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滞日日記「最近の若者はやばい、と30歳くらいの若者が憂う、日本で戦う父ちゃん」 Posted on 2024/07/24 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日もスタジオで、引退公演ツアーの練習であった。
で、早く着きすぎたので、カフェで、お茶していたら、近くの席の若者が面白いことを言った。
「最近の若いやつはマジやばいな」
「うん。若いんだから、しょうがないけれど、世の中を知らなさすぎる」
で、還暦過ぎた父ちゃんが、振り返ると、30くらいの若者たちであった。ぎゃふん。
この子らがいう、若いって、いったい何歳を指しているのか、知りたい。
で、こういう子たちにとって、父ちゃんはどう映っているのか、訊いてみたい。
あはは、聞かないけれど。関係ないし・・・。
で、スタジオに行ったら、すでにメンバー全員そろっていた。素晴らしい。日本のミュージシャンはマジでプロフェッショナル過ぎる。
フランスのミュージシャンは時間前に揃うことなど、ほぼありえない。あはは。
12時集合、19時くらいまでほぼノンストップで練習をするのだが、ドラムのアスカちゃんは、そのあと、他のアーティストのゲネプロが21時からあって、翌日も、ぼくのリハーサルが終わって21時から本番なのだというから、げげげ、ひっくりかえった。
150センチちょっとの小さな女の子なのだけれど、実にパワフルなのだ。
他のミュージシャンもみんなリハーサルのあと、本番とか、別のリハーサルを抱えているのだそうだ。信じられないことだ。
父ちゃんの今度のライブ、管楽器のホーンセクションとかもあって、かなり、力が必要で、大変な演奏なのに・・・。
なんも予定がないのは、父ちゃんだけか、うう・・・。あ、個展があるか・・・。笑。
しかし、練習あとに、画廊に顔出したいけれど、まず、体力が持たない。
何せ、4~5時間は立ち続けて、しかも、ライブと同じ声量で歌っているのだから。
最近の超若い子を心配する30歳前後のあの若い二人にライブを見せてやりたい。年齢じゃないのだよ。☜ えらそうに、すいません。

滞日日記「最近の若者はやばい、と30歳くらいの若者が憂う、日本で戦う父ちゃん」

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しかし、ミュージシャンって、楽器をスタジオに運び込んで、そのために、車で移動して、アスカちゃんは、ぼくのスタジオにドラム&パーカッションワンセット運び、別のアーティスト用に別のセットを運んでいる、みたいで、いやはや、彼らのパワーすさまじい。
たぶん、アスカちゃん、20代後半だと思うけれど、引っ張りだこ!
今時の若者はすごいのだ。
バリトンのリエちゃんも年齢的にはそのくらいだけれど、頭脳警察のメンバーだというのだから、さらに驚いた。去年亡くなられたパンタさんのバンドと掛け持ちらしい。
バンマスのドクター・きょんさんは、ぼくよりちょっと年上だと思うのが、ぼくよりもパワフルで、そして何よりも、歌詞を重視して演奏する。おもちゃがキーボードの周辺を囲んでいて、のりのりの、変なおじさんだ。
トランペットのゆん君も韓国では人気ものらしいし、バイオリンの太田さんは、今回、お初だけれど、イタリア人のマリオに負けない、スーパーテクニシャンだし、この人たちとの演奏も、これで最後なんだな、と思うと、ちょっとだけしみじみする。
「いや、また皆さんと演奏出来て、楽しい」
ときょんさんが、言ったが、ぼくはこれが最後・・・。
公式ライブはもう最後だから、ぼくは次回、というのがない。
なので、毎日、かみしめながら歌っている。歩いてきた足跡を思い出しながら、ECHOESは楽しかったなァ、とか、ZAMZAのこととか・・・。
で、アスカちゃん、ECHOESのとある曲のアレンジで悩んで、ECHOESのドラマーの今川勉のアレンジを聞いて、考え込んでいた。
「そこ、ちょっと違うよね」
と元ボ・ガンボスのきょんさんに指摘され、すぐに音源を聞きなおし、目を細めて、勉の叩き方から何か受け継ごうとしている姿勢・・・、思わず、あの30歳前後の二人組の会話が頭をよぎったのだった。
「最近の若いやつはマジでやばいな」
やばくないね、そのあと、アスカちゃん。今は亡き、今川勉の遺伝子を吸収して、ドラミングにとりいれていて、おおお、鳥肌が走った。
でも、父ちゃん、自分でやめると決めたので、もう、笑顔しかないのだ。
最高のライブをやる、というのは、自分を崖っぷちに追いこまないとならない。ぼくの音楽は、そういう音楽なのだ。
ライブ会場ぽんぽん決めるのは別にけっこうだけれど、どういうライブをやるか、は、俺が決める。
中途半端なライブをやるのは、ぼくの生き方じゃない。だから、最初のくだらないタイトルは取り消して、「終わりよければすべてよし」にした。
覚悟して、観に来てほしい。笑顔で、最後まで楽しむのが、ぼくへのご褒美、あはは。
この時間は、二度と、戻ってこない。
最高の演奏開始まで、あと、一週間だ。いいね。

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それから、ミュージシャンたちは次のスタジオへと向かった。
ぼくはビールを飲みに、ひろびろとした焼き鳥屋さんに行った。ここはカウンターガ広いので、コロナが流行っているらしいが、ま、大丈夫だろう。
ビールを飲んだ。
「すいません、焼き鳥弁当を一つ帰りにもって帰ります」
大勢で騒げないので、一人で、乾杯をする。父ちゃん、お疲れ様。
愛を切らしている君に♪ 口ずさみながら・・・。

滞日日記「最近の若者はやばい、と30歳くらいの若者が憂う、日本で戦う父ちゃん」

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つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
いや~、終わり良ければすべて良し、の、終わりが近づいてきました。ベストコンディションですが、まだ、油断はできません。鼻うがい、うがい、手洗い、マスク、吸入器、消毒うがい薬、で乗り切ります。今週、仕事でぼくと会う予定の皆さん、解毒、お願いします。いひひ。

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