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滞仏日記「フランスで1,2を争う、我が人生最高のレストランとの出会い」 Posted on 2024/06/28 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、慌ただしいボルドー滞在が続いている。
ミュージシャンとしてライブをやらないとならない、上に、ぼくはボルドーワイン大使なので、ワイン協会の人たちとのミーティングや食事会まである。その上、ライブのリハーサルもやった。
で、夜ごはんにぼくら一行を、ワイン協会のフロランスという女性が招待してくれたのだがけれど、ここが、パリを含め、在仏歴22年になるぼくにとって、1,2を争うすごいレストランとの出会い、となった。といっても、それほど中心部にあるわけじゃないし、豪華な外観を持っているわけじゃなく、どちらかというとカフェのような佇まいだった。
ぼくら一行は10人だったので、ヒデは英語がペラペラだけれど、仏語が専門的になるので、通訳をかねてか、あの、ぼくのワインの先生、内田さんも参加され、フロランスやお店のオーナー、マキシムの早口の解説を、通訳してくださった。
で、着席するなり、いきなり、ブラインドテストが始まった。
つがれたワインは、どういう品種で、どういうものだとおもいますか?
もう、こういうなぞなぞがワイン業界の人は大好きなのだ。
で、だいたい、決められた単語が出てくる。グレープフルーツ香があるね、とか、渋みや、酸味が強いとか、ミネラルがどうのこうの・・・。
やれやれ、と思って口にいれたら、かつて込んだことがない白ワインだった。わずかに酸味があるのに(ぼくは酸味が嫌い)、でも、奇妙な風味・・・。
「辻さんは、いかが?」
「昔ね、好きだった子がいて、そこは福岡の中西部のどこかなんだけれど、いきなり夕立になって、その周辺の草原が雷雨で泡立つというか、草の煙のようなものがぼくらを包み込んで、ぼくはその子のことが好きだったから、振り返ったんだけれど、青い草と通過する雨の匂いだけが残され、その子は立ち去った、というような記憶にない記憶を揺さぶられました」
と答えたら、一同、大笑いで、
ぼくの目の前に座している、ELLEグルメのライターのうるわしの千代ちゃんが、
「必ず、女性が出てくるんですね。おもしろい」
とほほ笑んだので、ワインを女性にたとえるのは、ぼくが男性だから、と心の中で呟いたのだった。
ぼくにとって、ワインは、とくにぼくが好きな泡とか白は、やはり、女性にたとえたい。
みんなが期待しるような、ミネラルがどうのこうのって、ぼくは興味ないの。ワインは、好きか嫌いだけでいい。プロに任せたい、そういうことは・・・
内田先生が、相変わらず、苦笑していた。

滞仏日記「フランスで1,2を争う、我が人生最高のレストランとの出会い」

※ お馴染み、ワインの先生、うっちーこと、内田さん。指を指しているところに、彼の葡萄畑があるんです。すごい場所ですよ!!! 自慢な、先生。

滞仏日記「フランスで1,2を争う、我が人生最高のレストランとの出会い」

※ オーナーのマキシムさん。うっちー先生は、途中までずっと、ブリス君、と言っていたが、途中で名前が、マキシムであることが判明、ま、大笑い。
下、アジを吟味する、うっちー先生・・・。

滞仏日記「フランスで1,2を争う、我が人生最高のレストランとの出会い」



ところで、白ワインとあわせる感じで、提供された鱒のマリネとインゲンのサラダが、過去に味わったことのない味で、ちょっと驚いていると、オーナーのマキシムが、前菜を食べた後に、それを飲んでみてください、どんな変化がありますか?
試してみると、それまでちょっとつんとした女の子だったのに、時が流れ、それも数十年、その子が熟された人生を経験して、ますます、美しくなって、ぼくの前に立ったのだった。
そのことをぼくが日本語で言うと、ワイン関係者は、笑っていた。
「何か、かどがとれて、甘みというか、ふくらみが広がった。豊かになった感じ」
でも、マキシムが、その通りです、と言ったのだ。
ま、ぼくは詩人だからね、あはは。

