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滞日日記「博多の実家で、握っていた携帯から、不意に地震アラート、初経験、その直後に揺れた」 Posted on 2024/08/09 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、引退ライブの翌日、ライブに来れなかった母親の顔をみるために、疲れ切った身体に鞭を打ち、(笑)、大阪から新幹線で、福岡へ、移動し、実家の居間でくつろいでいると、不意に、握っていた携帯から、ものすごい音が飛び出し、思わず、立ち上がってしまった、父ちゃんであった。
「うあわ、なんだこれ」
弟の恒久の携帯も、母さんの携帯も同じなのだ。
「あにき、地震が来る」
「え、なに、そいうこと?」
その直後、弟の言うとおり、マジで、揺れた。
「おおきかね」
母さんが、天井をみながら、つぶやいた。
横揺れだった。
「どこだ?」
「テレビつけろ」
弟が、テレビをつけた。宮崎で、地震なのだった。
なんと、地震アラートだったのだ。はじめての経験だった。
その音の大きさに、びっくりした。しかし、フランスにも同じようなのがあったらしく、知り合いがシテ島に住んでいるが、オリンピックの始まる前に、やはり、携帯が警報を鳴らした、という。
こういうことが出来るのだね。
そして、地震アラートから、十数秒後、マジで、揺れたので、その精密度に、驚く、父ちゃんであった。地震に対する備え、すごいね。
テレビのアナウンサーさんも、必死で、津波などの心配をされている。
『ちょっと自分の声が興奮気味に聞こえて不安をあおるかもしれませんが、もうしわけありません。しかし、津波がきてからではおそいので、ご注意ください』
みたいな、生々しい放送であった。
いい、と思う。津波が来てからでは、おそい。
カメラは、宮崎の海岸をうつしている。
浜辺に、ひとり、誰かがいた。その人は、泳ぐのか、上半身裸だった。携帯、もってないから、知らせないといけんね、と母さんがいった。
そのあと、宮崎のテレビ局からの中継があり、地震の状況が刻々と伝わって来たのだった。、

滞日日記「博多の実家で、握っていた携帯から、不意に地震アラート、初経験、その直後に揺れた」



夜、お世話になっている、家族同然の、母さんの主治医の先生ご夫妻と、ごはんを食べにいった。
引退ツアーがおわり、疲れも出ていたが、元気そうな母さんにあえて、よかった。
89歳とは思えない、体力で、杖もつかわず、一人で階段の上り下りも出来ていた。
先生が、
「100歳、いけますね」
と太鼓判をおしてくださった。
いつものメンバーで、軽く食事をしたが、ぼくはさすがに、張り詰めた引退ツアーのあとだけに、まだ、アルコールに手が伸びなかった。
「南海トラフの可能性があるようだね」
と、弟が言い出した。
「南海トラフか」
とぼくは思った。
この一週間は、みなさん、とくに警戒をした方がいい、ということを誰かが言っていた。
「おにいちゃん、靴だけは、ベッドのそばにおいとききなさい。大地震がきたら、逃げないとならないが、ガラスが粉々になるからね、靴が大事だよ」
と母さんに、言われた。
備えないとならないね。
「としさん、大丈夫かな」
と弟が言った。
「トシは、大阪フェスティバルホールに飛び入りしたから、まだ、戻ってないと思う。それか、帰路か、車での」
ECHOESのベーシスト、トシが、大阪フェスティバルホールに飛び入りをした。
彼は、宮崎の海沿いに住んでいるのだ。車で宮崎に戻っているはずだから、そろそろ、着いているかもしれない。
「地震、大丈夫?」
とラインをしておいた。
まだ、返事はない。
それから、引退ライブの写真と映像を母さんに見せた。
「あら、よかったったい。元気なうちに引退はよか。それが、あんたらしい決断たい」

滞日日記「博多の実家で、握っていた携帯から、不意に地震アラート、初経験、その直後に揺れた」

滞日日記「博多の実家で、握っていた携帯から、不意に地震アラート、初経験、その直後に揺れた」



滞日日記「博多の実家で、握っていた携帯から、不意に地震アラート、初経験、その直後に揺れた」

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
とにかく、みなさん、地震に備えてください。しばらくは、高度の警戒をした方がいいみたいです。靴もそばにおいといてくださいね。

お知らせします。
「パリごはん2023SP」の再放送です!
今回は、「NHK BS」での放送になります。

「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2023SP」
【再放送】 NHK BS 8/10(土)14:00~15:29

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