某月某日、アトリエの窓を開けると、遠くにエッフェル塔がそびえていて、雨雲に霞むエッフェル塔って、絵になるなー、とぼんやり眺めて過ごしたのだった。
「赤と黒」という新しいシリーズを今、手掛けているのだ。
だいたんな赤と、漆黒だけで描く、ニューワールドで、これは２０２５年の個展のメインテーマになるのであった。
ふふふ、次々、進化している、父ちゃんなのであーる・ぱちーの。
絵を描く時は、だいたい先に、ばくぜんとした物語があって、下書きとか一切なしで、いきなり、パレットナイフで、油絵具を叩きつけていくのだけれど、今回は、パレットナイフごと、画布に飛ばしたりして、あはは、なかなかダイナミックな世界になっている。
パリだけれど、ちょっと情熱のスペインを思わせる、タッチ！
ついでに、絵を描く合間に、スペインで買ったギターを掴んで、エッフェル塔を眺めながら、ラヴェルのボレロを演奏して、迎えのアパルトマンのご婦人をうっとりさせた、アダルトな父ちゃんなのだった、ボルサリーノ～。☜これは、あくまでも、本人のイメージです。現実はそう甘いものじゃございません。
ぼくの家のすぐ近くに、アランドロンさんが住んでいたのだけれど、彼の主演作に、よく出ていたこういう感じのエッフェル塔・・・。
もう、２３年も眺め続けてきたのだけれど、変わらないねー。

昼は、麻婆豆腐を作って、食べてから、雨が小降りになったすきをついて、三四郎を散歩に連れ出したら、顔なじみになっていたプードルのママさん（ちょっとジャンヌ・モローに似ている）に、
「あら、おひさしぶり、バカンスはいかがでしか？」
と笑顔を向けられ、ちょっと嬉しい父ちゃんであった。
数分、立ち話をしてから、かっこつけて、そこを離れたのだけれど、残念なことに、絵を描く時の作業着を着ていたので、ズボンとか、油絵具まみれで、しまった、と思わず、悔しがったが、時すでにおそし、であった。
今日は、赤と黒が衣服にべったりとついていたのであーる。
フランスのマダムは、声も低くて、美人というよりも、ちょっとハンサムで、クールな人が多い。ぼくは、フランス人とお付き合いをしたことがないから、わからないけれど、ああいうジャンヌモロー系のマダムが、
「あなた、コーヒーでもいかが？」
とか、アトリエにやってきたら、人生はどうなっていたのだろう～。あはは。
三四郎もぼくも短足で、ジャンヌモローとプードルは足が長かった。えへへ。
ま、別世界だからね～、素通りしておこうかね、さんしー。
「わん」
ということで、午後はソファに寝転んで、マガジンハウスのゲラ「愛犬三四郎と生きる」を眺めてすごしたのだった～。いろいろと仕事抱えているが、おいつかない。編集者のOさん、ごめんなさい。読んだふり、しておきます。

※　三四郎のごはん。鶏肉と白菜を煮込んで作ります。これを小分けして冷凍にし、ドッグフードにかけて、食べさせるのです。

ま、ともかく、雨のパリは、嫌いじゃない。
しとしとと降りしきる雨音を聞きながら、三四郎とじゃれ合って、過ごしたのだ。
今、描いている「赤と黒」は、ジャンヌモロー主演作の「死刑台のエレベーター」で使われたマイルスデイビスのトランペットが似合うかも・・・。
２３年も、パリで暮らしてきたけれど、古い建物のらせん階段の真ん中に、無理やり入れ込んだ小型のエレベーターこそが、めっちゃフランスなのだった。
ぼくのアトリエは９階になるので、そこまでサービス専用のエレベーターで昇らないとならない。嫌いな世界じゃない。
アトリエのドアをあけて、窓から、いつものエッフェル塔を眺める時、やっぱり、ジャズのトランペットの音が聞こえてくる。
ぼくはコーヒーを飲みながら、ちょっと酔いしれて、カンバスに、派手な赤を叩きつけるのであった。

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
今日は、すごく、絵が進んで、大きな作品なんですが、かなり、いい出来栄えで、あはは、こういう日は、なんか、にやにやしちゃいますね。早く皆さんに「赤と黒」の新世界を届けたいのですが、一部、１０月４日からはじまるパリの個展でも、展示します。フランスでどういう評価が出るのか、ちょっとわくわく、どきどきしますよね。あと、ひと月ちょっとですから、ぼくの次の目標はそこでしょうか。ここは、人生の大勝負になりますね。気合いを入れて、仕上げていきたいと思います～。ふぁいとー。

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