滞仏日記「フランスで1,2を争う、我が人生最高のレストランとの出会い」

滞仏日記「フランスで1,2を争う、我が人生最高のレストランとの出会い」



RESSOURCESという店なのだが、開店して、一年半だというが、すでに、ミシュランの一つ星を獲得している。
そのあと、さらに個性的な白と魚料理が続き、最後に赤と肉料理が出た。
普通、ボルドーと言えば、赤なのに、ここで提供されたのは白が圧倒的に多かった。
とにかく、すべての料理とワインとのマリアージュが最高過ぎて、しかも、シェフが作る料理のクオリティの高さといったら、信じられないし、マキシムのワインセレクトのセンスが輝き(というのは彼は毎日生産者を訪ねて新しいワインを探している! この努力、見習いたい!)、こういう店、父ちゃんなりに、長く生きているが、経験したことがなかった。
「パリのレストランより、すごいですね、ほんとうに」
と、お世辞は言えないぼくちんが言うと、ボルドーワイン協会のフロランスが、日本語で、「その通り、ほんとうに、素晴らしいレストランです」とこたえたのだった。
フロランスは、4年、代々木公園のそばに住んでいた、という。だから、日本語が少し、出来るのだ。日本が大好きな人、いますね・・・。
そして、世界って、まだまだ、未知なるものがありますね。
はい、今日のライブ、がんばるよ~。
ボルドー、ベルセゾンの父ちゃんのライブチケット、完売しています。ワインの造り手さんたち、ボルドー在住の方々、日本文化に関心のある方が、大集合らしい。
よっしゃ、熱血で行くか!!!!

Ressources
126,rue Fondaudege ,33000 Bordeaux



滞仏日記「フランスで1,2を争う、我が人生最高のレストランとの出会い」

※ それにしても、うっちーは面白い。この写真通りの人なんだが、今後もボルドーで大活躍する生産者さんワインの先生でい続けることでしょう。

滞仏日記「フランスで1,2を争う、我が人生最高のレストランとの出会い」

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
体調もばっちり、加湿器をパリに忘れてきたのだけれど、湯沸かし器をつけて、寝たら、湿度調整うまくいきました。お肌にも、喉にも、湿度は大切ですからね、みなさんも、乾燥には気を付けてください。あはは。
ということで、明後日、30日は、いよいよ、パリのベルビル地区にある「ル・ゼブル劇場」でのライブとなります。こちらはまだ売り切れておりません。席もありますので、在パリの皆さん、ぜひ! とまれ、フランスツアー、順調なのじゃ!!!!
はい、その、パリ公演!
●6月30日、パリ、Le Zebre チケットはこちらから、どうぞ!
二階席は指定席、一階は、席がありますが、自由席になります・・・。
☟☟☟
https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-paris-concert-le-zebre-30-juin-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301135.html

7月3日、リヨン、La Marquise
チケットはこちらから、どうぞ!
☟☟☟
https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-lyon-concert-la-marquise-peniche-03-juillet-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301835.html

それから、来月は、いよいよ、日本での引退公演ファイナルツアーがスタートします。音楽興行の世界から、引退します。
父ちゃんのジャパン・引退・ファイナル・ツアー・・・。
7月30,31,8月5日、有楽町、ヒューリックホール。
8月7日、人生最大の千秋楽、大阪フェスティバルホール
と、なります。
お時間があれば、どうぞ、お立ちよりくださいませ~。最高のライブにしましょうね!!!!

そして、地球カレッジ、7月12日、第二回、エッセイ教室もあります。もう少し、文章で人生を豊かにしたい皆さま、どうぞ~。

https://tunagate.com/community/xWZVvgZD/circle/92861/events/329479

その他の情報~。

●7月20日から7月28日まで青山・新生堂画廊にて、個展!
●9月後半、コルシカ、アジャクシオ、ライブ。(ライブは、だいたい、9月25,26日のどちらかになります。作家としての登壇も予定しています)

あと、ツジビル・ラジオを、月に3回やっています。
皆さんのお悩み相談にこたえたり、一緒に考えたり、時事ネタもありーの、歌はないけれど、笑、お笑いもあって、楽しいひと時になることうけあいです。ラジオ好きな皆さん、どうぞ、ご参加くださいませ。
詳しくは下の、ツジビルサイトを、クリックね!
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TSUJI VILLE
自分流×帝京大学