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パリごはん日記「父ちゃんの親友のお父さんが天国に、でも、お葬式が素敵過ぎた」 Posted on 2024/05/07 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、朝から、ぐつぐつと煮込み料理を仕込んでいた。
今日は、当事務所の会長、おなじみふぐちゃんことブノワさんのお父様が亡くなられたので、その葬儀が午前中、あった。
亡くなったのは一週間ほど前だが、元陸軍の偉い兵隊さんだったので、軍人の方々が葬儀に参列するということで、たぶん、今日になった。
どのくらい葬儀に時間がかかるか、わからないから、モロッコ料理のクスクスを和風にアレンジした父ちゃん得意の「和風クスクス」を軽く仕込んでから、出かけることに。
食べられる状態にしておけば、戻って、さっと温めればそれで済む、・・・。
しかし、お葬式というのがどのくらい時間がかるものか、ぼくにはさっぱりわからない。カトリックのお葬式、はじめてなのだ。
在仏歴22年で、はじめての経験、・・・予想がつかない。
10時半に、葬儀が行われる教会に到着した。
ノートルダム寺院をちょっと小ぶりにしたような、このあたりでは一番大きな教会であった。
天井が高く、参列者は100人ほどだろうか。
ブノワさんのお父さんは、92歳であった。
ぼくも何度か、ご挨拶をしたことがある。(何せ、事務所が、お父さんの屋敷の一角を使わせていただいているのだから・・・)
神父様が、中心になって、ミサが行われるのだ。歌ったり、聖書の一節を朗読したり、家族が思い出を語ったり、もちろん、ふぐちゃんも立派なスピーチをしていた。
誰も泣き崩れたりしない。むしろ、映画の中のドラマティックな一場面のように、堂々と参列者と向き合い、きちんと故人のことを言葉にしていく。

パリごはん日記「父ちゃんの親友のお父さんが天国に、でも、お葬式が素敵過ぎた」

パリごはん日記「父ちゃんの親友のお父さんが天国に、でも、お葬式が素敵過ぎた」

カトリックのお葬式の仕組みのことはよくわからないが、葬儀は暗くも湿っぽくもなかった。
子供たちが広い教会内を走りまわり、お父さんやお母さんが追いかけていた。
ステンドグラスから差し込む光りが、あまりに美しく、ぼくはみとれてしまった。
パイプオルガンが鳴り響くと、誰かが賛美歌を歌い、(神父様も歌う)、とにかく、教会が大きいので、声がよく響き渡る。ハレルヤ、ハレルヤ~。
「主よ!」
この言葉が、一番、教会内で聞こえてくる言葉だったかな。

パリごはん日記「父ちゃんの親友のお父さんが天国に、でも、お葬式が素敵過ぎた」



最後に、軍人の方々が、棺を抱えて、教会の外へと。
参列者があとに続くのだ。ブノワさんがやってきて、ビズ。
背中をさすって、思いを伝えた。
また、連絡しますね、と言い残して、ぼくは教会をあとにした。棺を載せた霊きゅう車はそのまま、親族と墓地へいき、棺はそのまま土の中に土葬される。
今日は雲と雲の割れ目に、青空が見えていた。
事務所に戻ると、三四郎がぼくを待っていた。
「ふぐちゃんのお父さんのお葬式に行ってきたんだよ」
と告げた。
三四郎は、正座して、ぼくを待っていた。おやつボックスからサーモンのおやつを取り出し、はい、ご褒美だよ、とあげた。
それから、キッチンのクスクスを温めた。

パリごはん日記「父ちゃんの親友のお父さんが天国に、でも、お葬式が素敵過ぎた」



モロッコ料理のクスクスだが、ぼくはこれを日本風にアレンジして、おでん風、肉じゃが風にして、食べている。
普通は、アリッサをいれるのだけれど、ぼくは柚子胡椒を入れている。
クスクス(スムールという名前の世界最小パスタ=クスクス)ではなく、ぼくは玄米で食べるので、もはや、モロッコ料理でもなんでもない。
いわば、これはモロッコ料理ではない。でも、イタリアンなんかにも、ひよこ豆と豚肉の煮込みというのが存在する。白ワインで煮るらしい、おいしそうだ。
ぼくは、焼酎で煮込んだ。なので、ぜんぜん、クスクスじゃない。
クスクスじゃないのに、回りくどいが、モロッコを旅行した時に、この料理を思いつき、一切、モロッコのスパイスを使わないで、焼酎で煮込んだら、完全な和食ができてしまうが、一応、敬意を表して、モロッコ風豚肉の焼酎煮、と呼んでいる。笑。
特徴は、ええと、ひよこ豆だけ。あはは。
でも、ね、これがとっても美味しいのである。
ふぐちゃんが遊びに来る時に、彼の大好物だから、よく作ってあげる。一度、父親に食べさせたい、というので、身体に優しいから、いいんじゃないかな、と思ってタッパーに詰めて持ち帰らせたことがあった。
もしかしたら、ジェロームさん、ぼくの和風クスクスを食べたことがあったかもしれない。
ご冥福をお祈りいたします。
安らかに眠ってください。

パリごはん日記「父ちゃんの親友のお父さんが天国に、でも、お葬式が素敵過ぎた」



パリごはん日記「父ちゃんの親友のお父さんが天国に、でも、お葬式が素敵過ぎた」

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
材料は、蕪、レンコン、にんじん、豚肉、ひよこ豆、玉ねぎ(薄切りにして最初に炒める)、ニンニク二片、くらいなんです。焼酎とひよこ豆がとってもいい味を出すので、ぜひ、やってみて。アリッサをいれると、モロッコにより、柚子胡椒をいれると、九州に近づきます。白ワインで煮たら、イタリア~!!!!! 笑。

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パリごはん日記「父ちゃんの親友のお父さんが天国に、でも、お葬式が素敵過ぎた」

自分流×帝京大学