JINSEI STORIES

滞仏日記「三四郎を愛でる会から始まる一日。犬がいる暮らし、寂しくありません」 Posted on 2024/08/30 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、朝、起きると、三四郎が待ち構えている。
なので、まず、「三四郎を愛でる会」からスタート! 父ちゃんの日課なのであーる。
「おはよー、さんちゃーん!さんしー、よく眠れたかな? おお、そうかそうか、それはよかったねー、さんちゃん、今日も一日、パパしゃんと、精一杯生きたろうねー」
といって、頭をスリスリ摩ってやったり、ぎゅっとハグしてあげると、いっぱい、尻尾を振ってくれる、おお、愛おし~、我が愛犬なのだった。
さっと歯を磨いたら、さんちゃんに「朝ごはん」(ただのドッグフード)をあげて、さ、散歩に、出発~。
事務所兼自宅の周辺を歩くのである。
散歩=ピッピ&ポッポ(おしっこ&うんち)タイムなのだった。
大きな木のたもとで、まず、ピッピ。でも、なぜか、ポッポは同じところではしない。
必ず、別の場所へ移動をしてから、する。
ま、一晩我慢しているから、朝は、ちゃちゃっとやってくれるので、らくちん。
そのまま、ぐるっとカルチエを一回りして、行きつけのカフェに立ち寄るのが習慣。
もう、さんちゃん、行くのわかっているから、率先して、カフェを目指し、ぼくを引っ張っていく・・・。おいおいおい! 
んで、自分から、どんどん、店に、入っていく。
「ボンジュール」
カフェのお姉さん、さんちゃんに笑顔。(たまに、水を持ってきてくれます)
ま、朝はいいんだけれど、午後の散歩も、どんどん、カフェに入っていくので、リードを引っ張って、今日はカフェに行かないよ、と引き留めないとならないから、大変。
カフェ犬、三四郎なのだった。あはは。
で、ぼくがカフェオレを飲んでいるあいだ、三四郎は、テーブルの下で寝て待つのだ。でも、時々、落ちているバゲットとかを探し回ることもある。
察知したら、「ダメ」と、注意している。
3回くらい、注意すると、しゃーないな、という顔をして、諦めてくれるが、それでも諦めない場合は、
「おやつ無し!いいんだね、おやつ無しだよ~」
と厳しめに言うと、だいたい、おとなしくなって、くれる。しゅん・・・。
あはは。

滞仏日記「三四郎を愛でる会から始まる一日。犬がいる暮らし、寂しくありません」

滞仏日記「三四郎を愛でる会から始まる一日。犬がいる暮らし、寂しくありません」



カフェの近くにスーパーがある。自分が食べる分の食材を買わないとならないことを思い出した父ちゃん。でも、三四郎は、スーパーには入れない!
ということで、さんちゃん、スーパーの前のポールにつながれ、待機~。
昔は、盗まれやしないか、心配だったが、大人になったので、変な人が来ると吠えるようになった。偉いね。5分程度なら、買い物ができるのだ。
よかった。
大急ぎで魚屋に行き、イワシ14匹、2ユーロだったので、ゲット! 安っ。
今日はイワシの南蛮にしようと決めた。青魚は健康にもいいしね。半分をイワシ南蛮にして、残りの半分をうな丼ならぬ、イワシ丼にするんだ! えへへ。
ぼくがスーパーから戻ってくると、尻尾をめっちゃ振って、喜ぶさんちゃん。
「いい子だねー。三四郎は、えらいなー。ちゃんと待っていたね、あとで、帰ったら、おやつにしようね。おやつ!」
というのが、だいたい、朝のお決まりコース。
で、お昼までの時間は、今だと、個展に向けて隣の建物のアトリエに行き、2時間くらい、画布と向き合う真面目な父ちゃん。
その間、さんちゃんはお留守番~。三四郎の宿命だ。
犬は、最初ちょっと寂しいのだけれど、15分くらいすると、寝て、忘れてしまう、らしい。ほんとかどうか、知らないけれど、誰かが教えてくれた。
監視カメラで、三四郎の動向を小刻みにチェック。
だいたい、玄関前の、自分のソファで寝ている。ぼくがいなくなると、彼は必ず、100%ここでパパの帰りを待つのだ。偉いよねー。
ぼくが一仕事終えて戻ると、鍵の音でわかるみたいで、いつも、待ち構えている。朝と一緒。
ということで、「さんちゃんを愛でる会」となーる。
「よしよし、いい子だねー、お留守番できたの~、えらいねー、いい子いい子。あ、じゃあ、あれいく?」
あれ、というぼくの表情に反応をして、ジャンプして、くるくる、ぼくの足元を回り始めるのだ。あれ、あれ、あれ、ほしいよー。パパしゃん、あれくださーい。愛をくださーい♪
「おやつだァ~」
ということで、いつもの「砂肝」を半分だけ、あげるのだった。
「はい、伏せ!」
前脚を伸ばして、ちゃんと伏せのポーズをとるさんちゃん。きゃわいい。
ぼくは砂肝を三四郎の前に置いて、待て、という。いじわるするわけじゃなく、ちゃんとしつけるために、ちょっと待たせるのが習慣。
「よし、えらいぞ、はい、どうぞ」
はい、どうぞ、が合図になって、砂肝をくわえるさんちゃん。
そのまま、獲物をくわえて、廊下を疾走し、テーブルの下に持っていき、もぐもぐ、もぐもぐ、さすが、狩猟犬のはしくれであーる。
あはは。

