JINSEI STORIES
滞仏日記「パパがどんなにスーパー悪ガキだったか、子供の日に、思い出すの巻」 Posted on 2024/05/05 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、前から、生後二か月の子犬が、リード無しで、歩いてきたのだ。最近、公園でよく会うわんちゃんだったので、生まれたて、ということはわかっていた。。
でも、まだ二か月なのに、リードしなくても、ちゃんと飼い主さんの横にぴったり寄り添って歩いているのを見て、思わず、
「さんちゃん、なんで、あの子にできて、君にはできないの?」
と小言を言ってしまったのだった。
次の瞬間、記憶を揺さぶるものがあった。
実は、ぼくも父親に同じようなことを言われたことがあった。そして、それが嫌だった。
隣に住んでいた同じ年の男の子が、実に優秀な子で、勉強好きで、おとなしく、いつも本を読んでいた。
父ちゃんは、本なんか、読まず、原っぱを駆け回っていたので、たぶん、父さんはぼくに本を読ませたくて、比較したのに違いない。
「ひとなり、カー君は社宅の門の前で、本を読んでいたぞ。えらいな。それにひきかえ、お前は、どうだ。遊んでばかりだ。カー君を見習って、たまには、本を読みなさい」
と言ったのである。
そもそも、カー君がなんで、社宅の門の前で本なんか読んでいたのだろう。本を読むなら自分の部屋で読みなよ、と思った父ちゃんであった。
ぼくの教育方針に、「あの子はできて、お前はできない」という他の子との比較がないのは、まさに自分の経験からなのであった。
カー君、頼むから、家で本を読んでよ、とある日、頼んだことがあったっけ。
※ 弟の恒久と、大学生の時。右が父ちゃんね、(*`艸´)ウシシシ サーファーでした~。めっちゃもてたんだよー。かわいかったから~。あはは。
今や作家の父ちゃんだが、小学生の頃はとにかく勉強が大嫌いだった。たぶん、中学の時も、高校の時も、勉強なんかしなかった。宿題もやったことがない。
まじで、悪いことばかりやっていたのだ。
一番、覚えているのは、社宅の裏庭に、1メートルくらいの大きな穴を掘って、そこに枝を置き、その上にススキみたいな草を並べて隠し、大人たちを落とそうと計画した時のことだ。これは、何度かやったので、記憶が錯綜しているけれど、一番大きな穴に、バケツで水も入れたのだった。ひどいことをするものだ。
で、子分たちと物陰から見ていたら、どこかのおばさんに、耳たぶをぎゅっと引っ張られて、
「お前か、こんなこと考えたのは」
と怒られた。
「おばさん、そんなに怒らないでよ、子供のやることったい」
みたいな言い訳をしていたら、母さんがやって来て、そのあと、こっぴどく叱られたのだった。母さんは昔から、怖かった。
田舎に行った時、本家に偉いお坊さんがやって来て、たくさんの村の人が集まって法事か何かが行われたのだけれど、父ちゃんは、悪ガキだったから、お坊さんの草履だけじゃなく、大人たちの靴も全部、裏の畑のほし草の中に隠したのだった。
隠す瞬間が楽しすぎて、そのあとのことなど、考える暇もなかったのであーる。
すると、ばあちゃんが飛んできて、耳たぶを引っ張られて、ひとなり、この馬鹿たれが、ととにかく叱られたのであった。
もちろん、そのあと、母さんが真っ赤な顔でやってきて、その数十倍、こっぴどく叱れたのであーる。あはは。ぼくはそのばあちゃんによく叱られたので、いい記憶がない。笑。
ま、とにかく、悪い子だった。
本当に、悪さをするのが大好きで、だから、子供たちには人気があった。
※ 母さんと。悪ガキって、感じですよねー??? あはは。
そういえば、地球を転覆させてやろうと思ったこともあった。
あまりに、いつも両親に叱られるので、この社会がまとも過ぎるから、ぼくが叱られるのだ、と思ったのであーる。
そこで、ぼくは拾ってきた洗濯物を干す鉄の格子をつかって、世界を転覆させるために、妨害電波塔を作ろうと企んだのであった。
そこで、社宅の子分たちに、家にある電池を全部持ってこさせ、裏庭に、割と大きな鉄塔を作ったのである。
図工が大好きだったので、腕だけは器用で、はんだごて、とかも使えて、配線もおてのものであった。
それで、子供たちに集めさせた電池をつないで、鉄製の物干しざお?みたいなものにつなげ、
「妨害電波ー、世界を転覆させろー」
と叫んでいたら、後ろから、耳たぶを母さんに引っ張られたのだった。
とにかく、耳がいくつあってもたりましぇん~。
うちの息子は、逆に、そういうことをしたことがない。
「お前さ、もっと、子供らしく悪さとかしろよ」
と叱ったことがあった。
「なんで?」
「だってさ、親として、道を間違えた子供を叱って正すの、楽しいじゃん」
呆れた目でよく、見られた父ちゃんであった。
あはは。
でも、思うことがある。子供は、勉強ばっかりしちゃいけない。
いたずらも、偉大な創作の基礎なのである。世界をあっといわせてやりたいという思いがいたずらを生み出すわけで、あなたのお子さんがいたずらっ子だったら、ほめてあげてほしい。
大器晩成~。
※ 子供に戻りたい。笑。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
エッセイが届きはじめていて、すでに、8作、読みましたが、レベル高いです。おめでとう。8作、すべて、上手でした。男性が多いので、びっくりしましたが、このように、エッセイ、がんがん書いて、送ってくださいね、今、ちょうど、病み上がりだから、読む時間たくさんあります。
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