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パリごはん日記「母の日なのだ。世界中のお母さんたち、ありがとう! 甘くてすっぱい、レモンパスタ、どうぞ!」 Posted on 2024/05/12 辻 仁成 作家 パリ

パリごはん日記「母の日なのだ。世界中のお母さんたち、ありがとう! 甘くてすっぱい、レモンパスタ、どうぞ!」

某月某日、母さんから、ありがとう、とお礼のメッセージが、弟の恒久経由で、届いた。
「素敵なお花をありがとうございます。大好きな青色です」
フランスの「母の日」はもっと先のようだけれど(よく知らない、えへへ)、日本は5月12日なのである。
母さんには、産んで頂き、感謝しかない。
いつまでも、長生きをしてほい、と願わない日はない。
思えば、ぼくは母さんと喧嘩をしたことが一度もないのだ。
そのことを弟子の長谷っちに話すと、先生、それはかなり珍しいですね、もちろん、本気の喧嘩などはしませんが、親でも、普通、言い合いはしますけれど、という返事であった。
母さんに対し、ぼくは一度も声を荒げたことがないし、歯向かったことがない。
母さんは、ずっと、ぼくの人生における師匠のような存在であった。
ぼくが悪さをすると、じっと見つめて、言葉ではなく、視線で叱るのであった。これはすごいことだな、と今、思い返しながらも、思う。
あんなに無言が恐ろしいことはない。聳える仏様に見降ろされ、身動きできない蟻ん子みたいな子供の父ちゃんだった。あはは。
怒られたことはたくさんあるのに、喧嘩にはならなかった。おっと、褒められたこともあまりないのだ。親に褒められた経験があまりない、のは、なぜであろう?
ぼくは、同じような接し方で、息子と向き合っているような気もする。(とはいえ、一度だけ、彼が高校生の時に、とっくみあいをしたことがあったっけ。でも、あれも、喧嘩ではなかった。男同士の甘噛みの試合みたいな、笑)

パリごはん日記「母の日なのだ。世界中のお母さんたち、ありがとう! 甘くてすっぱい、レモンパスタ、どうぞ!」

※ お花屋さん、素敵なお花をありがとうございます。母が喜んでおります!!!



「パパ、今、家の近くで、アイスクリームを食べているんだ」
息子から、夕食の準備をしていると、連絡がきた。
今日は、母の日を記念して、母さんが好きだったレモンのパスタを作っている。女の人は、レモンが好きな人が多い。
ぼくが作るレモンパスタは、まず、レモンの皮をオリーブオイルで漬けて、そこに赤唐辛子をいれ、数時間放置する、で、そのオイルで作るのである。
レモンは、農薬を使ってない有機栽培のレモンじゃないとダメ。皮を食べるので。
その皮を包丁で殺ぎ切りし、中の白い部分は除去する。ここが渋みの原因になる。
それをスライスし、赤唐辛子と一緒に漬ける。うおおおおお、うつくしー。
「来るか? 君の大好物のレモンパスタ、作るところだ」
「いや、今、三四郎の公園で友だちとアイスクリーム食べてる」
「来ればいいじゃん」
「三四郎は? 散歩の時間じゃない?」
「いや、今、帰って来たところで、くたびれて寝てるよ」
「そうか、残念」
「だから、来ればいいじゃん!」
といった次の瞬間、アイスクリームを食べている相手は、もしかしたら、女の子かもな、と気が付いた、鈍感な、おやじであった。あはは。
「じゃあ、また、いつか来いよ」
「うん。そうする」
レモンオイルは、時間が経てば経つほど、香りが、オリーブオイルにとけこむので、そこは大事。
ボウルに、ツナ缶のツナ(エクストラバージンオイルで漬けたものを使用)を入れ、そこに、レモンオリーブオイル(ツナ缶のオイルもいいオリーブオイルならば、ちょっと足すと、さらにツナ味が加わり、いい感じになりますよー)、生クリーム少々、フラードセル、ブラックペッパー、ちょっとはちみつを入れて、茹で上がったパスタをあえるだけ。超簡単なのだ。
最後に、レモンの皮をチーズ削り器で、ちょっとこすって、全体に黄色い花粉のようなレモン粉の雪をまとわせるのが、コツ!!!
ひゃあああ。

パリごはん日記「母の日なのだ。世界中のお母さんたち、ありがとう! 甘くてすっぱい、レモンパスタ、どうぞ!」

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昨日の日記で紹介したフォーガ、ほら、鶏肉まるごと一羽裁いた時に出てきて胸肉があったことを思い出した。
昨夜、ビニールにいれ、マスタードとはちみつとワインで、漬けておいたのだ。
それを焼いて、パスタに添えた。
ハニーマスタードチキンも、はちみつが、甘みを引き出すのだけれど、パスタにも、はちみつをいれるのが、コツの2。
はちみつのハーモニーがばっちり。
赤唐辛子の辛みがここに、複雑な人生の光を、注ぐのであーる・ぱちーの。
なんか、甘くてすっぱい、って、青春の味みたいでよくない?
甘くてすっぱい、父ちゃんの、レモンオイルパスタ、いかが?

パリごはん日記「母の日なのだ。世界中のお母さんたち、ありがとう! 甘くてすっぱい、レモンパスタ、どうぞ!」

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※ きれいなお姉さんが近づいてきて、きゃわいい、キスしてー、と言っても、ふーん、な、三四郎。おめー羨ましいぞー、by父ちゃん。

パリごはん日記「母の日なのだ。世界中のお母さんたち、ありがとう! 甘くてすっぱい、レモンパスタ、どうぞ!」

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
パリは、今、どこも、花が美しく咲き誇っていて、もう、三四郎と二人で、うっとりしています。見上げると、家々のお庭の先できれいな花が、笑顔をむけてくれるので、いいですねー。素敵な母の日になりますように。世界中のお母さん、お疲れ様です。

そうそう、父ちゃんのエッセイ教室のお知らせですよ。
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パリごはん日記「母の日なのだ。世界中のお母さんたち、ありがとう! 甘くてすっぱい、レモンパスタ、どうぞ!」

※ 父ちゃんの画集と、最新小説が一緒になったアートブック「パリ情景、動かぬ時の扉」が帝京大学出版会から、7月13日くらいに、でます。この画集の中で一番古い絵は、1995年の作品、それか今年2024年まで、描き続けた、ずっしり、重たい80枚の絵と180枚の小説、176ページの大作です。あはは。個展会場でもゲットできますよ。新生堂、個展は、7月20日から。

そして、フランスツアーが6月に行われます。
パリは、ベルビルにある老舗の劇場「Le Zebre」にて行われます。チケットが発売になりました。在仏、在欧の皆さん、お時間があれば、ぜひに。
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●6月30日、パリ、Le Zebre チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-paris-concert-le-zebre-30-juin-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301135.html

そして、7月3日、リヨン、La Marquise
なぜか、パリの会場よりも、売れています。売り切れる前に、お早目に!笑。
チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-lyon-concert-la-marquise-peniche-03-juillet-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301835.html

●9月後半、コルシカ、アジャクシオ、ライブ。(ライブは、だいたい、9月25,26日のどちらかになります。作家としての登壇も予定しています)

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