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フランスインテリア日記「父ちゃんのインテリア術、部屋に油絵を飾る方法を伝授する、前編」 Posted on 2024/10/27   

某月某日、自分の部屋に絵を飾って、素敵な空間にしたい。
これは、誰もが思うことだが、そもそも、どういう絵を飾って、どういう額にいれて、どこに絵を飾ればいいのか、悩んでいる人が多い。
たしかに、好きな絵を額装して部屋に飾ると暮らしが見違える、でも、額が絵を台無しにすることもよくある。
絵を購入された方からの質問で一番多いのが、
「どんな額がいいでしょう」
というものだった。
ぼくの絵は、基本、額は必要ないのだけれど、でも、やはり額に入れてみたいという気持ちは絵描きにもあって、そして、これが結構難題であることを心得ている。
正直、絵とかなりぶつかる額装もあって、でも、絵は購入された方のものなので、ぼくからも意見は言いづらく、やれやれ、これは難問なのである。
そこで、今日は、日本とフランスで美術史を学びキュレーターの資格を持つマネージャーのMMがぼくの新しいシリーズ「時の記憶」の額装をやるというので、額屋さんまでついていった。
MMの知り合いの額屋のおやじさんとご挨拶をし、絵を見せた。
「ケース・アメリケーンにしたいんですが、ご意見いただけますか?」
いきなり、知らない単語が出た。
ケース・アメリケーン????

フランスインテリア日記「父ちゃんのインテリア術、部屋に油絵を飾る方法を伝授する、前編」

フランスインテリア日記「父ちゃんのインテリア術、部屋に油絵を飾る方法を伝授する、前編」

フランスインテリア日記「父ちゃんのインテリア術、部屋に油絵を飾る方法を伝授する、前編」

※ ぼくの新しいシリーズの絵にケース・アメリケーンの一つを、合わせている、ところ。この薄さが、絵を邪魔しないのであります。



おじさんが、ケース・アメリケーンのサンプルをいくつか持ち出して来て、絵に当てはめている。専門的なやりとりが続いて、
「どうですか?」
とおじさんが、ぼくに、言った。
「えー、えー、ま、どうかな、いいかもしれないですね」
と、よくわからないので、濁しておいた。でも、イイんだと思った。
というのは、絵が強いので、ゴテゴテした主張のある額に入れると、台無しになると思っていたら、MMが提案した、ケース・アメリケーンというのは、額に木の板を打ち付けるような薄さの額で、額というよりも木枠のようなもの。
「先生、額と、絵の間に、5ミリの空間を作って、額の中に絵の宇宙をきちんと取り込むようなものをムッシュにお願いしていますが、いかがでしょうか?
「え、ああ、よかね」
ということで、これで、制作してもらうことにした。
手作りの額で、思ったよりも、安かった。
10日間ほどで、出来る、という。
おじさんとMMはちょっとは親しいみたいで、なんか、おじさん、にやにやしていた。
そして、衝撃的なことを言い放ちやがった。
「君のお母さん?」
ぼくは、おじさんと、目が合ったまま、動揺した。
「違いますよ」
とMMが否定すると、おじさん、え、あああ、やらかしちまった、と騒ぎダシ、千回謝罪、と日本人みたいに頭を下げた。
ぼくは、絶望的になった。
マダムに間違えられたことはしょうがないが、成人しているお子さんがいるMMのお母さんって、それ、どういう意味なんだよー、えー、こら!!! どついたろか!!!
次の個展に向けて大量の画材を買うため、ぶつぶつ、文句を言いながら画材屋に向かって、歩いていると、どこからか、
「辻さんですか?」
と声がした。
振り返ると、日本人のご夫婦であった。パリにやってこられたばかりの駐在さん、ということだった。
そこで、悶々とするぼくはそのご夫婦に聞いてみたのだ。・
「さっき、額装屋で、この人のお母さんか、と言われたですが、ぼく、そんな風に見えます?」
すると、奥さんの方が、ちょっと考えてから、
「いいえ、素敵です」
と嬉しいことを言ってくださったのだ。☜ほんとーです。
「とっても素敵です」
振り返ると背の高いご主人が、
「ええ」
と頷いていた。☜ほんとーだと思います。
「・・・・・」
「・・・・・」
MMが笑いをこらえていたが、気分を取り戻した、父ちゃんであった。
日本の人たちは、実に正直で、ウソを言わない、優しいね。フランスでの駐在活動、ご苦労さまです。日本の経済を支えてください。応援しております!!!!

フランスインテリア日記「父ちゃんのインテリア術、部屋に油絵を飾る方法を伝授する、前編」

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今日は、画材屋に行き、絵の具やキャンバスの注文をやった。
今後は、(フランス限定になるだろうけれど)購入された方々の部屋になじむ、額装の提案なんかも、考えないとならないかもね・・・。
いずれ、田舎のアトリエで簡単な額の制作もやろうと思っていたりする、父ちゃんであった。
そういうことも視野に入れて、今日は、額装屋のおやじさんと会ったのだった。
彼は、ぼくがお母さんではないことは分かったはずだが、まだ、きっとマダムだと思っているに違いないから、次回、額縁が出来た時に、正体を明かしてやろうと思う。
「ムッシュ、ソーリー、アイハブ!アイハ~ブ!アイハブアーペン!!!」
えへへ。

フランスインテリア日記「父ちゃんのインテリア術、部屋に油絵を飾る方法を伝授する、前編」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ちょっと、お母さんだと思われてショックから立ち直れない父ちゃんですが、ま、しょうがないですね。おとなしく、みんなのお母さんとして、生きていきたいと思います。あ、息子からメッセージが、届きました。もしかすると、お金が必要なのかも、じゃあ、この辺で・・・。お母さん業も頑張りますねー。あはは。

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