JINSEI STORIES
滞仏日記「日本で話題の共同親権について。フランスでは新たな動きが起きている」 Posted on 2024/04/25 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、日本では最近、「共同親権」という単語がよく聞こえてくる。
共同親権の導入が近づきつつある、という記事を読んだ。現在、日本は「単独親権」という民法が採用されている。
ぼくも10年前に日本の法律の下で離婚となった。
フランスで離婚をしていれば共同親権だったが、フランスでの離婚にはものすごい日数がかかるので、すぐに離婚したい人は日本での離婚を選んでいる。日本は、サイン一つで離婚が成立するが、フランスではそれはあり得ないからである。
で、ぼくに子供は託されることになった。
離婚届に、親権の欄があり、そこに記しをつけると親権が決まる。
しかし、これがフランスだと、そうはいかない。
フランスは、親権をどちらかが選ぶ、という選択肢がほぼない。
親のDVが明らかな場合など、その親の元で子供が安全に暮らせないと裁判所が判断した場合は引き離すことになるが、基本は、離婚後も双方が親権を持ち、子供は両方の親のあいだを行き来することになる。
いろいろなルールがあるが、子供が優先される法律となっているので、子供の生活圏からあまり遠くに住むこともできない。学校にある程度近い距離に離婚後も親は住まないとならない。子供の生活をなるべく変えない、子供があくまでも中心にあるのだ。
で、子供は、1週間ずつ、父親と母親の家を行き来することになる。
だいたい、金曜日から次の金曜日まで、という人が多い。
お父さんが、金曜日の夕方に子供を学校に迎えにいき、そのまま自分の家に連れて帰る。そして、そこからお子さんは学校に通うのだが、お父さんは金曜日の朝に学校に子供を送り届けるまでが役割となる。
その午後、お母さんが今度はお子さんを迎えに行き、子供は次の1週間をお母さんの家で過ごすことになるのだ。
ぼくの周りにも、離婚した夫婦がたくさんいる。何だか知らないが、離婚をしたのに、毎日のように連絡をとりあって、子供がその中心に鎮座しているのである。
離婚したら、バイバイ、とはならない。
むしろ、離婚後、子供を育てる新たな連合体が、はじまり、傍目に見ていると、同志みたいな感じで、子供を育てていたりするのである。
お互い、仕事がある時は、その辺の事情を考え、預かる日程に融通をきかせたり、・・・。面白い。
夫婦間の愛は冷めているが、子供を育てる共同戦線がスタートしている、という感じなのである。
これが、フランスの共同親権の、基本のような感じである。
ところが、最近、ここに変化が起きている。
ぼくのプロモーターのベルトランは、新しい共同親権の在り方を実践している。
これはなかなかユニークなやり方だと思う。
彼には二人のお子さんがいるが、子供達ではなく、元嫁さんと彼、つまり、親が子供達の住む家を行き来しているのだ。家はもともと家族で住んでた家で、家賃を半々で払っているのだと思う。お父さんとお母さんが子供たちの家に行き、1週間ずつ、過ごすのだ。
お互いのプライベートは守られ、子供たちも、環境を変えず、嫌なものを見ないで済む、つまり、両親の新しい恋人などに会う必要もない、のだ。
たとえば、ぼくの日記によく登場するニコラ君の場合、親はどちらも再婚をし、赤ちゃんがいたりする。
それでも、子供たちは、その両方の親の家を行き来しないとならない。これは、ちょっと残酷な話だ、とぼくは思う。(ところが、この話をママ友に話したら、それは違う、と否定された。つまり、ニコラは新しくやってきた自分の兄弟を喜んでいるはずだ、というのである。ぼくが日本人だから、そう思っただけで、実は、新しい家族のスタイルがそこにすでにある。これを複合家族、とこっちでは呼んでいる)
ということもあって、ベルトラン方式の新しい家族の在り方が生まれたのだろう。
子供は動かず、学業に専念できる。子供側からすると、何も変わらないのだ。
親だけが、入れ替わる、という、ちょっと奇妙なスタイルなのだが、子供は、ゲームに夢中だしね・・・。
今、フランスではこのスタイルがアラモード(流行)になりつつあるようだ。
とはいえ、3つの物件が必要になるので、経済的な問題もかかわってくるから、誰もができるわけではない。
日本のニュースを読んだら、共同親権に賛成、反対、それぞれの意見があるようで、今後どうなっていくのか、見守らないとならない。
子供にとって、親は、親なので、法律だけで決められる問題ではないだろう。
うちの息子が何をどう思ってこの10年生きてきたのか、ぼくには全部はわからない。
そばにいることが、ぼくの愛であった。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
今週末、息子がやって来て、また、ごはんを作ってくれることになりました。彼は中華街に近い街に住んでいるので、おいしいチャーシューをよく頼んでいます。本当の親子の関係はここからですね。彼が大学を出て、社会に出て、結婚をして、子供がもしも出来たら、いろいろとこの10年、何を思って生きてきたのか、話をきいてみたいと思います。
5月26日に、エッセイ教室をやります。正式募集は、5月1日ですが、課題は「お弁当」エッセイです。
詳しくは、とりあえず、こちらをご覧ください。
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https://www.designstoriesinc.com/wp-admin/post.php?post=52012&action=edit
それから、
月に3度、父ちゃんがお茶の間に登場し、熱血で語ります。
ツジビル村営放送、ラジオ・ツジビルは、こちらです。
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https://www.tsujiville.com/
さて、さて、日本での引退も決定したので、東京と大阪公演、これで当面、見納めになりそうですね。生涯、最高のライブにしますので、お付き合いください。
・東京3DAYS公演
7/30(火)ヒューリックホール東京
7/31(水)ヒューリックホール東京
8/5(月)ヒューリックホール東京
・大阪公演、ワールドツアー千秋楽!
open18:30/start19:00
8/7(水)フェスティバルホール大阪
open18:00/start19:00
さらに、、、、
フランスツアーが6月に行われます。
パリは、ベルビルにある老舗の劇場「Le Zebre」にて行われます。チケットが発売になりました。在仏、在欧の皆さん、お時間があれば、ぜひに。
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●6月30日、パリ、Le Zebre チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-paris-concert-le-zebre-30-juin-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301135.html
そして、7月3日、リヨン、La Marquise
なぜか、パリの会場よりも、売れています。売り切れる前に、お早目に!笑。
チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-lyon-concert-la-marquise-peniche-03-juillet-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301835.html
●7月20日から7月28日まで青山・新生堂画廊にて、個展!
●9月後半、コルシカ、アジャクシオ、ライブ。(ライブは、だいたい、9月25,26日のどちらかになります。作家としての登壇も予定しています)