JINSEI STORIES
退屈日記「わが友、野本に初孫、おめでとう、フランスの出産で驚くべきこと」 Posted on 2024/02/01 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、在仏駐在員さんが日本に帰ることになり、当事務所で送別会が行われ、そこに、我らが呑もちゃんも在仏日本人を代表して、いきなり、参加したのだった。
そして、やってくるなり、
「あのな、わし、ジジになってしもうたわ」
と言ったので、一同、驚嘆!
まじか!
長女さん、今日の午前10時に、男の子を出産したのだった。
「そんな、大変な時に、他人の送別会に来ていいの?」
「ああ、大丈夫。だって、面会できるの、4時から1時間だけやったから。あとはすることないし、お祝いしよ」
そして、写真を見せてくれたのだけれど、おおお、なんか、この世のものとはおもえない。それよりも、野本のお孫さんとは思えない、失礼、かわいい赤ちゃんなのだった。(何せ、娘さんが美人だし、奥さんも美人で、ご主人も、美男子のフランス人なんだから、・・・野本に似なくて、まことによかった)
「それがね、面白いことに、生まれたばかりの赤ちゃんをお父さんが裸で抱く必要がある、と病院が言うので、こんなことになっているんだ」
と一枚の写真を見せられた。
お母さんはベッドに寝ており、その隣の椅子に座るご主人が、上半身、裸になり、赤ちゃんを抱きかかえているのである。
そうすることで、親子の絆というか、赤ちゃんがお父さんを認識するのだとか・・・。なるほど、それはすごい!
※ 新しいお父さん、新しいお母さん、おめでとう。そして、生まれてきたぼくちゃん、ありがとう。人類が応援しています! この写真、実は、横のベッドに、奥様が寝ていて、ご主人と生まれたばかりの赤ちゃんを笑顔で見つめているのです。
確かに、服を着て赤ちゃんを抱っこすると、赤ちゃんが衣服の感覚を最初に覚えてしまいかねない。
でも、お父さんの皮膚にくっつけば、温度が伝わり、それは落ち着くはずなのだ。
いいアイデアだな、と思った。
呑もちゃんこと、野本がいつになく、幸福そうな顔をしているのが、伝わってくる。
よかったじゃないの~。
幸せそうな顔をして、三四郎を抱きかかえていた。
三四郎もそれがわかるのか、呑もちゃんの顔をぺろぺろと舐めていた。
祝福のキスなのであーる。
ともかく、この日記でいつも大活躍してくれている野本が、初孫と対面できたことは、人類の一員として、嬉しくてしかたなかった。
料理の腕が、うなる~。
※ 幸せ、そうじゃの~。えがった、えがった。
そんな、野本にも悩みがあった。
最近、愛犬が死んで、寂しい思いをしてきたのだけれど、家族が、新しい犬を迎え入れたい、と要望している、のだとか・・・。
奥さんは大の犬好き、いいじゃないか、とぼくが言うと、
「でも、もう、俺も年だから、犬の方が長生きをしたら、困るじゃないか」
と言うのだ。
あ、それ、なんとなく、わかる。
ぼくもそのことをよく考える。
三四郎より先に自分がこの世を去ったら、この子はどうなるのだろう、と・・・。でも、それはきっと、大丈夫。なんとかなるって。
野本は愛されているから、誰かが面倒をみるし、あいつ、世にはばかりそうだから、あはは。長生きするでしょう。
最後の犬だと思って、大事に育てればいいのである。
なんとなくだが、おじじになった野本ちゃんは、新しい犬を飼い始める気がする。
もしも、ミニチュアダックスフントだったら、三四郎のいい仲間になるのだけれど。
ということで、送別会、無事に終わったのだった。
ぼくは料理を担当し、駐在員さんを見送ったのである。
お疲れさまでした。
呑もちゃんも、お疲れ様~。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
2月になりました。個展とギタージャンボリーが近づいてきました。体調を整え、万難を排して、楽しみながら、一つ一つを、乗り越えていきたいと思います。
ねっけつーじー!
さて、今年の父ちゃんのスケジュールのお知らせです。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版が1月19日全国発売。
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●2月28日から、新宿伊勢丹のアートギャラリーで個展(詳しくまたご報告します)
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。(検索ください)
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟
https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator
●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ!!!
以上です。