JINSEI STORIES
パリごはん日記「友だちが人間関係でもめているので、相談役になったの巻」 Posted on 2024/05/15 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、ぼくの田舎の友人、チャールズは現在、家を建設中なのだ。
ところが、工期が遅れており、彼は胸を痛めている。
というのは、一部の業者が工事をしないのに、代金の請求をしてきた。彼らはもう半年以上、工事を遅らせていて、そのせいで、他の工事ができず、夏前には新しい家に引っ越せるはずだったが、今年の秋以降へと家の完成がずれこんだ。
しかも、ありがちなことだけれど、工事する人達は自分たちの非を認めない。チャールズはマッチョだから、そういうのに屈しないのだけれど、でも、子供もいるし、何がおこるかわからないから、ぼくはめっちゃ心配をしている。
奥さんのミハー曰く、あんなに激怒したチャールズを見たことがない、のだという。
なぜかというと工事が遅れたせいで、今の家を出ていかないとならないのだ。大家さんに少し出ていくのを伸ばしたいとお願いしたようだが、すでに次の借り手が見つかっている、とのこと・・・。やれやれ。
ということで、6月中旬にはどうしても出ないとならない。もう、すぐじゃん。
だけど、適当な家が見つからないので、相当に困り果てている。
そこで、「よければ、うちの家で暮らせよ」と提案をしたのだけれど、もちろん、その選択肢もいまだ残っているのだが、要は彼らは4人家族なので、ピアノもあって、うちはあまりに、狭すぎた。あはは。三四郎との生活にはちょうどいいんだが・・・。
「つじー、君の優しさに感謝するけれど、現実的じゃないんだ」
ということである。
じゃあ、とりあえず、うちにランチでもしに来いよ!?
ノルマンディ風仔牛の煮込み料理を作ってあげた。シェフに!えへへ。
フランスは、こういうトラブルだらけなのである。
とくに工事業者とのあいだでのもめ事が多い。日本みたいに時間通りに、工事が終わるということができない。電車も、普通に遅れてばかり・・・。
でも、一応、工期は決まっているから、それを過ぎると、工事人が弁償をしていかないとならない、そういう契約なのである。
でも、話の通じない連中みたいで、いろいろと難癖をつけてくる、らしい。
仕事はしないし、しまいには、「支払いをしない」と、警察を呼んでしまった。
もちろん、警察はすぐに事情を察し、逆に、この工事人たちが叱られることになるのだけれど、そういうトラブルって、ちょっとね、面倒だね。
怖いのは、逆恨み、である。
「とにかく、チャールズ、君のところには子供がいる。危害を加えられたら、困るだろ。穏便に済ませた方がいい。家を破壊に来るかもしれないし、何しでかすかわからない。弁護士を通して、君が表に出ていかない方がいいんじゃないか」
まともなことを言ったつもりだが、チャールズは、自分に非がないわけだから、なんで、こっちが折れないとならないんだ、と逆に怒りだした。
ま、その通りなのだけれど、友だちとしては、最悪を考えてしまい、心配になるものだ。
工事業者に脅されるというケースは、ぼくの周りでも、けっこう、おきている。
手口は同じで、途中で難癖をつけだし、工事費の増額を要求したりしてくる。
ぼくはいつも、友人のジェロームにしか頼まないので、チャールズにジェロームを紹介したいのだけれど、今のところ、カッカしており、聞く耳を持たない。
それに、ここで工事人を変えると、これもまた、火に油を注ぎかねない。
※ 親友のチャールズと。
コルシカ島に住んでいる友人の画家は、家を爆破されたことがあった。
コルシカは外からくる人にかなりシビアな面があるらしく、でも、そのおじいさん、新しい家をその近くに建てて、今でも暮らしている。
爆破って、どんな感じだったの? と聞いたら、ムッシュは、食事から戻ってきたら、家が燃え上がっていたんだよ、と笑いながら言った。
コルシカの人は気が荒いとは聞くけれど、いったい、何があったのだろう。
でも、そんなことがあったら、ぼくだったら、パリに逃げ帰るところだが、画家の友人は、いまだにコルシカで暮らしている。図太くないと、フランスでは生きられない。
一筋縄ではいかない世界だけれど、そこが、フランスでもある。
ぼくは今まで、一度も、工期を遅らされたこともなく、高額を要求されたこともない。ジェロームとの出会いは、まじで、運命的であった。
何か問題が起こると、今も彼がちょっと壁の工事をしてくれているけれど、笑顔でやって来て、ちゃちゃっと直してくれる。
「ツジー、このあいだ、パリに行ったら、君のライブのポスターを見たぞ」
とジェロームが言った。
彼はオリジンがイタリア人なのだけれど、いい友達だと思う。
「一度は、、ライブに来いよ」
「おお、必ず行くよ、メモしとく」
こうやって、ぼくは敵を作らない。信頼できる仲間たちに囲まれて、生きているので、みなさん、ご安心を。
郷に入っては郷に従え、という言葉、ぼくは好きだ。
よその国で生きるということから、ぼくは創作のヒントを受け取っている。
こういう人間関係を通して、ぼくもいまだ成長中。
とまれ、チャールズの相談相手にはなるつもりである。
※ 大の仲良し、ジェローム!!! こんなにハンサムだったっけ??? 笑。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
ノルマンディに友だちが増えてきました。気が付くといい仲間たちに囲まれています。ぼくもね、何かあると、チャールズやジェロームやニコラに頼ることの多い日々です。持ちつ持たれつ、という言葉がありますからね、みんなで力を合わせて生きていきましょう。
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なぜか、パリの会場よりも、売れています。売り切れる前に、お早目に!笑。
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