JINSEI STORIES

フランスごはん日記「息子が、ガールフレンドを紹介したい、といきなり連絡してきて、大慌て」 Posted on 2024/11/10   

某月某日、朝、絵を描いていたら、息子から、いきなり、メッセージが飛び込んできた。
「彼女に会ってもらえないかな?」
おっと、いきなり、なんだ~。
風邪ひいた、という連絡があったきり、音信の途絶えていた息子君から、いきなり、やって来たのが、「彼女に会ってもらえないかな?」だった。
いきなり、すぎるやろ。
「ああ、ええよ」
と何食わぬ顔をして戻した。
「でも、なんで、急に? あらたまって」
と訊き返した、父ちゃん。
まさか、結婚をしたい、とか、そういうことを言われるのじゃないか、と、ドキドキ。もしかすると、その上を行くような、先の先を行く展開が舞っていたら、と改めて、どっくんどっくん、なのだった。
「あ、いや、なんか、三四郎に会いたいって」
「は? それか」
「いや、実は」
「実は!?」
「パパのごはんが食べたいって」
「え? それ?」
「うん」
あはは。
「なんだ、いいよ。いいよ、いくらでも」
「パパのごはんが美味しいっていつも自慢していたからさ、いつ食べられるかな、って言い出して」
「それだけ? ほかに、なんかかくしてない?」
「ないよ。なんで?」
「いやいや、じゃあ、いつにすっかね」
ということで、男親一人で育ててきたからね、いろいろと身構えてしまうのだった。
ということで、月曜日に、ガールフレンド君と夕ご飯を食べにやってくる。
それにしても、ドキドキ、は変わらない。
今日は、先の個展で、ぼくの絵を買ってくださった方々に、絵を届ける日なのだ。
あまりいい天気ではなかったが、絵を包んで、運ぶことになった。
まずは、腹ごしらえ。笑。

フランスごはん日記「息子が、ガールフレンドを紹介したい、といきなり連絡してきて、大慌て」

※ 現在、夜と朝は断食中、昼間は好きなものを好きなだけ食べてもいい、というルール。なので、昼は、右岸にある大好きな蕎麦屋で、つるつるのお蕎麦を、いただきました。黙っていても、トレイにフラー・ド・セル(塩の華)をつけてくださる。まず、蕎麦を生で一口、そのあと、塩をちょっとかけて、ワサビで、食べる。次に、日本酒をふりかけて、ワサビと食べる。半分くらいこれを繰り返し、最後に、ちょっとそばつゆを口に含んでから、蕎麦をそのまますする。笑。辻流、蕎麦の喰い方。

フランスごはん日記「息子が、ガールフレンドを紹介したい、といきなり連絡してきて、大慌て」



11月4日から、パリ中心部への車の乗り入れが出来なくなったので、今日はUBERで絵を運んだ。
二組とも知り合いだったので、ご挨拶をかねて、ぼくが直接届けることに。
11月4日からはじまった交通規制、まだ、守られてない感じで、しばらくは緩やかな規制らしいが、ある日、不意に取り締まりがスタートする、みたい。罰金が2万円くらいなんで、要注意なのであーる。
地下鉄でもよかったんだけれど、さすがに、絵が3枚もあったので、UBERで!
どのお客様も、ものすごく、喜んでくださって、その笑顔を見ることができたのは、嬉しかった。
疲れたので、カフェに入ると、目の前に、女子大生と思われる若者がコーヒーをいれていた。息子の恋人もフランス人なので、こんな感じだろうか、と思わず、ガン見。
あはは。
不意に目が合った。
「アメリカーノですね? もうちょっとお待ちください」
いい子だ。
「いいよいいよ。ぜんぜん、時間あるから、ぼくは最後でいいんだよ」
不意に、変なおじさんになる、父ちゃん。
自分の息子が連れてくる子って、もしかしたら、ひょっとしたら、将来のお嫁さんになる子かもしれない、じゃないか。え? 気が早すぎる?
いや、でも、息子君は、先方のご両親、ご親族、全員とすでに仲良しで、そこの家に夏休み中、ずっとお世話になっていたらしいから、ない、とも言いきれない。
付き合いだして、けっこう、長いらしいので、(知らんけれど)、あらゆる事態を想定しておかないとならない。
こんな戦争のある不穏な世界なのだ。
パパがしっかりしないといけない。
親だもの。
よし、と力がこもった。
「あの、お客さん、大丈夫ですか?」
「え? ああ、大丈夫。いいんだよ、ぼくは、最後で」
あはは。
そこのお店も経営者は知り合い。ザビエさんというムッシュなんだけれど、写真を撮影し、
「君のカフェの子たち、みんな素晴らしい」
とメッセージを送った。
「とっても嬉しいです。今日は店にはいけないけれど、来てくれてありがとう」
なんか、息子の恋人のお父さんに褒められたような、気分。
新郎の父です。はい。☜やれやれ。想像力が早すぎる。



