JINSEI STORIES

滞仏日記「やばいくらいに斬新でうまい、のっとられつつある日本の食文化!」 Posted on 2024/02/22 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、最近、パリの日本食が大変なことになっているのであーる。
少し前まで、パリの日本食のほとんどが、日本人料理人ではなく、アジア系の方々がやっているすし屋とか天ぷら、焼き鳥屋であった。
8割から9割は、日本人ではないアジア系の料理人が寿司を握る店だったが、それは、いわゆる、日本料理をまねて、日本らしさに近づこうとして、がんばっていた料理であった。
たとえば、中華街系のフード関係者とかが、極端な例だが、日の丸を店頭に出して、寿司を作っていたし、フランス人も昔はそれが日本の料理だと思っていた。
ところが、漫画とかの影響や、SNSの広がりもあって、とくに若い世代から、それは日本人が食べているものとはどうやらちょっと違うということが広がりはじめ、ここ最近は、日本人が食べる日本食、和食、家庭料理に目が向けられるようになった。かなり、真剣なまなざしである。
で、数年前、日本のラーメンが大ブームになり、手打ちうどんやそば屋にも行列ができるまでになり、カツカレーが大ヒットするなど、寿司をまねているだけでは日本とはいえないムードが半端なく拡大したのだ。
アンパンとか、カレーパンとか、驚くべきことに、メロンパンを買い求めるフランスの若者が大行列をなすようになった。
しかし、ここにきて、さらにすごい動きが起きつつある。
フランス人たちが、日本人にかわって、新しい日本料理を創作し、ヒットさせはじめたのである。
驚くべきことに、それが、超、やばいくらいにうまいのであった。
当事務所の撮影主任のおなじみ小田光が、
「これは辻さん、日本の大危機です。6区にできた、やばいサンド、食べたことあります? めっちゃ、やばいんですよ」
「まじか!! 店の名前が、やばいサンドなの???」
光ちゃんが、大絶賛する「やばいサンド」、これは、見た目、日本のカツサンドのようなものの中身をいろいろと工夫している系のようであった。
おお、これは、やばい!

滞仏日記「やばいくらいに斬新でうまい、のっとられつつある日本の食文化!」

※ こちらの写真は、やばいサンドのHPから。やばいでしょ!?
そもそも、フランスのサンドイッチというのは、バゲットにハムとか挟むものをサンドというので、日本のようなサンドは逆に珍しい、そこに目を付けたシェフが、日本のサンドをいろいろとアレンジして、提供しているようなのである。



滞仏日記「やばいくらいに斬新でうまい、のっとられつつある日本の食文化!」

※ この怪しいパッケージ、読んでみて笑いました。「頂きます」とか「新鮮な魚」とか「日本製品」とか「酢飯海苔」って、・・・かなり、あやしい。こちらは、NOORIという巻き寿司のお店。斬新!

滞仏日記「やばいくらいに斬新でうまい、のっとられつつある日本の食文化!」

滞仏日記「やばいくらいに斬新でうまい、のっとられつつある日本の食文化!」

※ うおおおお、これも、やばくないですか!!!!

思えば、カリフォルニアロールというのがアメリカで大人気になった時、ぼくも含め、日本人は、「あんなもの寿司じゃない」と高を括っていたが、裏巻きというものを発明したのも、あの辺の人たちであった。
今や、裏巻きは、日本でも市民権を得ている。カリフォルニアロールも大人気!
今、それがフランスで起こりつつある、ということなのだ。
こちらの巻き寿司とか、カリフォルニアロールに負けないくらい、発想がユニークで、つまり、日本人が思いつかないというか、思いついてもやらない、というか、やっちゃいけない、伝統を侮辱しちゃいけない、幼いころから慣れ親しんだ味を侮辱できない、思いのせいで、ぜったいに作ることのできないような海苔巻きが生まれつつある。
そもそもパッケージが、怪しいし、よくわからない。
で、中を開けると、このような海苔巻きが入っているのだが、面白いのは、海苔のパリパリ感を失わないために、なんと、海苔が三重くらいに巻かれている点。
日本人に、その発想はない。
そもそも、裏巻きだって、そんなことしちゃダメだろ、と思っちゃうところを、なんも気にしないアメリカ人が作っちゃったわけで、日本人が日本の伝統に縛れて、大胆なことができないでいることろに背負い投げをかけられて、一本!
思えば、柔道も今や世界的に広まり、JUDOとなって、カラー柔道着の時代である。元柔道部の父ちゃんとしてはかなり複雑な気分なのだ。

