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フランスごはん日記「旅する父ちゃん。創作の取材と心の休息を兼ねて、とある国を放浪中」 Posted on 2024/12/20 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、スケッチブックを持って、鉛筆とカメラを抱えて、とある国をとにかく歩いている父ちゃんであった。
仕事関係の方や、知り合いのアーティストに会わないとならないので、待ち合わせることもあるが、基本は自由なので、思う存分、想像を研ぎ澄ませながら、歩いておる。
とにかく、ここは、歴史があり、美しい町なのである。
ぼくにとっては初上陸の場所でもあった。
建物や人の雰囲気はまるで昭和初期の日本に通じるものがある。(もっと前かも知れない・・・)
ということで、すぐにどこか、お伝えしてもいいのだけれど、いくつか、ヒントを出すので、写真を見ながら、どこの国だろう、どこの町だろう、と考えてみて貰いたい。
埠頭のベンチに座って、今日は対岸の家々を心に焼き付け、スケッチ、した。
これが、次の創作のヒントになりそうだ。
こういう仕事なので、どこまでが仕事で、どこからが旅なのか、線引きが難しいけれど、ぼくが動き回るところには、常に、何か想像の息吹が、潜んでいる。
それを見つけ出し、作品にしていくのが、父ちゃんの大切な仕事、ということになるのかな。
それにしても、美しすぎる世界ではないか。
心が落ち着く・・・。

ここはどこの町か、わかりますか?

フランスごはん日記「旅する父ちゃん。創作の取材と心の休息を兼ねて、とある国を放浪中」

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フランスごはん日記「旅する父ちゃん。創作の取材と心の休息を兼ねて、とある国を放浪中」



この国は、日本とのあいだに、深いつながりがあるのだ。
ふふふ、ここまで言えばもう、わかった人も多いのじゃないだろうか。
日本人にはもっとも古い歴史を持つ西洋人たちの末裔が生きる場所、はい、その通り、日本語の中にもたくさんのこの国の言葉がいまだ息づいているのだから。
だからか、他の西洋よりも、人間性が日本人にちょっと似ている。
真面目で、物静かで、純朴で・・・。
食べ物も、雰囲気も、光と壁も、どこか、懐かしい。
西洋なのに、日本の古都を巡っているような気分に浸ることが出来る、美しい世界がそこにはあるのだ。
ぼくは立ち止まり、スケッチをする。
言葉をメモ帳に記して、それらが立ち上がるのを待っている。
沈む夕陽でさえも、一冊の詩集を読むような静寂を届けてくれる。
夜の通りも、まるでゆっくりとシャッターを切った写真のように静止している。
ぼくは旅人になり、この世界に同化している。
カフェに入り、この国のお菓子を一つ頼んで、コーヒーで胃に流し込む。
1人になりたい人に、もってこいの町なのだ。

フランスごはん日記「旅する父ちゃん。創作の取材と心の休息を兼ねて、とある国を放浪中」

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フランスごはん日記「旅する父ちゃん。創作の取材と心の休息を兼ねて、とある国を放浪中」



町は起伏が激しく、だから、歩けば歩くほどに、足が痛くなる。
なので、少し歩いたら、ベンチに腰掛けたり、教会の岩壁にもたれかかったり、広場で空をひたすら見上げたりしている。
聞こえてくる言葉も、知らない響きばかりで、文字はかろうじて、たぶんラテン語から派生しているので、何が描かれているか想像が付くものの、奏でるように語る、彼らの会話はちっともわからない。
でも、ここだと、ほっといてもらえるので、すごく楽かもしれない。
ここ最近、いろいろと心を使うことが多かったので、休息には、最高の逃避地だと言える。
ということで、ひたすら、歩いた。歩け歩け!
歩くと、余計なことを考える必要がないので、いいね。
差し込む昔日の光をふりかえりながら、ぼくは曲がりくねる坂道を上った。
こういう路地で生まれたら、ぼくの人生は今頃、どうなっていたのだろう、と考える。
いつも、旅をすると、そういうことを、考える。
作家のサガ・・・。

さて、クイズです。
ぼくはいま、なんという町にいるでしょう?

フランスごはん日記「旅する父ちゃん。創作の取材と心の休息を兼ねて、とある国を放浪中」

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※ これが、大きなヒント、かな。わかった人? ・・・笑。

フランスごはん日記「旅する父ちゃん。創作の取材と心の休息を兼ねて、とある国を放浪中」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
人間は歩くと、いろいろと雑念が消え去り、心が落ち着くものです。ぼくが旅が好きなのは、やはり、知り合いのいない世界で、異邦人になれるからじゃないか、と思うのです。いい創作のヒントが掴めそうです。ご期待ください。また、明日。

フランスごはん日記「旅する父ちゃん。創作の取材と心の休息を兼ねて、とある国を放浪中」

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