フランスごはん日記「息子が、ガールフレンドを紹介したい、といきなり連絡してきて、大慌て」

※ IRASSHAIという日本食材スーパーの一階にあるカフェ。ここの胡麻チョコケーキ、美味しかったです。

フランスごはん日記「息子が、ガールフレンドを紹介したい、といきなり連絡してきて、大慌て」

※ 変なおじさん、カウンターにおるでしょ? 変なおじさん、あはは。ある意味、幸せな人ですね。

フランスごはん日記「息子が、ガールフレンドを紹介したい、といきなり連絡してきて、大慌て」

若い女の子たちが、みんな、息子のガールフレンド君に見えて仕方がない、日。やんなっちゃうねー、父ちゃん。



なんか、長い人生だったが、息子が幸せそうなので、一安心をしながら、月曜日の夜何を作ればいいんだろう、と献立で悩むのだった。
「お父さんの料理、本当に美味しいですね。感動しました」
と言われるところを想像して、にやにや、している、父ちゃん。
目の前の店員さんたち、きもい、と思っていたかもしれない。
あわてて、コーヒーを飲んだ、うん、すべてが美味しい。
息子に、
「ガールフレンド君、好き嫌いはないの?」
とメッセージを送ってみた。
「大丈夫、なんでも食べられるよ」
と返事。
おおお、これは悩む、生涯、最大の嬉しい苦悩というやつである。
あのちびだった息子が、ガールフレンド君を連れて、やってくるのだ。
思えば、はじめて、じゃないか?
正式に紹介されるのは・・・。
それだけ、真剣交際ということなんだろう。あああ、いかんいかん。変なお父さんになってしまっている。ううう、しょんべんちびりそうだ。
「すいません」
「はい」
「お手洗いはどこに?」
「あ、地下にあります。そこの階段をおりて・・・」

フランスごはん日記「息子が、ガールフレンドを紹介したい、といきなり連絡してきて、大慌て」



フランスごはん日記「息子が、ガールフレンドを紹介したい、といきなり連絡してきて、大慌て」

ドキドキは、つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
さりげなく、いきましょうね。どうか、みなさん、月曜日の夜のディナーが成功するように、応援ください。メニューは、何がいいかなー、パスタってわけにはいかないだろうけれど、なんだろう、ううう、悩む~。
はい、ということで、そんなおかしな父ちゃんのラジオは11月15日、日本時間22時からになりますよー。ご視聴ご希望の皆さま、下のTSUJIVILLEのバナーをクリックしてみてくださいねー。

TSUJI VILLE

フランスごはん日記「息子が、ガールフレンドを紹介したい、といきなり連絡してきて、大慌て」

辻仁成 展
-Les Invisibles NEHAN-

主催 帝京大学総合博物館
対象者 どなたでもご覧いただけます。(事前のお申込は必要ありません)
入場無料です。
会場 帝京大学総合博物館ミュージアムプラザ(帝京大学八王子キャンパス ソラティオスクエア地下1階)
会期 2024年10月18日(金)~12月23日(月)

開館時間 9:00~17:00(最終入館は16:30)

閉館日 日曜日・祝日

臨時開館日 10月27日(日):青舎祭(大学祭)実施日(一般来館可)

臨時休館日 12月14日(土)
備考
・大学構内には駐車場がございません。公共交通機関をご利用ください。
・高幡不動駅・聖蹟桜ヶ丘駅・多摩センター駅から「帝京大学構内」行きのバスが便利です。(所要時間15~20分)
・車いすでご来館予定の方は事前にご連絡ください

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