JINSEI STORIES
退屈日記「古い鍵をつかって、ウイルスを遠ざける護身術」 Posted on 2020/04/20 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、大阪市の吉村知事のツイートで日本の各都市の人出の表が出ていた。ええ、大阪市、86%減出来てるし、新宿もほぼ80%減じゃないか、と驚いた。それで慌てて「すごいぞ、日本」とツイートしたら、いい数字が出ているのは中心部だけで生活圏の市町村では人がわんさか出ていると、鎌倉の大渋滞の写真や吉祥寺商店街の写真が送られてきて、あちゃー、と思った。しかし、中心部が出来るんだから、工夫をすれば、生活圏の市町村だってきっと出来ると思う。これは自分や大切な家族や仲間を守るための行動なのだから、ここは頑張ろう。絶対、出来る。というのは、フランスは法令で罰せられる状況でやっと9割という感じなので、罰金もなくて大阪みたいに9割近いって、奇跡に近いよ、まじ。これでもう少し頑張れれば日本は9割やれるかもしれない光りが見えたわけで、笑われるかもしれないけど、日本の底力出せる可能性があるので、力合わせようよ。もともと日常的にマスクしてきた綺麗好きな国民性だから、出来るはずだ。じゃあ、生活圏、地方や郊外の住宅地でどうするか、だと思う。ぼくが実践してきたことを「おさらい」として、ちょっと書くから、参考にしてみてほしい。
まず、この新型の感染力がまったく予測できないということと、変異しながら強力になっているということ、重症化するとガラスを吸い込むような苦しい日々を生きないとならない、最悪は死んでしまう、そんなの嫌だ、と自分に言い聞かせる。これ、改めての第一歩だ。とくにタバコを吸う人、お酒を飲む人、男性で肥満な人、は気を付けて。(持病のある人、高齢者はもっと気を付けてください)で、買い物などは、週に一度大量買いするのがいい。デリバリー出来るなら、それがなおいい。フランスにもちょこちょこ外に出たかがるおじさんとかいるんだけど、これはよくないし、リスクが高い。「ちょこちょこ出るな!」が鉄則である。地元の商店街とかなら大丈夫だろう、という発想が一番危険だと自分に言い聞かせる。駅前とか繁華街こそ感染の温床だから。買い物は出来るだけ短期決戦で前もって買うものを決めておくのがベスト。ぼくは買い物ノートを作ってるよ。必要なものはその都度メモしておけば、買い物がスムーズに完了する。そして、人の少ない時期を見計らう。ぼくはみんながいない時間を狙っている。人の少ない店、人のいない時間を狙うがとっても重要だ。または閉店間際とか、開店直後とか。買ったものは全て除菌する。ウイルスはかなり長い時間残る。冷凍庫でも死なない。石鹸水で瓶とか缶とかも洗うこと。
大勢の人が吉祥寺の商店街を歩く写真をみたけど、アメリカの報告によるとエアロゾル化した呼気が3時間残るという研究成果も出ている。実際はどうかわからないことも多いよね、情報が錯綜としているのが現状だからだ、ならば、君子危うきに近寄らず、で行こう。吉祥寺のアーケードとかにあれだけ密で買い物している人がいる状況はやはりリスク高いと思う。昔、ぼく住んでたからよくわかる。アーケードもある意味密の状態じゃないか、と思うけどね。ぼくは息子にジョギングの人が近づいてきたら逃げるように教えてる。走者の吐き出す息は4メートルくらい飛散しているらしい。マスクしてないし。
そこで、ぼくはものすごいことを思いついた。感染を防ぐ新たな技術。下の写真をご覧頂きたい。古い鍵を使って、ドアの開け閉めや、銀行のディスペンサーのボタン、お店のカード端末機のボタンを押すようにしている。これは本当に安全で便利なので、似たようなものを探してやってみてほしい。「命の鍵」と命名している。やり方は、以下、参照だけど、欧米式のこういうドアノブなら有効なんだけどね、日本のは握るのが多いから、そこは手袋で…。あと、レジのキャッシュカードのボタンにも有効なので、使ってみてほしい。
とにかく、日本の都市部での人と人との接触の割合がかなり減じていることは明るい兆しで、自粛要請程度と言っては失礼だけど、強制力がないのにここまでできるのであれば、光りが見えてきたと思う。フランス人にはできないことだからだ。ぼくは遠いところからだから日本の状況がいまいちわかってないけど、フランスは海辺も法的に歩くのが禁止されている。なぜかというと、鎌倉の渋滞のようなことが起きるからなのだ。浜辺なら大丈夫だろ、というのは甘い考えで、そこへ行くまでのルートが危険になるということを想像してもらえるといい。フランスは沿岸警備艇が出て、ドローン飛ばして、浜辺でくつろぐ人を排除している状況が続いている。大変だとは思うけど、今がんばって感染爆発しないようにすることが自分にも跳ね返ってくるのだから、みんなで自粛しよう。
5月24日のオーチャードのコンサートをいち早く延期にしたのはまず観客の皆さんの命のことを考えて。ぼくがフランスから戻ることで、なんで辻、来たんや、と思う人の心も煩わせたくなかった。コンサートや舞台に関してはこれから皆で知恵を出し合って、早く再開できるように考えたい。文化を殺すわけにはいかないからね。ただ、今はこの感染パンデミックに対する知識がまだまだ浸透していない段階なので、普通に開催をしたら、感染を広めてしまう可能性も払拭できず、早く決断させてもらった。フランスも夏のフェスは全て中止になっている。ぼくのライブも来春になるけど、チケットは使えるので、そのまま保管しておいて(5月中旬に主催者が再度詳細発表します)。とにかく、みんな、がんばろう。大切な命を守って乗り切りましょう。