滞仏日記「三四郎を愛でる会から始まる一日。犬がいる暮らし、寂しくありません」

滞仏日記「三四郎を愛でる会から始まる一日。犬がいる暮らし、寂しくありません」



父ちゃん、お腹すいた。気管支炎の薬を飲まないとならないので、まずは、ランチにしましょう。今日は! いえーい、いわしの南蛮だァ!
たったの1ユーロで、ゴージャスな昼ごはんになった。
気を付けないとならないのは、三四郎、必ず足元にいる、ということ。
忍びの忍者みたいに息をひそめてやって来るので、気づかず、前はよく踏んづけていた。
でも、油ものとかやっている時は、もしも、ひっくり返すと、さんちゃんも父ちゃんも大やけどしちゃうので、最近は、つねに、足元にいる、と思って料理をやっている父ちゃん。
ま、いろいろとあるんですよ、犬との暮らし・・・。
はい、いただきまーす。
三四郎は貰えないのわかっているのだけれど、一応、足元から、ぼくをずっと見上げている。
それが、犬のお決まりなんだよね。
最初は、見られながら食べるの嫌だったけれど、最近、やっと、無視することが出来るようになった。視界から、消えるさんちゃん。
騒がず、じっとしていたら、最後に、おやつのビスケットをあげることにしている。
人間が食べるものは、身体によくないものが多いので、普通はあげない。
ヨーグルトとか、トマトとか、そういうものなら、時々、与えることもある。
でも、イワシの南蛮はねー、さすがに、ダメ~。
「パパしゃん、何食べてるの~? なんか、美味しそうだけれど」
みたいな、物言わぬ視線。目力強い、さんちゃん。じっ~。
「さんしー、こんなのまずくて、犬には無理だよ、ダメダメだよー」
父ちゃんは、気管支炎の薬を飲んで、ま、食後は、だいたい、さんちゃんとソファで、お昼寝タイムなのであーる。
ぼくがソファに行って、ごろんとすると、三四郎も飛び乗って来て、自分のお尻をぼくのお腹にピタっとくっつけて、すやすや~。
いいね。すやすや~。
仲良しだね。

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つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
一日のことを書こうと思ったら、もう、3000字になってました。あはは。お昼寝の後のことは、明日の朝の日記で、ご紹介しますね。気管支炎ですが、薬が凄く効いて夜の咳は出なくなりました。ほっ。すごいねー、医学の力!!!

はい、ということで、父ちゃんからのお知らせは、いつもの、「エッセイ教室」と「ラジオ・ツジビル」に、ついてです。
エッセイ教室は、こちらからです。

https://tunagate.com/community/xWZVvgZD/circle/92861/events/348688

そして、月三回、生放送をやっている、父ちゃんのおしゃべりラジオ「ラジオ・ツジビル」は、下のバナーをクリックくださいね。☜、働いてる~。笑。

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