JINSEI STORIES
滞仏日記「パリで今もっともアートでおしゃれな地区、北マレで、ビジネスディナー」 Posted on 2024/02/16 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、ボルドーワイン大使になったこともあり、ボルドーからワイン協会の偉い方々御一行が、わざわざパリまでご挨拶に来てくださったのであーるぱちーのー。ぱちぱちぱち~のー。
会いに来るとは聞いていたが、北マレで話題の高級和食「OGATA」の特別室が用意されているというのだから、何を着ていけばいいのか、相当に悩んだ、父ちゃんだった。
ということで、三四郎をスタッフさんに預け、ビジネスディナーに出かけることに。
しかし、ちょっとだけ、気が重い。というのも、ビジネスディナーとかしたことがないのだから。うう、重い重い重い~。
ビジネスフランス語、というのがあるようだが、父ちゃんの場合、そもそも敬語とか、偉い人と話す言葉を知らなすぎる。
大昔、ソルボンヌ大学に行こうと思って、受付まで入った経験がある。入っただけで、パンフレットを貰って帰った。あはは。以降、ソルボンヌに入った、とみんなに言いふらして、この年まで生存してしまった~。
若いフランス人ミュージシャンたちとは会話が通じるが、歴史あるボルドーワイン協会のお歴々たちに稚拙な仏語が通じるのか、そこが気が重い。
丁寧語、vous=あなた、で話すと動詞も全部「ぶぼわいえ」的に変化しないとならい。tu=君で話すと仲間内の会話「ちゅとわいえ」になる。
父ちゃんは、ヤングマンの言葉遣いしか知らん。「ぶぼわいえ」で話さないと大変失礼になるばかりか、国際問題に発展しかねないのだ!!!!
それだけじゃない!!!!!
ouiという言葉は、ウイ、と丁寧に発音しないとならないが、ぼくの仲間のチンピラたちは、うえーっ、と、えーの発音を、⤴、とあげて、しかも、ゲッ、みたいにやる。これはもう、超汚い発音だ。うえー、うえー、うえー。絶対、やっちゃいけない。
それから、「ですよね?」みたいな会話の枕は、ぶぼわいえー、みたいに発音をするのだが、仲間たちは、みんな、ちゅぼわ、ちゅば、ちゅば、ちゅばーーーー、と、叫ぶのだ。訳すと、「ですよね?」、じゃなく、「だろ? やろ? じゃん?」、みたいな、意味もない、めっちゃフランク。要は英語のyou know?
つば飛ばしながら、ちゅばを連発するのだ。若いちんぴらはみんな、ちゅば、ちゅば、と鶏みたいに、意味のない言葉で、つつきあっている。
どっかの大学の先生が、ぼくの仏語はひどいと偉そうに、言っていたが、その通りで、ビジネス界では通じない。
でも、若いチンピラたちとは互角で渡り合えるので、現場向きの超生きた仏語なのであーる。バンドマンなので、当然だ、あはは。しかし、なかなか、この年で、若者の標準語が話せる老人もいないので、認めてほしい。ちゅば!
というか、それよりも、ボルドーワインのことをそこまで知らない父ちゃんが、そもそも、ちゃんとした発言ができるのか、(じゃあ、なんで、引き受けたのか、ということになるが、あなたしかいません、と言われたので、断れなかったんだよ!)、ってか、それ以上に、肩よりも長いロン毛だし、ちゅば、年寄りのくせに童顔で、ちゅば、まさに迫力のない父ちゃんなので、ちゅば、先方がぼくを見た瞬間「なんだこの変人、背が低く、とっちゃん坊やで、短足で、ああ、これじゃあ、ボルドーのイメージダウンだ、任せられない、やっぱこの人はダメだ、交代!」とかならないか、などなど、かなり心配したのであーるでこー。
そこで、当事務所の精鋭スタッフらに、何を着ていけばいいか、相談をしたら、「ありのままで行け」「スーツを着て行け」「着物がいい」など、適当な返事がかえってきたのであーる18成人映画~。
人のことだと思って、と一瞬、頭にきたが見放されて一人じゃ何もできない父ちゃんなので、何事もなかったのごとく、刀は鞘にすっとおさめ、いつもの恰好で、出かけたのであったー。
こういう時は、ヨージヤマモト、を羽織ると、アーティストっぽくなるので、尊敬するよーじさんをまとい(ごめんなさい、ぼくなんかで)、ボルドーなので、子羊の皮製のテンガロンハットをかぶって、ダイヤをあしらったステッキを振り回し、二頭立ての馬車にのって、夜のマレへと出かけたのだった。あはは。
めざせ北マレ、なのであーる。
おお、かっちょいい。
ぼくが住んでいる左岸があまりに霞むほど、現代アートの世界が広がっていたのだ。
レストラン・OGATAもやたらデザイン力が凄く、荘厳な空想的教会のような和風レストランだった。
でも、何を食べたか思い出せないくらい、緊張をした父ちゃん。
そこに、出現したのが、ボルドーワイン協会の重鎮たちであった。おっと、しかも、プレジデントが超美人なマダムじゃないか~!!! ちゅば~!!!
父ちゃんは、ヨージヤマモト先生のマントを翻し、右ひざをついて、マダム・フローランスの差し出す手に口づけをして、あんしゃんて、まだむ~、と正式なご挨拶をしたのであった。白い手袋を外してからよー。ふふふ。
そのあと?
ビジネスディナー?
父ちゃんがずっとしゃべり倒し、ボルドーの皆さんは、まさに、先生、その通り、とうなずいておられましたが、なにか。ちゅば!
つば飛ばす勢いで、ちゅば!ちゅば!ちゅば~!
というわけで、めっちゃ、うちとけたビジネスディナーは終わり、こちらの写真は食後に腕を組んで、撮影した一枚なのですが、いかがなものでしょう?
威風堂々の父ちゃん、ビジネス・ディナー大成功の巻でありました。えへへ。
人生はつづく。
ということで、6月28日に、ガロンヌ川の岸辺にあるガンゲッツ広場で、父ちゃんのライブがほぼほぼちゅばちゅば決定しました。ライブだけじゃなく、ワイン&和フードなども出して、日本祭りにして、盛り上げたいとみんな思っているので、ボルドー周辺に在住の皆さん、どうぞ、ご家族、ご友人を引き連れて、その際は、お集りください。成功しますように!!! ボルドーワイン協会のお歴々もちゅばちゅばちゅばパワーで、参加します~。ボルドーを盛り上げよう!!!
ふー、おしらせです。
伊勢丹アートギャラリーの個展ですが、気を付けてほしいのは、初日の28日は抽選で決まった方しか入れないので、正式には、29日の朝10時から、3月5日の午後6時まで、ご自由にご来場いただけます。「辻個展、29日から、3月5日まで」とメモをよろしくお願いいたします。混乱を避けるため、との画廊の判断ですので、ご理解ください。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版が1月19日全国発売。
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。(検索ください)
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟
https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator
●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ!!!
・ジャパンストーリーズのインスタ、はじまりました。
https://www.instagram.com/japan.stories?igsh=MTA2dWFjODdsZnNrZA%3D%3D&utm_source=qr
新しいデザインストーリーズのインスタも再始動しています!
https://www.instagram.com/designstories_paris?igsh=cHlpdGFvdWkyYmdj&utm_source=qr
・それから、ぼくのなりすましが、ファイスブックで暗躍していて、問題が起きている、というので、皆さん、フェイスブック、ぼくのなりすましには、近づかないように、友だち申請とかしないでくださいね。要注意です。
以上です。