JINSEI STORIES

滞仏日記「ノルマンディの青い海を眺めながら、世界の明日、を話し合った」 Posted on 2024/06/13 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、海は広いな大きいーな、であーる。
ノルマンディの浜辺で、どこまでもどこまでも、三四郎を思う存分走らせてやった。
パリは、どこもかしこも、オリンピック大工事で、車での移動が今までみたいにスムーズにはいかなくなっている。
地下鉄に20年も乗ったことがなかった世間知らずの父ちゃんが、メトロのチケットを爆買いしたくらいなのだ。
今は、パリにいるとなんとなく、時代の大波にさらわれそうなので、田舎の海に逃げているのであーる。
だって、三四郎が遊べる公園はすべて封鎖されて、さんちゃん、歩道で、遊んでいるのだもの。ちょっとかわいそうなので、浜辺を走らせてやった。
ノルマンディの田舎には、人里離れた場所に、いいカフェやレストランがあるので、そこで、ちょっと、水平線を眺めて、小説の構想でもしたろうか、という父ちゃんであった。
のんびーり。

滞仏日記「ノルマンディの青い海を眺めながら、世界の明日、を話し合った」

滞仏日記「ノルマンディの青い海を眺めながら、世界の明日、を話し合った」

滞仏日記「ノルマンディの青い海を眺めながら、世界の明日、を話し合った」



で、ノルマンディには編集者の友人、ステファンが住んでいるので、朝、浜辺にあるカフェに呼び出し、落ち合い、今後のこと、についてモーニング食べながら、語り合った。
やっぱり、話題は、欧州のこの衝撃的な極右の台頭と、その未来、について、であった。
これは、ものすごいことが起こり始めているのじゃないか、と編集者は開口一番言った。
ぼくも、同じことを考えていたので、話し合いは白熱せず、意見の先が一緒だったので、やはりね、と頷きあった。
かんたんに、まとめると、EUは急速に弱体化する、ということだ。
極右が台頭というのは、つまり、フランスの国民が今の状態に不満を持っている、ということであり、それは移民問題だったり、EUそのものだったり、長引くウクライナ戦争への疲れだったり、いろいろあるのだけれど、とにかく、かつてないほど、フランス市民は、変革を求めている、ということなのだ。
つまり、極右が大躍進をしているが、左も躍進している。与党が一人負け。
あと、日本では極右というと、街宣車で抗議行動をするああいう極右を想像しがちだけれど、たとえば、今回選挙で大勝利をした国民連合(元、国民戦線)は、ソフト化を目指す極右政党で、実は、彼らがモデルにしている国があって、移民を極力受けいれない「日本」だったりするのだそうです。
なので、日本のメディアがこぞって、極右政党、と書いているのだが、実は、ちょっとニュアンスが違って、直訳するとそうなんだけれど、即、ナチスみたいなものではないわけです。とくに最近は、ソフト路線・・・。
でも、一度、集会に偶然、呑み込まれたことがあって、その時は、ちょっと怖かった。父ちゃん、顔がね、アジア顔だから、・・・

