JINSEI STORIES

滞仏日記「フランス人と結婚をした日本人妻に相談にのってほしいと懇願され。・・・壮絶でした!」 Posted on 2024/06/19   

某月某日、知り合いの、ぼくよりうんと若い日本人マダムの相談にのった。
知り合いの知り合いで、まだ40歳になったばかりの若いマダム、ミヤコさん(仮名)が、「先生、どうしても、相談に乗って頂きたいことがあるのです。お忙しい先生に、このようなことお願いしていいものか、悩んだのですが、お時間のある時に、ぜひ、話をきいていただければ、この先も、生き続けられるような気がするんです」
このような驚くべきメッセージが届いたので、ちょうど、パリにいたし、会議とミーティングの合間、一時間半程度の時間があったので、事務所の傍のイタリアンカフェで、向き合うことになった。
「主人のことです」
という切り出して、奥さんが話し出した。ツジビル・ラジオで、お悩み相談コーナーをやっているから、この手の相談には慣れっこの父ちゃんだったが、話を聞けば聞くほど、昨今のフランス人男性というものが、わからなくなる、不可思議な相談でもあった・・・。
「とにかく、いいひとなんです。私よりも10歳年下で、優しくて、日本好きだから、なんの文句もないんです。でも、あまりにどケチでして」
どケチ、という日本語、久しぶりに聞いたので、ちょっと身構えた父ちゃんであった。しかし、フランスの男性は、総じて、ケチではある。
「どのくらいケチなんですか? ケチということは、仕事がうまく言ってないとか、お金に困っている?」
「いいえ、彼の日当は600ユーロをくだりません」
ぼくは仰天した。600ユーロというのは、日本円にすると10万円となる。日当なのだから、月にすると300万円ほどになる。すげー。年収、3600万円なのだ。30歳なのに、すごくないだろうか? 日に、10万円も稼ぐのに、ケチ? 意味が分からない。
「でも、一週間の食費は60ユーロなんです」
「60ユーロ?」
60ユーロは、今日の換算レートで、1万円である。ということは一日の食費、1500円以内ということだ。
物価は日本の2倍と思ってもらえればいいので、日本だと、750円、になる。ランチが、だいたい、15ユーロくらい、ランチ平均で、2550円、それにビールとか飲んだら、3000円が普通・・・。
毎日、10万円稼ぐ男と結婚をして、一日、750円で朝昼晩と料理を作らないとならない。ランチなど、とてもじゃないが、いけない、食費、であーる。

滞仏日記「フランス人と結婚をした日本人妻に相談にのってほしいと懇願され。・・・壮絶でした!」



「物価高のフランスで、やっていけますか?」
「いけます」
力強い返事が戻って来た。
「ぜんぜん、十分やれると思います。贅沢は敵ですから」
「しかし、お肉とか食べられます?」
「何、言ってるんですか、スーパーのセール商品なら、豚肉、2ユーロで200g買えますし、2,3日は持ちます。細切れにして、野菜で嵩を出して、満腹にさせると、主人に褒められます。庶民はそんなもんですよ、先生」
「なるほど、わかりました。でも、ご主人の年収からすると庶民とはちょっと異なりませんか?」
「だから、どケチなんです。昨日も、夜に電気をつけていたら、ここはベルサイユ宮殿じゃないぞ、お前はマリー・アントワネットか、と叱られました」
「夜に、電気つけて、怒られる?」
「長くつけていると怒られます。そこに人がいれば、怒られませんが、廊下とかキッチンとか、つけていると、確実に叱られます。あ、でも、時々、リビングでテレビを見ていても、電気を消せって言われます」
「は?」
「テレビが光源だから、必要ないって」
なるほど、これはすごい、どケチ、さんである。
フランス人の男性はしかし、こういう人が多い。お金を貯めるのが、大事だと思っている人が多いから、ほんとうに、無駄遣いをしない。
「だから、外食は、多くて年に二回です」
「え、え、なんて?」
「年に、二回程度の外食率です」
「年二回? それ、少なすぎません? ちなみに、それは、どんな時?」
「どちらかの誕生日ですね」
「あああ、すごすぎる。耐えられるんですか?」
「慣れましたね。昔は、銀座で働いたこともありましたが、あの頃の贅沢は間違えでした。でも、それでも、少しは贅沢をしたいから、相談にきたんです」

