横断中。
情けない自分も出現するが、そういうのが、人間っぽいのだと思うのだ。
実は、この2週間、待っているあいだに、何もしないで、結果を待つのが嫌で、もしものことを考えて、絵を描いておった。
それが、思いもよらず、いい作品になって、新しい光をぼくに投げつけてくれたのである。
棚から牡丹餅ぬらぬ、行方不明からの新生、なのだった。
嘆いているだけじゃ前進しないので、それでも、前に進め、と鼓舞する時、遠くの空が晴れるのだと思います。えいえいおー。

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天



つづく

今日も読んでくれてありがとうございます。
ちょっと、安堵しました。今夜はぐっすりと枕を高くして眠れそうですね。また、あした!

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天

絵が見つかり、画廊に到着! やっと眠れる~からの心温まる釜揚げうどん&鳥天

※ ツジビルラジオで、「代筆屋」特集がありました。吉祥寺が舞台の「代筆屋」、伊勢谷さんという焼き鳥屋さんで、スタッフさんが、一本100円の焼き鳥たべながら、読んだ「代筆屋」だそうです。作者としては、嬉しい一枚。

TSUJI VILLE
自分流×帝京大学