滞仏日記「やばいくらいに斬新でうまい、のっとられつつある日本の食文化!」

※ 「いらっしゃい」のカツカレー!!!

滞仏日記「やばいくらいに斬新でうまい、のっとられつつある日本の食文化!」



デザインストーリーズでご紹介をした1区にできた日本食材専門店「いらっしゃい」は敷地面積、800平米もある巨大スーパーで、しかも、日本食材しか置いてない!
しかもしかも、連日、満員なのだ。
ここで出しているカツカレー、ぼくは二度も食べたが、美味かった。
オーナーは、ティエリーとザビエの二人で、彼らはここを拠点に和食をフランス全土に広める決意を持っている。800平米、家賃、いくらなの?
この運動の始まりは、元エアーフランスのパイロットのJBであった。たぶん。JBはあまりにラーメンが大好きになって、エアーフランスのパイロットをやめ、(?)すごいでしょ? そして、中野にある地雷源というラーメン屋の創業者鯉谷さんに師事したのだ。「こだわりラーメン」という名前で開業、これがオデオンで大ヒットし、今は、二号店がオペラにでき、ここも連日、長蛇の列!!!
しかし、JBのラーメンは日本の味や伝統をフランス人が学んで持ってきた功績が大きいのだけれど、ここ最近の傾向は、やばいサンドやNOORIのような独創的な味へと進化している点かもしれない。裏巻きのようなものが、フランスから出てくる日も近い?!
うかうかしていられない、父ちゃんも何かやらなきゃ、とフライパンをもって、キッチンで、焦っているのだから、勘違い男もはなはだしい限りであーる。

滞仏日記「やばいくらいに斬新でうまい、のっとられつつある日本の食文化!」

※ こだわりラーメン、JB元気かなァ~。

滞仏日記「やばいくらいに斬新でうまい、のっとられつつある日本の食文化!」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
日本のイタリアンって、本場イタリアのものとは違う感じで進化して、イタリアよりもおいしいイタリアンが食べられたりするわけですが、今、フランスでも、おいしい和食が、今までとはちょっと違う発想で進化している、というところでしょうかね。また、面白いお店が出たら、ご報告いたしまーす。
お知らせでーす。
伊勢丹アートギャラリーの個展ですが、気を付けてほしいのは、初日の28日は抽選で決まった方しか入れないので、正式には、29日の朝10時から、3月5日の午後6時まで、ご自由にご来場いただけます。「辻個展、29日から、3月5日まで」とメモをよろしくお願いいたします。混乱を避けるため、との画廊の判断ですので、ご理解ください。

●小説「十年後の恋」集英社文庫版、重版!
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

●6月28日、ボルドー・ライブ、予定。(詳細待って)
●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ。(詳細待って)

https://www.instagram.com/japan.stories?igsh=MTA2dWFjODdsZnNrZA%3D%3D&utm_source=qr
新しいデザインストーリーズのインスタも再始動! スタッフみんなで、パリの今を配信中!
https://www.instagram.com/designstories_paris?igsh=cHlpdGFvdWkyYmdj&utm_source=qr
・それから、ぼくのなりすましが、ファイスブックで暗躍していて、問題が起きている、というので、皆さん、フェイスブック、ぼくのなりすましには、近づかないように、友だち申請とかしないでくださいね。要注意です。
以上です。

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自分流×帝京大学