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退屈日記「クロワッサン片手に、若かった頃、ハンチングをかぶって、レアール広場で」 Posted on 2024/01/30 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、あいかわらず、小説は書けず、絵ばかり描いておーる。
小説も書く気にやっとなったので、構想を練っているところだが、気が付くとカンバスの前にいて、小直し・・・。
午前中は、パリのアトリエで、50号の作品と向き合っていた。
しかし、思うように筆が動かないこともある。芸術家の父ちゃんは、試行錯誤の連続なのだ。うわっはっはっはー。ねっけつ~じー。☜新しい・・・。
昼に、レアール広場の近くに、新しくできたスーパー「いらっしゃい」でミーティングがあったことを思い出し、三四郎におやつを与えてから、出かけたのだった。
車を駐車場にとめ、外に出た。
まだ少し約束の時間まであったので、動画配信をやった。笑。いつも、気が向いた時に、勝手に配信をしている。
このあたりはルーブル美術館の裏で、ぼくが20代のころ、はじめてパリにやってきた時に、泊まったホテルがあった場所でもある。
なんで、一人で、パリにやってきたのか、思い出せないけれど、若い頃は一人旅が多かった。ねっけつ~じ~。
結婚をして、二人で旅することになり、離婚して、また一人で旅することになった。おっほっほー、それも人生じゃのー。ねっけつ~じ~。☜しつこい。
ということで、独身時代の原点だった、ルーブル美術館の近くにはレアール広場があって、よくそこで、クロワッサンを食べていたっけ、若かった頃、ハンチングをかぶって。
レアール広場には教会があって、その前に、変な顔の石の彫像があるのだ。そこに座って、ぼくはよく、教会を見上げていた。
最近、そのあたりにブルス・ド・コメルスというピノ財団の美術館みたいなものができ(安藤忠雄さんが手がけた)、人がまた集まるようになった。
不思議な場所で、ぼくにとってはパリのゼロ地点になるのかのー。思えば、このあたりから、フランスがはじまったのだった。サンジェルマン・デ・プレ、からはじまった、と言っていることもあるので、要注意。どっちやねん。

退屈日記「クロワッサン片手に、若かった頃、ハンチングをかぶって、レアール広場で」

退屈日記「クロワッサン片手に、若かった頃、ハンチングをかぶって、レアール広場で」



そのブルス・ド・コメルスの前に新しくできた日本食材専門のスーパーがあって、今日はそこで、共同社長さんのティエリーさんとザビエさんとランチをしたのだった。
ランチをしながら、日本の食文化をどうやってフランス人に広げていくべきか、みたいな議論になった。ティエリーもザビエも日本のことを驚くべき程よく知っている。
ぼくが、ダンチュー、で連載をしているんだ、とお伝えすると、
「あ、その雑誌知っています」
となった。
まさに、このスーパーは、フランス人にダンチュー的な日本食を伝授していきたい、という理念のもとスタートしているのである。
日本発信基地みたいなスーパーで、フランスでは絶対に手に入らないものをここに揃えたい、という二人のなみなみならぬエネルギッシュな話を、カツカレーを頬張りながらお聞きした、という次第であった。ねっけつ~じーずゥ、ZOO、ZOO。☜やかましい。
で、帰りに、コシヒカリを抱えてレジに行こうとしていたら、
「辻さんですよね」
と声をかけられた。おお、山崎ちひろさんであった。
4月くらいから、地下にあるレストランを任されるシェフさんである。お名前は知っていたので、名刺を頂き、おおおっと、あなたでしたかァ、となった、父ちゃん。
なんとなく、世間話がはずんだ。応援したくなるような柔和な方だった。
現在は、3週間くらいずつ、日本人シェフが交代で、ポップアップレストランをやり、バトンタッチリレーで、盛り上げているのだという。これも興味津々。
こういうイベント性のあることを仕組みながら、今までにない日本食文化をフランスに発信したいということなのだろう。日本文化会館をフランス人コンビがやっているみたいな、場所が、「いらっしゃい」です!!!
面白い試みだな、と思った。

退屈日記「クロワッサン片手に、若かった頃、ハンチングをかぶって、レアール広場で」

退屈日記「クロワッサン片手に、若かった頃、ハンチングをかぶって、レアール広場で」



ということで、ぼくはコシヒカリ、5キロを抱えて、三四郎の待つ自宅兼ねる事務所へと戻ったのだった。
ダンチューのフランス語版を出版したら、どうかな、と帰り道、思いついた父ちゃんであった。とりあえず、日本食の代表的なつくり方をフランス語に訳して、ぼくが監修をして、笑、フランスで出版してみてはいかがであろう? ☜勝手にすすめるな。
などと思いながら、再び、カンバスの前に座り、悩ましい絵と向き合った父ちゃんなのだった。
描いては塗りつぶし、塗りつぶしては絵の具を削いで、また、描きなおして、あっという間に一日が過ぎてしまったじゃないか。
クロワッサンをかじりながら、いつか、フランス人の前で歌うんだ、と思っていた25歳の父ちゃん、・・・。
それから、40年、オランピア劇場のステージに立ち、バラ色の人生を、歌ったのだった。
そして、今は、絵筆を握りしめ、エッフェル塔をカンバスに描いているのだから、人生というものは、まことに不思議ではないか。
ゴッホは十年で2000枚の絵を描いてこの世を去った。父ちゃんも、やりたい。ねっけつ~じ~じ~でいくのだ。
こうなる、と思い続ければそうなるが、そうなったからといって、こうなる、とも限らない、だからこそ、人生は面白いのである。
明日が楽しみでならない、父ちゃんなのだった。
おそまつくん。

退屈日記「クロワッサン片手に、若かった頃、ハンチングをかぶって、レアール広場で」



退屈日記「クロワッサン片手に、若かった頃、ハンチングをかぶって、レアール広場で」

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
クロワッサンも、時代とともに、変化しているんですねー。このピンク色のクロワッサン、どぎつい~、でも、おいしそう~。レアール広場、はじまりは、ここからでした。
はい、さて、今年の父ちゃんのスケジュールのお知らせです。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版が1月19日全国発売。重版出来!
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●2月28日から、新宿伊勢丹のアートギャラリーで個展。
☟☟☟ (詳細)
https://www.mistore.jp/store/shinjuku/shops/art/artgallery/shopnews_list/shopnews0467.html
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。(検索ください)
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ザ・ウオーター・ラッツでのライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ!!!
以上です。

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