JINSEI STORIES

滞仏日記「ガラガラのパリ、フランス人のいない静かなパリで、疲れを癒す父ちゃん」 Posted on 2024/08/17 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、パリがあまりに静かなので、ううう、心地よい。
オリンピックが終わって、オリンピックを観戦する人たちが去ったからか、パリ市内はがらんとしている。
今日は、デザインストーリーズのライターさんとカフェでランチ・ミーティングをした。
この方は、エッセイストでもあり、作家を目指してもいる。才能豊かな方だ。
小説を書いている方なので、長谷っち同様、先輩の作家として、時々、出来る限りのアドバイスなどもしている。とはいえ、そんな偉そうなことは何も出来てないのだけれど・・・。
いつも地球カレッジでやっている文章教室のようなもの・・・、
、あ。小説なので、エッセイとはちょっと異なる。それが、作家を目指す人はまわりに多く、やはり、プロを目指している方々は、自分もそうだったけれど、とにかく真剣なのだ。
その方は、いい腕を持っているので、あと一歩だと思うのだけれど、どういう風にアドバイスをすればベストか、父ちゃん先生も悩むところだ。
こうやるといいですよ、というような直截なアドバイスはよくない。
個性というのが大事なので、こればかりは、鋳型に押し込むのはまずい。
その方法を、自分で見つけていかないとならない。
ある程度の実力と経験がある人に対しては、変な言い方ではあるが、逆に、遠回しにアドバイスをすることが多い。
経験からの、ぼくなりの意見を出来るだけ、遠くから、池にぽんと小石を放り込むような感じで、言うのだ。
こうしなさい、とか、強くいっちゃいけない。
ここの部分を伸ばせば、もっとよくなるな、と思う箇所がある人は、確かに才能がある。
そこを、誤解を招かない程度に、慎重にアドバイスしていくのだけれど、こればかりは、最終的に、ご自身で出口、もしくは、入り口を発見するしかないのだ。
話し合いの最後の方で、
「あ、閃きました」
とその人が言ったので、そこまで、となった。それでいいんだよね。
いいものを持っている書き手の人なので、がんばってほしい。
エッセイ教室の場合は、大勢の人が受講されるので、まず、中心になる、大きなイメージを伝えることが大事になる。
暗闇の中に、光をともすのが、ぼくの大事な仕事だ。
次回もそういう会にしたい。

滞仏日記「ガラガラのパリ、フランス人のいない静かなパリで、疲れを癒す父ちゃん」

滞仏日記「ガラガラのパリ、フランス人のいない静かなパリで、疲れを癒す父ちゃん」

滞仏日記「ガラガラのパリ、フランス人のいない静かなパリで、疲れを癒す父ちゃん」

滞仏日記「ガラガラのパリ、フランス人のいない静かなパリで、疲れを癒す父ちゃん」



それから、一つ仕事を終わらせてから、絵の道具を買いに、画材屋へと向かった。
オリンピック会場周辺は警備も厳しく、高い壁で覆われており、いつも三四郎と遊んでいるような公園でさえも、近づけない。
いつもよりも何倍も移動に時間がかかる。
画材屋に行き、こぶりのカンバスと足りない油絵具などを買ってから、再び、人のいないパリを歩いた。
知り合いのカフェがあったので、そこで、コーヒーを飲んだ。
「どうだったの? オリンピック中は?」
「すごい、もう、朝から120%、満席だったよ」
うどん屋の野本は「夏のあいだ、ちょっと苦戦したよ」と苦笑いを浮かべていた。
オリンピック会場の周辺のカフェは大繁盛、でも、ちょっとオリンピック関連施設からずれると、交通規制も激しいこともあり、陸の孤島のような感じになって、しかも、常連たちはパリを離れているので、お客さんがいない、という感じになったようだ。
知り合いのカフェは、ビーチバレーの会場の真横だったので、ずっと賑わっていて、大儲けだった、とか。笑いが止まらない、と満面の笑みだった。
ま、これも、人生、いろいろとあるね。
パリ・飲食業の方々、明暗を分けた、オリンピックのようであった。

滞仏日記「ガラガラのパリ、フランス人のいない静かなパリで、疲れを癒す父ちゃん」

滞仏日記「ガラガラのパリ、フランス人のいない静かなパリで、疲れを癒す父ちゃん」

滞仏日記「ガラガラのパリ、フランス人のいない静かなパリで、疲れを癒す父ちゃん」

滞仏日記「ガラガラのパリ、フランス人のいない静かなパリで、疲れを癒す父ちゃん」

※ このような高い壁が、まだしばらく撤去されないということのようである。たぶん、11月になって、やっと元のパリに戻るのかな、ということらしい。



それにしても、人のいない静かな夏のパリは、気持ちがいい。
つい、先週まで東京駅の大丸の横で暮らしていたとは思えない感じだ。
暑いことには暑いが、クーラーがないので、冷房病みたいなものにはならないし、夜は長そでを着て寝ないと寒いくらいなので、ま、心地よい夏の終わり、である。
これから、三四郎を迎えにジュリアの家まで車で出発するので(もちろん、規制された道をくねくねと迂回しながら)、さんちゃんの写真は、明日の日記で・・・。

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
引退公演ツアーの疲れがやっと、やっと、とれてきました。移動も多かったし、個展もあったからね。でも、だんだん、いつもの父ちゃんのペースに戻っている感じです。三四郎にもやっと会えるし、しばらくは静かな生活になります。明日は、大好きな福井蕎麦を食べに行くんだ! えへへ。

ということで、9月8日に、その、きまぐれエッセイ教室、を開催いたします。エッセイのお勉強されたい、みなさん、下のURLをクリックくださいね。

☟☟☟
https://tunagate.com/community/xWZVvgZD/circle/92861/events/348688

それから、引退しましたが、今後の活動についての最新情報などは、月に3回生放送をしている辻村村営ラジオ局、「ラジオ・ツジビル」で、のみ、プライベート活動など発表されていきます。お気になるみなさま、こちらのバナーをクリックください。
☟☟☟

TSUJI VILLE

滞仏日記「ガラガラのパリ、フランス人のいない静かなパリで、疲れを癒す父ちゃん」

※ 父ちゃんの路上ライブ!? あくまでも、イメージです。



自分流×帝京大学