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フランスごはん日記「本人確認が出来るよう、パスポートの証明写真を撮影するのだが、ナルシスト不向き」 Posted on 2024/11/28 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、パスポートの証明写真を撮ったが、ナルシストな父ちゃん、大変だった。
たかが、パスポートの撮影とあなどることなかれ、これが、15年前、ドイツのパスポートコントロールで、「写真と顔が違う」と言われ、30分くらい、通過に時間を要したことがあった。
というのも、その頃、ザムザというハードロックバンドをやっていたので、超ロン毛で、体重も今より10キロほど少なかったので、5年前の写真となかなか乖離があったのじゃ。
でも、最終的に、鼻の形とかろうじて出ていた耳の輪郭で通過することが出来た。
それ以降、パスポートやフランスの滞在許可証の写真はなるべく、かっこつけない普通の写真を撮ろうと心がけてきたつもりだが、要は、ナルシストなので、とはいえ、許せないものはパスポートに掲載したくない、という問題が浮上したのだった。
で、いろいろと調べたところ、まず、目に髪の毛がかかってはいいけない、というのが、日本のパスポートの最大の注意点だということがわかった。
最近は、日本の空港でもパスポートチェックが簡素化され、機械で通過することになった。機械は髪型が違っていようが、メガネをかけていようが、本人確認をしてくれるのだが、パスポートの写真がちゃんと撮影されていないと弾かれる可能性があるので、みなさん、注意をしてほしい。
とにかく、鼻、目、耳、が大事らしい。
ということで、午前中、三四郎を預けていたドッグトレーナーのジュリアの家までお迎えに行った帰り道、車を停められる場所で、ちゃちゃっと、撮影をしようということに。
これが、ちゃちゃっと、終わらなかった、というお話であーる・ぱちーのー。

フランスごはん日記「本人確認が出来るよう、パスポートの証明写真を撮影するのだが、ナルシスト不向き」

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とにかく、パスポートって、10年は更新がないから、10年間、その顔を毎回見ないとならないので、自撮り好きなナルシスト父ちゃん、難航が予想された。
でー、やはり、思った通り、証明写真専用撮影ボックスに陣取ったはいいが、いろいろと忠告が出てくる。
「証明写真は、耳、目、鼻が出ていないといけません。髪型をご注意ください。きちんと撮影できない場合、公共機関で弾かれる可能性がございます」
みたいな、ここまで丁寧じゃないけれど、ダメな例の写真がずらりとまず見せられた。
ふふふ、バカにするなよ、わしを誰だと思っておるのじゃ。
と苦笑いを浮かべながら、機械の指示に従って、顔が画面のわっかの中に納まるように、あわせた。
しかし、前髪が、どうしても、目にかかるし、耳は見えない。
えええ、これじゃあ、また、ドイツの空港で、30分も足止めされることになるんじゃねーの?
ってか、それ以前に大使館の人に、これではだめです、と言われかねない。
まず、前髪を目にかからないようにしたが、そうすると今度は、耳が完全に隠れてしまうじゃないか!!!
どうしたらいいんだ。
ということで、一回の撮り直しは、3回までなので、3回やると一度支払い(8ユーロ、1300円)をしなければならず、で、印刷を待ち、ダメじゃん、となれば、もう一度・・・、という繰り返し。
最終的に、全部気に入らなくて、これを3回もやった、父ちゃんであった。
合計、24ユーロ(4000円)の支払い、あほかー、証明写真に4000円も使うバカがおるか、これ以上の失敗は許されない、あと一回しか、チャンスがない!
瀬戸際じゃあああああああ!
ということで、父ちゃん、ある方策を思い付いた。
ロン毛で耳も、目も、鼻も完全に出ている有名な芸能人のことを思い出したのだった。
ああああ、ロ、ロバート、ええと、秋山さん。あれでいいじゃないか、もう、こうなったら、ロバート秋山になろう! 最高じゃん、最初に抜いとけ!
ということで、前髪を耳の後ろに引っ掛けたーっ。
か、か、完璧だ。
3,2,1
あ、自分がロバート秋山さんになっているじゃん、と思ったら、思わず、ふきだしてしまったー。えええええ!
パシャっ!
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

フランスごはん日記「本人確認が出来るよう、パスポートの証明写真を撮影するのだが、ナルシスト不向き」

※ 父ちゃん、3作品。自撮りとはまた違った出来栄えでありました。あはは。



慌てて、ぎりぎり、間に合って、口を結んだが、モナ・リザの微笑状態、しかも、ロバートヘアー。ううう、取り直す? 5300円になっちゃうよー。
・・・もう、諦めよう。
ロバート辻と10年、付き合わないとならないことになった。
これが、なかなか、メキシカンチックで、いや、秋山さんみたいで、悪くなかった。
次回から、照明写真は、ロバート方式でやることにした、父ちゃんだった。
ということで、三四郎は、我が家に戻って来た。
さんちゃんは、予想通り、ジュリアの厳しい合宿での成果が表れていて、でぶでぶサンシーから、スマートサンシーへと変貌を遂げていた。
父ちゃんがいいみたいで、とにかく、くっついて離れない。
「おいで」
と呼ぶと、すっ飛んできて、嬉しいものだから、横で、ひっくり返って、ぐーぐー、唸りながら、尻尾を振りまくって、喜びを表している。
そうかそうか、おうちが一番だね。
もう、来年の夏まで日本での仕事はいらないから、二人でのんびりしよーね。
ボールをなげて、遊んであげました。
喜ぶ三四郎。
よかったよかった。
ロバート秋山さん、ありがとう。

フランスごはん日記「本人確認が出来るよう、パスポートの証明写真を撮影するのだが、ナルシスト不向き」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
事務所でたまった仕事をやっつけてから、週明け、田舎に三四郎と向かう予定です。そしたら、アトリエのペンキ塗りが待っているので、明日は、ペンキを買いにいきます。床も塗り替えようかな、と思っているので、年内は、いや、年明けも、しばらく、工事のために行ったり来たりになりそう。寒いんだよね、この時期のノルマンディ~~。

フランスごはん日記「本人確認が出来るよう、パスポートの証明写真を撮影するのだが、ナルシスト不向き」

※ さすがに証明写真、これは無理だもんなー。あはは。笑顔も無理だよなー。

自分流×帝京大学



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