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フランスごはん日記「なんと、日曜日の午後、不意に新曲が出来てしまった。あはは、10年ぶりの!」 Posted on 2024/09/30 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日は「セブンデイズ」という新曲を作った。
え?
そう、自分でも、驚いたが、日曜日だったし、仕事じゃない、ことをしたくて、引退したので、仕事じゃない音楽が生まれたのだった。
なるほど、そうなるのか、と大感動の一瞬であった。
絵は今までずっと、仕事じゃなく、ぼくの魂を癒す創作だったが、個展がいくつか決まってから、やはり、描くことにこれまでとは違う何かが宿った。
絵のレベルというか、絵に向かう姿勢がぐんと変化した。
逆に、大阪フェスティバルホールで引退をしたので、音楽は、自分のために解放されたことになって、動員とか売れ行きとか気にしないでよくなった。
で、どうなるのかな、と思っていたのだけれど、ギターを掴んで、つま弾いていると、そこから言葉があふれ出して、その言葉にメロディがついて、慌てて、携帯で録音をしたら、わ、けっこう、いい曲ができたじゃん、となった。
長い歌で、日々を歌っているのだけれど、途中で、ラップというか、詩の朗読みたいになって、物静かな世界観のある、不思議なフォークソングが出来上がってしまったのだった。
「やべ、天才だなー」
とまたしても、一人で自惚れ、三四郎があきれ果てていた。
あはは。
でも、次のライブで、歌うことにした。
次の?
あはは。

フランスごはん日記「なんと、日曜日の午後、不意に新曲が出来てしまった。あはは、10年ぶりの!」



一応、引退したので、ECHOESの曲はしばらく、歌わないことに決めて、コルシカ島でも、ZOOなどはやらなかった。
そのことを決めたからか、新しい曲が頭に浮かんでくるから、不思議でならなかった。
思えば、新曲って、いつが最後だったか、というと、10年くらい前につくった「ラッタッタ」が最後・・・
めっちゃ、久しぶりやん。
しかも、ZOOよりも、もっとスローで、メローで、いい感じやん。
ノルマンディに今、アトリエを作る予定なのだけれど、息子も音楽をやるから、二人のスタジオを作ろうという計画もあって、そこで、レコーディングはできるかもしれない。
5年後くらいに、こっそり、アルバムを出す、その第一歩なのかもしれない。
「ああ、おれは、こういう曲が歌いたかったんだ」
と気が付いた。
静かな、語り掛けるような、詩の朗読のような、優しいメロディラインと、かすれた声の囁くような歌唱なのであーる。
日曜日の気持ち、日々を生きている中で感じる、今の自分の心の声・・・。
加藤登紀子さんが、引退コンサートの東京第一日目に来てくださって、ステージに上って来て、「辻さん、あなたは、今日からはじまるのよ」と言い残して去っていったんだったね。
あの、今日からはじまる、の意味がその時はわからなかったのだけれど、セブンデイズの中に、その「今」があった。
三四郎がいて、仕事を減らして、ノルマンディにアトリエを構えて、絵を描きながら風にふかれて、小さな世界で生きる、男の、歌なのである。
ああ、よかった。
ぼくは、10年ぶりの新曲を手にすることが出来たじゃないか。
三四郎が、ぼくにぴったりと張り付き、歌に聞き入っていた。
こういう静かで温かい世界観、これからは、歌っていきたい。
めるしー、世界中にありがとうを届けたい。

フランスごはん日記「なんと、日曜日の午後、不意に新曲が出来てしまった。あはは、10年ぶりの!」

※ そうそう、マリオ、覚えていますか? アルバム「ジャパニーズソウルマン」でバイオリン弾いてくれたイタリア人の、オランピア劇場にも立ったあのマリオ・フォルテが、オランダのプロモーターさんを連れて会いに来てくれました。アムステルダム!!!!彼も、また、いつか、一緒にプレイしようと約束している一人です。いろいろ、楽しみだね~、マリオ!



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
音楽って、やっぱり、大事ですね。せちがらいこの世界に、温かい色を届けてくれますね。この新しい歌を自分の血肉にして、生き抜いていきたいと思います。いつか、あなたにも、聞かせたい。

父ちゃんの個展が、迫ってきました。なんと、父ちゃんの誕生日、10月4日が、個展初日になるんです。これは、画廊が勝手に決めてきた日で、思わず、笑ってしまいました。きっと、素晴らしい日になりますね。個展、不安もありますが、きっと、素晴らしい第一歩を踏み出せるような気がします。応援、いつも、ありがとね。父ちゃんでした。

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自分流×帝京大学

※ 次のラジオ、生放送は、誕生日の翌日、10月5日、日本時間の22時から、です。詳しくは、下のTSUJIVILLEのバナーをクリックしてみてください。めるしー。

TSUJI VILLE

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