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滞仏日記「パラリンピック、車いすラグビー、初決勝進出~、おお、来たね!!!」 Posted on 2024/09/02 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、日曜日、快晴だった。人々の声援が届く。。
最上階にあるアトリエに上り、窓をあけて、絵を描いていたら、ビーチバレーの会場がすぐ近くだからか、ものすごい声援が聞こえてきた。
窓から顔をだし、下の方を見ると、大勢の人が、スタンドに陣取り、盛り上がっていた。
頑張る人たちを、応援するスポーツが好きな人がこんなにもいるのか、と思うと、なんだか、ぐっと胸が熱くなった。
戦争をやっているこの同じ世界で、力を合わせて頑張っている人達がいた。
さて、昨日の日記で書いた、車いすラグビーだが、準決勝戦で、オーストラリアに競り勝ったようだ。
昼過ぎに、フランスのニュースサイトで速報が流れた。
メカニックを担当している川崎さんに、おめでとう、とメッセージをおくったら、
「ありがとうございます。みんな生き生きと頑張ってます。過去2大会は準決勝で敗退しており、準決勝は苦手な試合でしたが最終ピリオドで逆転勝利する事が出来ました。車いすラグビー日本チームはパラリンピック初の決勝に望みます。いつもどおりしっかりやりきります」
と、忙しいのに、お返事が戻って来た。よかった。
観客席から応援できなかったのが、超残念だったが、きっと、ここに書かれている通り、日本チームの皆さんは、決勝戦(明日、たぶん、日本時間の今日、二日の夜中くらいかな)に向けて、最終調整に入っていることであろう。
ゆっくりとやすんで、明日に備えてほしい。
ということで、父ちゃんは嬉しかったので、オペラにある呑もちゃんこと野本の国虎屋に行き(地下鉄で。ついに、定期券のようなものまで購入。すっかり、地下鉄好きになった。あはは)、いつものカウンター席に陣取り、かるーく、乾杯をしたのだった。

滞仏日記「パラリンピック、車いすラグビー、初決勝進出~、おお、来たね!!!」



「ほー、それはすごいね」
野本に、川崎さんのことを話した。
車いすラグビーのメカニックをやっている人で、車いすラグビーがどんなスポーツなのか、メカニック担当がどんなに大変な役割なのか、など、昨日の日記に書いたようなことを、一通り教えてやったのだった。あはは。教えてやった! ☜えらそうに。
うどん屋だったのに、還暦を過ぎてから、炭火焼の店をパリの中心部に出したこの男も、ある意味すごい。
66歳なのに、いまだ現役で、店に出て、料理している。
よくわからないが、厨房の中に、10人くらいスタッフがいて、ちょっと、多すぎるんちゃうか、と言ったら、ま、見習いもいっぱいいて、来るな、と言っても来るからさ、追い返せない、と笑わせてくれた。
シャネルで働いていたデザイナーさんが、自分の店をパリに出すまで、接客の勉強を兼ねて、働きだしたのだそうで、野本というやつは、そういう人をすぐ助けちゃう、気のいいおじさんなのであった。
「いつか、出世するかもしれないからねー、みんな夢を持って生きているから、いいんだよね。生き生きと働くことが大事だ」
ぼくは、野本が作る焼き鳥弁当が大好きなのだ。
細かい、いい仕事をしている。
「料理、上手になったな」
「なに、言ってんだよ!」
「焼き鳥らしくなってきた」
「なに、言ってんだよ! バカ言ってんじゃないよ」
ぼくは、車いすラグビーの選手の皆さんのことを思いながら、微笑み、ビールを飲んだ。心地よい、日曜日であった。

滞仏日記「パラリンピック、車いすラグビー、初決勝進出~、おお、来たね!!!」

滞仏日記「パラリンピック、車いすラグビー、初決勝進出~、おお、来たね!!!」



帰り道、競技場の方から車いすに乗ったかなり重度のしょうがいを持っている若い男の人が、家族に付き添われて、ぼくのほうに向かってやってきた。
どこかの国の旗を持っていたが、その顔は、笑顔だった。
何かの競技を見た帰りなのであろう、笑顔からさっするに、きっと、強く励まされたに違いない。
夏は引退公演のために、日本にいたので、パリ・オリンピックは経験できなかったが、パリ・パラリンピックの空気感を肌で感じることが出来て、ぼくもすごく、元気を貰うことが出来た。
引退父ちゃんだったが、またここから、新しい世界のドアをあけてやろうと思った。
車いすラグビーの選手、スタッフの皆さん、明日、決勝戦、どうぞ、楽しんで、がんばってくださいね!
マジで、すぐ近くの空の下で、応援をしています。

滞仏日記「パラリンピック、車いすラグビー、初決勝進出~、おお、来たね!!!」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
個人的には、もうすぐはじまるパリでの初個展、楽しみでしょうがないです。ぼくも川崎さんたちからエネルギーを貰ったので、来月は初個展、成功させてみせます。人間は時に、殺し合うくせに、でも、支え合ったりもするから、不思議ですね。支え合う世界を支えていける人間になりたいと思いました。

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