滞仏日記「ノルマンディの青い海を眺めながら、世界の明日、を話し合った」



「オリンピックの前に、こんなごたごたになって、しかも、3週間後に、下院の総選挙って、マクロンさんは気がおかしくなったとしか思えない」
とステファンが言ったので、ぼくは「計画的だと思うよ」とあっさり返しておいた。
そしたら、ステファンが目を見開き、しばらく黙り、ありえるね、と頷いた。
「首相のアタルさんがマクロンさんのやり方に不満をぶつけてるってニュースになっていたけれど、あれ、おかしいでしょ、絶対、アタル、知ってるし、芝居でしょ」
とぼくが言うと、ステファンが、ありえるね、と同意した。
極右勢力に負けるの分かっていて、ぼくはわざと、オリンピック前の夏休みの時期に選挙をぶつけて、だいたい超右の人たちって、ご年配の人が多いらしいので、その人たちがみんな田舎に行くタイミングを狙っているとしか、思えないのだった。
ステファン、笑った。
「いや、でも、期日前投票とかあるでしょ」
「いや、そこまでの熱意で国民連合(極右)に投票したんじゃないんじゃないかな、と。マクロンをおろしたかっただけ。今日さ、ルメールさん(経済・財務大臣)が、極右が次の選挙で勝ったらフランスは債務危機に陥る、と発言したよね? やっぱ、裏で、話し合っている感じ、しない?」
「でも、ツジー、それでも、与党は、負けるんじゃないか?」
「そうなんだよ。それでも、負けそう。かなりの賭けだと思う」
あはは。
ぼくらはパンオーショコラを、食べながら、議論をそこでやめた。
欧州各国で極右勝利し、その勢いで、トランプ大統領に戻って、EUが弱体化したら、ウクライナはロシアに負けて、BRICSが世界を牛耳るようになり。G7にかわるBRICS先進七か国会議が、世界の主案件を動かすようになって、実際、タイもBRICSに加盟したいみたいだし、日本、行く場所なくなって、詰むかもしれない。
国民連合の党首は、28歳のバルデラさん、もはや、アイドルのような存在になりつつある、と雑誌のポスターに書かれてあった。
さて、日本だが、世界規模で日本のことを考えられる若い政治家の出現を待つしかないのが、今、なのであーる。
それは誰か? 

滞仏日記「ノルマンディの青い海を眺めながら、世界の明日、を話し合った」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
世界は今、かなりの曲がり角に、強引に連れていかれ、そのカーブの先に崖があるのか、壁があるのか、わからない状態で、不意に、崩壊する可能性もあって、怖いですねー。青い海を眺めていても、なかなか、落ち着かない、今日この頃です。6月30日、フランスは総選挙、ぼくは、パリのベルビルでライブなのです。大丈夫でしょうか・・・。
ということで、いきなり、話がボルドーに飛びますが、笑、今月の地球カレッジ、6月27日のボルドー市内オンラインツアーをやります。
ボルドー市内を練り歩く、父ちゃんガイドを、どうぞ~。

https://tunagate.com/community/xWZVvgZD/circle/92861/events/329477
そして、地球カレッジ、7月12日、第二回、エッセイ教室もあります。もう少し、文章で人生を豊かにしたい皆さま、どうぞ~。

https://tunagate.com/community/xWZVvgZD/circle/92861/events/329479

さて、さて、ボルドーに続き、そのあとは、パリに行きます。
●6月30日、パリ、Le Zebre チケットはこちらから、どうぞ!
☟☟☟
https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-paris-concert-le-zebre-30-juin-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301135.html

7月3日、リヨン、La Marquise
チケットはこちらから、どうぞ!
☟☟☟
https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-lyon-concert-la-marquise-peniche-03-juillet-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301835.html

それから、来月は、いよいよ、日本での引退公演ファイナルツアーがスタートします。音楽興行の世界から、引退します。
父ちゃんのジャパン・引退・ファイナル・ツアー・・・。
7月30,31,8月5日、有楽町、ヒューリックホール。
8月7日、人生最大の千秋楽、大阪フェスティバルホール
と、なります。
お時間があれば、どうぞ、お立ちよりくださいませ~。最高のライブにしましょうね!!!!

その他の情報~。

●7月20日から7月28日まで青山・新生堂画廊にて、個展!
●9月後半、コルシカ、アジャクシオ、ライブ。(ライブは、だいたい、9月25,26日のどちらかになります。作家としての登壇も予定しています)

あと、ツジビル・ラジオを、月に3回やっています。
皆さんのお悩み相談にこたえたり、一緒に考えたり、時事ネタもありーの、歌はないけれど、笑、お笑いもあって、楽しいひと時になることうけあいです。ラジオ好きな皆さん、どうぞ、ご参加くださいませ。
詳しくは下の、ツジビルサイトを、クリックね!
☟☟

TSUJI VILLE

滞仏日記「ノルマンディの青い海を眺めながら、世界の明日、を話し合った」

自分流×帝京大学