JINSEI STORIES
フランスごはん日記「三四郎が見守る中、一人で、個展のための絵の梱包をやった。あはは」 Posted on 2024/10/02 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、パリでの初個展まであと二日!おおお!
今日は朝から三四郎助手をつれて、ブリコラージュ(東急ハンズみたいなお店)にぷちぷちとかガムテープとか買いに行き、ついでに、洗車もやって、午後は絵を画廊まで運びやすくするためにかんたんな梱包(傷がつかないように)までやった、そんな一日であった。
で、あまりに車が汚れているので、洗車に行くと、三四郎が、さすがにびびっていた。
「大丈夫だよ。せんしゃって言うんだ。ブーブーもお風呂に入らないとならないだろ。君と一緒だよ」
※ そりゃあ、怖いよねー。うふふ。
※ 怪獣みたいなのが、前後左右から、襲い掛かるので、これは、怖い。
スタッフさんは、長谷っちが、ちょっと体調が悪くて、おやすみ。他のスタッフさんも別件で忙殺されており、なんと、一人で、梱包とあいなった。
ま、梱包といっても、大きなサイズの絵を二枚重ねて、運びやすいように、ダムテープでとめるだけの作業だし、パリ市内の移動だから、そこまで大変ではない。
右腕の腱鞘炎も、痛みはおかげさまでいくぶんよくなってきた。
ただ、握力が十分の一くらいになった。どのくらいないか、というと、卵を割れないほど、低下している。卵を割ろうとすると、手から、滑り落ちてしまうのだ。
何回やっても、出来ない、悲しい右腕である。(よく、ライブ、出来たものじゃ)
思うように動かない右手にいら立ちながらも、なんとか、22作品の梱包をやった、父ちゃんであった。
作業の合間に、カフェで昼食。今日は、前菜に卵のカツレツ、主菜にヒラメを注文したのだった。
「マダム、お食事の前に何かのまれますか?」
とまたまた、マダム、と来たので、しつこいようだが小さく、
「I have」
と呟いたら、え、聞こえませんでした、と訊き返されたので、
「ビール」
とほほ笑み返し、あっさり、マダムになりきった、父ちゃんであった。マジで、フランス人はちゃんと人のことを見ないのだ。
もう、この際、いちいち、「I have」と言い続けるのも、面倒なので、いっそのこと、マダムで通す気になっている。マダムにはならないが、否定しない、ということ。
髪の毛、切ろうかな。
あはは。
※ さんちゃんが見守る中、頑張った。ふー、右腕が、動かな~い。
梱包が終わったら、三四郎を連れて、屋根裏にあるアトリエに行った。
建物の9階にある、傾斜した不思議なアトリエなのだ。
別の個展のための、創作をここで進めている。
油絵の乾き具合で、どうしても、手を入れないとならない作業が残っているのだ。
ここで、作業をすると、平衡感覚が少し、おかしくなる。
そこがまた、めっちゃ、フランスっぽい。
屋根が斜めになっているのだけれど、これこそ、おフランスだね、あはは。
でも、大きな絵を描くには、ちょっと手狭なので、今、田舎に大きなアトリエを探している、ところ。
今、描いている絵は大きくても60号(130×97センチ)まで、なぜ、60号までか、というと、ぼくの車の荷台に載せられるのが、60号くらいまでだからなのである。
あと、屋根裏部屋も狭いので、100号とかだと、階段を通過できないのだ。階段が、狭いのであーる。
なので、工場の跡地のような、廃墟系の物件を格安で見つけようとしている。
三四郎も走り回れるし、それがいいね。
いつか、5メートル四方の大作を手掛けてみたいねー、と三四郎に話す、孤独な男なのであった。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
今日が2日で、明日が3日で、明後日、いよいよフランスでの初個展になりますね。ここまで、どんどん、絵の世界にのめり込むとは思ってもいませんでした。昔、描いていた作品もあるんだけれど、古い絵は、大事に残しておこうと思って、ほぼ、新作になっています。今回の個展の新作22点は、4点が60号、5点が50号、3点が30号、2点が12号、4点が8号、あと残りは、小さな作品になります。かなり、進化しているので、自信はあるのですが、こればっかりは、開けてみないとわかりませんね。ドキドキしますが、どこまでも「熱血」で自分の地平を広げていきたいと思います。
創作に後退はないです。前のめりになり、世界をそこに叩きつけていきます。
ええと、10月5日、日本時間の22時から、生放送ラジオ・ツジビルやります。ちょっと、いつものZOOMが不調で、違うシステムになるみたいですので、お聞きになる皆さん、運営の山下さんからの連絡をチェックください。ご視聴になりたい皆さんは、下のTSUJIVILLEのバナーをクリックしてみてね。めるしー。