JINSEI STORIES
仏飯日記「アンティーク蚤の市に行ってきました」 Posted on 2024/09/19 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、アンティークの蚤の市のことを、ブロカント、という。
パリ市内の各所で、このブロカントが開催される。
時々、街角とかに、「来週、ブロカントがあります」と看板が出ていることがある。
今日は、マドレーヌ寺院とオペラ座のちょうど間、あの、オランピア劇場の真ん前にブロカントが出るという情報を聞きつけ、ほしいものがあったので、出かけた。
三四郎はお留守番・・・。えへへ。
古い家具とか、銀食器とか、出物と出会うことも多いブロカント、パリ観光の名物でもあり、たまたま、遭遇した観光客の皆さんも、大喜びなのだった。
で、話しは、ちょっとそれるのだけれど、マドレーヌ駅で地下鉄をおりて、階段を上っていると、目の前に、アジア人の男性がたっていた。
で、目が合った。
なんとなく、日本人っぽい、でも、よくわからない。
九州出身の人にこういう顔がいるな、と思って、こっちも見てしまった。
すると、その男の人、こちらに、つかつかと歩いてきて、右手をあげて、
「ニンハオ」
と言った。
そこから、疑うことなく、ぼくに道を尋ねた。たぶん、道を尋ねたのだと思う。オペラ地区の方を指さし、
「たーしーまーはー、あーしーまーはー、・・・・・」
みたいな感じで、なれなれしくいっぱい聞かれたのだった。
で、一応、聞き終えてから、
「じゃぱにーず」
と自分を指さし、言ったら、
「あああ、あああ」
と言い、苦笑いを浮かべて、そそくさと去っていった。
生まれてはじめて、中国人に中国人だと思われた瞬間であった。
しかし、今日はそこで終わらなかった。
ブロカントを物色していると、銀食器コーナーーの反対側にいる年配のマダム二人が、ぼくの顔を見て、片方が、片方の袖をひっぱり、見て、みたいな合図を送った。
二人が同時にぼくを見て、
「ニンハオ」
と言ったのだ。
違う!!!!
反論しようとしたのだけれど、そのマダムが一斉に、
「たーしーまーはー、あーしーまーはー、・・・・・」
すいません。そんな風に聞こえただけで、悪意はありません。中国語を連射してきたのだった。やはり、何かをぼくに聞こうとしている。
違う!
「ぼく、日本人です」
と思わず、日本語が飛び出してしまった。
二人は、え? という顔をしたので、
「じゃ、じゃぱにーず、じゃ」
と言ったら、
「あああああ」
という顔をして、苦笑され、自分たちの間違いを笑ってごまかしていらした。
なぜか、生まれてはじめて、中国人だと思われて、道を聞かれたか、と思いきや、今度は、二人組のマダムに、どばっ~と何か言われた父ちゃん、
慌てて、ブロカントの年代物の鏡に自分を映してみたのだった。
ああ、もしかしたら、このヨージヤマモトの服が、カンフー映画の達人みたいに見えたのかもしれない。
自分の恰好を下から上まで、じっとながめた、父ちゃんであった。
ということで、在仏歴23年、生まれてはじめて、続けざまに二回も、中国の人に中国人と間違えられるという、快挙、驚くべき経験を持った、・・・。
父ちゃんのルックスが、中国化している、ということであろうか。
もしかすると、誰か有名な中国のスターが今日、オペラ界隈で映画の撮影とかしているのかもしれない。
あはは。
ま、どうでもいいのだが、今日は、ブロカントを歩きながら、アジア人の視線がやたらと気になったので、ご報告であった。
もしかすると、中国で受ける兆しか???
ちなみに、お腹がすいたので、昼食は、コジャンという若者に人気のファーストフード店に入ったら、横に、アジア系のカップルがいた。
見た感じは日本人にしか見えなかったが、韓国の方々であった。
目が合ったが、2秒後に、無視された。
「かむさはむにだー」
あはは。
つまり、彼らはぼくを韓国人とは思わなかったのであーる・ぬーぼー。
ということで、この季節、オペラ地区は、中国人と韓国人ばっかりで、日本人らしき人は一人もいなかった。
あ、一人、マドレーヌ寺院の前ですれ違ったアジア人の中年男性が、「うま味」と書かれたバックを肩からかけていたので、もしかすると、もしかするけれど、ま、どうでもいいか、日本の方でしたか???
結局、ブロカントでは探していたものは見つからず、戻ることに。
あはは。
※ 今日の父ちゃんのいでたち、たしかに、カンフールックっぽいね。あはは。
今夜は、美術関係者が集まり、初個展に向けての親睦会があるので、父ちゃん、午後は、腱鞘炎を我慢しながら、料理をした。
これが、右手がしびれて不自由なので、二度も卵を落として割っちゃったし、唐辛子をぶちまけてしまい、三四郎をキッチンから締め出さなければならなくなり、大変であった。
こうやって、日記を書くのも一苦労、なかなか、しつこい、腱鞘炎なのである。
5,6人分の料理、頑張っています。
詳しくは、明日の日記でね。
しぇーしぇー、さいつぇん!!!
はおつー!!!!?
※ このはみ出した胡瓜、これこそが、腱鞘炎による、もの・・・。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
いや、右手、なかなか思うように動いてくれないです。でも、引退までは動いたのだから、ま、よかですね。えへへ。
さて、父ちゃんのフランス、初個展ですが、10月4日、14時から、12日の17時くらいまで、になります。14時から19時まで。おちかくに、お住みの皆さん、どうぞ。
そして、次のラジオは、9月22日になります。ええと、ご視聴ご希望の方は、下のTSUJIVILLEのバナーをクリックください。めるしー。