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ポルトガルごはん日記「ポルトガル第二の都市で出会った優しい人や美味しい食べ物、そして美しい風景」 Posted on 2024/12/21 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ということでぼくはポルト市にいる。
ポルトガル、第二の都市、ポルトは、ポルト酒で有名なのだ。
昔、日本に、「赤玉ポートワイン」というのがあったが、たぶん、あのポートは、ポルトのことじゃないか、と思う。同じ味がする。
ポルト酒というとかなり甘い赤ワインのことを思い浮かべる人が多いと思うが、甘くないものも、存在する。
しかも、白のポルトワインもある。これも、普通のは甘いが、甘くないものもある。
歴史は相当に古くて、ぼくが生まれるよりも、うんとうんと何世紀も前のことだろうから、よくわからないが、ポルトには幾つものワイン製造所があった。今もある。
今回の旅は、せっかくだから、その甘さで癒されようと、ポルトワインと共に旅することにしよう・・・。
しかし、その前に!
やはり、ポルトガルなので、「ナタ」を食べないわけにはいかない。
ここ、ポルトにもそこら中に美味しいポルトガル名物「ナタ」のお店があった。
ぼくは酒は辛口好きだが、お菓子は甘いのに目がない。
ということで、手始めに、ナタを巡る旅の始まりとあいなった。

ポルトガルごはん日記「ポルトガル第二の都市で出会った優しい人や美味しい食べ物、そして美しい風景」

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海のそばに、小さなナタ専門店を見つけたので、予備知識はなんにもなかったけれど、雰囲気が良かったから、突撃した。
まずは、よくばらずに、一つください、というのがぼくの旅先でのルールである。
「歩きながら食べるから、そのままでいいです」
ということで、こんな感じであった。
外のパイ生地は、壊れそうなくらいに薄くパリパリなのだ。
中にクリームが詰まっているのだけれど、これがトロトロで、たまらなかった。
がぶっ。
美味しい。
おお、歴史を感じる。
それだけで、ここに来てよかった、と思えた。
坂道をドウロ川へ向かって、下りながら、ナタを食べつくした、父ちゃんであった。

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ぼくは旧市街に滞在しているのだけれど、このあたりは、ポルト世界遺産として、ユネスコ世界遺産に登録されている。
石敷きの坂道がまだかなり残っており、坂を上ったり下りたりするごとに歴史的風景が入れ替わる、実に美しいパノラマチックな町並みなのだった。
ドウロ川は、パリで言えばセーヌ川だろうが、いやいや、もっと大きく、ドナウ川に似ているかもしれない。
そして、そこにはルイス一世橋という巨大な鉄橋がかかっている。
これが、普通の大きさじゃなく、近づけば近づくほど、その巨大さがわかる。
人が歩く歩道が上と下にあり、車はもちろん、電車も走っているし、横にはゴンドラやケーブルカーまでも、すごい!
まるで宮崎駿先生のアニメの実写を見ているような錯覚に。
ぼくはケーブルカーで、坂の上まで登ることにした。

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旧市街、大聖堂とか大教会がいくつもある。
こんなに必要なのか、というくらい、巨大な聖堂が、隣接していて、写真を撮るのに困るほどであった。※すいません。余計なお世話ですね。
そのうち、もう、大聖堂は、目に入らなくなった。あはは。
つまり、あまりに、教会のような荘厳な建物だらけだから、であーる。

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その中でも、ぼくが一番きれいだな、と思ったのが、こちらの聖堂。教会かもしれないけれど、名前はわからない。
タイルが、建物の壁に飾られており、これが、タイル好きなぼくの心をくすぐって仕方がなかった。
ぼくは旅先でタイルを一つ買って、キッチンに飾る趣味があるので、ここでも、タイルをゲットすることにしよう。
そこら中にタイルが埋め込んであるので、ぜったい、どこかで手に入るはずである。



ところで、このポルト市に住んでいるアメリカ人のCさんに、会いに行った。
Cさんは前回のぼくのパリの個展で、SEEDという絵を買ってくださったのだ。(これは新しいシリーズです。次の個展にも出します)
そんなに大きな作品ではないが、(サイズ、30号、910×727)、どんなふうに飾られているのか、気になったので立ち寄らせて頂いた。
長い廊下は、まるで画廊のようで、絵を集めるのが趣味なのである。
素敵な絵がたくさん、飾られていたが、ぼくの絵は、モミジが立つ中庭の横の壁に配置されていた。
「ああ、大事にされているね」
自分が描いた作品が、大切に飾られていて、嬉しかった。
「ありがとう」
Cさんは、あまり多くを語らない人だったが、優しい笑顔だった。
彼が飼っているわんちゃん二匹がぼくになついてしょうがなかった。犬の匂いがするんだろうね。あはは。
Cさんはアメリカ人だが、奥さんとポルトが大好きになり、ついに家を買ってしまった、というのである。わかるな、この町そのものがアートだものね。
ともかく、SEED周辺に、いい空気が流れていた。超嬉し。

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SEEDくん、大切にしてもらえて、よかったね。



Cさんのおすすめレストランに行き、ぼくはイカ焼きを食べたのだが、これがうまかった。
ポルトガルの伝統料理とは言えないのかもしれないが、やはり、海が近いので、魚料理が多い。
小さなイカをニンニクとオリーブオイルで炒めているだけ(?)の料理だけれど、シンプルだからかな、うますぎて、手と口がとまらない。
あっという間に、完食!

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夕食を食べ終わって、外に出ると、クリスマスムード満点の夜景が広がっていた。
cさんの家まで坂道を迷いながら30分かけて登ったのだが、夜景を眺めながら30分かけて、たらたら宿まで戻っていく、父ちゃんであった。
宮殿のような荘厳な建物の前で、大きなクリスマスツリーが寂しげに、点灯していた。

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つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
年末の、冬の、旅ですが、ポルトガルの書店(出版関係)の人に会ったり、知り合いのカメラマンが住んでいるので訪ねようと思っていたり、気まぐれな感じです。でも、小説の構想、思いつきました。作家って、部屋から出ないと、やはりものは生み出せませんね。これも仕事なんです、大きな意味で、ごめんなさい。遊んでいるわけじゃありません。

自分流×帝京大学

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