滞仏日記「フランス人と結婚をした日本人妻に相談にのってほしいと懇願され。・・・壮絶でした!」



「外食したい時はどうするんですか?」
「こっそり、自分だけ、食べにいきます。日本人の友だちとか誘って」
「ご主人は?」
「プライベートには口を出しません。お金も出しませんが、自分のお金なら、何をしても、文句は言わないです」
ぼくは、メニューを掴んで、そっと彼女の前に置いた。
「よければ、好きなものを食べてください」
「いいんですか、ありがとうございます」
真剣に、メニューをのぞく、ミヤコさん・・・。けなげだ・・・。
「あの、ご主人、そんなに稼いでいるのに、まさか、ミヤコさん、お金を家にいれたりしています?」
「はい、要求されます。とはいえ、猫の餌代とか、シャンプー代金とか、家計の2割くらいですかね。君も働いているんだから、たまには、お金をいれなさいって。二人の食費口座があるんです。そのカードで食費は買っています」
「・・・」
ミヤコさんは、自由業で、不定期の仕事だから、固定収入があるわけではない。ない時は、ない、人なのだ。
それをわかっていて、入れなさい、というところが、フランス的である。男女平等、とは、こういうことである。
「彼は、Tシャツや、靴下に大きな穴があいていても、着続けます。とにかく捨てないんです。スーパーの紙袋も、包装紙も、雑誌も何もかも、すべて、とっておきます。だから、ゴミがでません」
「マジですか?」
「ずっと、学生のころから同じTシャツを着ているんです」
「フランス人男性って、そういう人が多いんでしょうか?」
「私の周りには結構いますね、でも、うちの主人のような極端な人は少ないかな」
「ですよね」
「食材も、絶対捨てるな、とくぎを刺されます。だから、食材のゴミに関してはゼロです。魚の骨とか、野菜の芯くらい・・・」
「エ、エコですね。かなり。あの、失礼ですが、資産とかあるんですか?」
「南仏とか、フランスのあちこちに、数件のアパルトマンを持っています」
「すごい。もともと、お金持ち?」
「いいえ、ケチ主義を通して貯めたお金で、小さなアパルトマンを買っていくんです。だから、いつもお金はないんです。会社員だと儲からないと思ったのか、最近、独立しました。そしたら、ばんばん、仕事が舞い込むようになり。彼は日本人をリスペクトしていて、時間に遅れたことがないんです。ZOOM会議も10分前には、パソコンの前に座り、ZOOMが開くのを待っていて、そこが人気の秘訣らしく。クライアントの信頼感はすごいです。そんなフランス人いませんからね」
「まさに、日本人っぽいですね」
「結婚しましたが、日本人でい続けてほしい、とフランス人になるのは拒否されています」
「えええ、結婚したのに?」
「なので、私、日本名、ミヤコ・アイザワで、ずっと、生きています」
「・・・・」
「あの、ミヤコさん、つかぬことをお聞きしますが、今、幸せ、ですか? あ、言いにくかったら、言わないで結構です」
「いえ、幸せです。とっても、幸せなんです」
「じゃあ、よかったじゃないですか?」
「ええ、ありがたいことに」
「じゃあ、相談とかいらないですよね?」
「あ、そうですね。聞いて貰いたかっただけかもしれないです。あの、でも、先生、最後の最後にちょっと訊いてもいいでしょうか。わたし、本当に幸せなんでしょうか?」

滞仏日記「フランス人と結婚をした日本人妻に相談にのってほしいと懇願され。・・・壮絶でした!」

※ この残ったボロネーゼ、誰が食べるのであろう・・・。



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ミヤコさん、残った料理をドギーバックに詰め込んでいました。きっと、ご主人と夜ごはんにするのでしょうか。物価の高いフランスで、週60ユーロで生活をする、というのは、うちの息子に聞かせてやりたいです。彼の一週間の食費が、ちょうど、60ユーロだからでした。がんばれ、ミヤコさん。もし、よければ、夫の悪口という連載を、デザインストーリーズで書いてもらえないでしょうか? もう少し、その夫のこと、知りたい~。皆さん、知りたいですよね? あはは。

はい、ということで、フランス・ライブ・ツアーが近い父ちゃんから、お知らせです。
今月の地球カレッジ、6月27日、ボルドー市内オンラインツアーをやります。なんか、ボルドーで美味しいもの、探しましょうね。
ボルドー市内を練り歩く、父ちゃんガイドは、こちら。

https://tunagate.com/community/xWZVvgZD/circle/92861/events/329477
そして、地球カレッジ、7月12日、第二回、エッセイ教室もあります。もう少し、文章で人生を豊かにしたい皆さま、どうぞ~。

https://tunagate.com/community/xWZVvgZD/circle/92861/events/329479

さて、さて、ボルドーに続き、そのあとは、パリに行きます。
●6月30日、パリ、Le Zebre チケットはこちらから、どうぞ!
☟☟☟
https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-paris-concert-le-zebre-30-juin-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301135.html

7月3日、リヨン、La Marquise
チケットはこちらから、どうぞ!
☟☟☟
https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-lyon-concert-la-marquise-peniche-03-juillet-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301835.html

それから、来月は、いよいよ、日本での引退公演ファイナルツアーがスタートします。音楽興行の世界から、引退します。
父ちゃんのジャパン・引退・ファイナル・ツアー・・・。
7月30,31,8月5日、有楽町、ヒューリックホール。
8月7日、人生最大の千秋楽、大阪フェスティバルホール
と、なります。
お時間があれば、どうぞ、お立ちよりくださいませ~。最高のライブにしましょうね!!!!

その他の情報~。

●7月20日から7月28日まで青山・新生堂画廊にて、個展!
●9月後半、コルシカ、アジャクシオ、ライブ。(ライブは、だいたい、9月25,26日のどちらかになります。作家としての登壇も予定しています)

あと、ツジビル・ラジオを、月に3回やっています。
皆さんのお悩み相談にこたえたり、一緒に考えたり、時事ネタもありーの、歌はないけれど、笑、お笑いもあって、楽しいひと時になることうけあいです。ラジオ好きな皆さん、どうぞ、ご参加くださいませ。
詳しくは下の、ツジビルサイトを、クリックね!
☟☟

TSUJI VILLE

滞仏日記「フランス人と結婚をした日本人妻に相談にのってほしいと懇願され。・・・壮絶でした!」

自分流×帝京大学