JINSEI STORIES
滞仏日記「英国からやってきたヒデとロザンナ、言葉が通じなかったが、音楽で響き合う」 Posted on 2024/01/28 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、パリに戻った足で、スタジオへと向かった。
今日はロンドンから、ギタリストのヒデとマネージャーのロザンナ(本名、ミカちゃん、元サウンドエンジニア、現在、在英企業の部長さん)がやってきて、4月19日のロンドンライブに備え、リハーサルをやった。
英国限定ユニット、2Gz(ツージーズ)の初練習であった。
そのことを息子に告げると、ルイとユゴーと見学に行きたい、ということになり、若い3人組までやってきた。あはは。
ぼくが三四郎を預けるのにてこずりちょっと遅れたら、スタジオの前で早く到着していたユゴーとヒデ&ロザンナが仲良さそうに話し合っていた。(英語で)
ルイ君はオランピア劇場でのライブも撮影してくれた若手カメラマンなので、急遽、スタジオの廊下で、アーティスト写真の撮影までやることになった。ポーズをとった2Gz・・・。
「ヒデ、笑わないで、しゃきっとして」
とロザンナ。ロザンナはいつも笑顔だが、ヒデには厳しい、笑。さすが、ヒデとロザンナであーる。
といっても、まだ、ヒデとセッションをやる、前・・・。笑。
音が合わなければ、どうしよう、と思いながら、ぼくはスタジオに顔を出したのだった。ロザンナもそれが心配なようだった。ヒデ、ちょっとミスが多いのだ。いろんな意味で・・・。携帯を忘れたり。笑。
昨年10月、ポール卿主催のロンドンライブの後、まず、ロザンナに声をかけられ、ヒデを紹介され、今日のセッションが実現した。
ミュージシャンが気楽にスタジオなどで音合わせすることを、セッション、という。
お互いの技術を確認しあう、審査ではないが、腕試し。
ECHOESもそういうセッションから生まれた。
なのに、無謀なことに、その初リハーサル風景を動画配信してしまった、父ちゃん。
そんな自分の行動に呆れてしまうが、でも、こういう瞬間って、作られたものじゃないし、非常に珍しいことだし、なんとなく、予感があった・・・
ロザンナはずっとペンライトを振っていた。
ヒデは楽譜を見ながら、ぼくは様子を見ながら、の演奏が続いた。
だいたい、最初の16小節くらいで、あうかあわないか、がわかるものだ。しかし、32小節を過ぎても、64小節を過ぎても、掴めない。むむむ、・・・
ただ、ヒデはちょっと不思議なミュージシャンで、マリオやジョルジュとは違っていた。
何が、違うのか、最初はわからなかった。ずっとへらへら笑っている・・・。
でも、途中で、本質の違いがわかった。
彼はクラシックの畑からやってきた音楽家なのだった。英国の音大を出ている、でも、ストリートの出身ではなかった。
なので、ギターがやたら上品なのだ。ブラジル人のジョルジュやイタリア人のマリオとは全く真逆なのだった。
音大の音。
ぼくは路上で歌っていたので、路上の出身であった。
そこが、ヒデとぼくの決定的な違いでもあった。
しかし、ロックじゃないのだけれど、不思議な新鮮さがあった。そうそう、それに、ロンドンの音なのだ。ぼくはやっぱり、フランスで20年も生きてきた音だった。
日本、英国、フランスをつなぐ音だった。
※ 左が、ユゴー君で、右が、ヒデ君でーす。奥で頭を抱えているのが、ロザンナ!
そして、ヒデはずっと笑っているのである。
ロザンナも、笑っている。この二人、ぼくの日記をまねて、
「いいのであーる」とか「おいしいのであーる」
とからかうのであーる。
ヒデは、ぼくがちょっと厳しいことを言っても、笑っているのだ。あまり、ぼくの周辺にいないタイプなのだった。
「どこ出身」
「京都です」
なるほど、・・・
なんというか、安土桃山時代とかに河原で草を加えて昼寝をしている坊さんのような、いい意味で浮世離れをした時空を超越したかの人物であった。
ロザンナも、笑顔しか想像ができない浮雲のような存在なのだった。(実際は、文才の持ち主だが、このタイプに作家が多い。当サイトのロンドンミュージックライフは、ロザンナが書いている!!!)
またまた、ぼくの前に出現した奇妙な二人組、ギタリストのヒデと2Gzマネージャーのロザンナ(村人)とは、4月と6月の英仏ライブを共にやることになった。
クラシック畑出身のヒデとロック畑出身の父ちゃんがどこまでコラボできるか、まだ、全貌はわかっていないが、配信の後の反響はよかったので、頑張ってみようと思う。
実はヒデも持病を持っており、インシュリンを投与しながら日々頑張っている。
ハットもかぶっているし、髪の毛も長いし、ヒデもいつも英国ではマダムと間違えらているそうだから、2ハッツ・ツインズ組として、英仏の人たちをどこまで驚かせられるか、楽しみで仕方ない。
4月19日のロンドン、ザ・ウオーターラッツでのライブ。
6月28日のボルドー・ライブ。(予定)
6月30日のパリ・ライブ。(決定)
7月3日のリヨン・ライブ。(ほぼ決定)
で、暴れまわりたいと思うのであーるぬーぼー。
いつか、愛と音楽を武器に、分断気味の欧州を統一させたい、ふふふ、熱血~。
つづく。
練習のあと、仲間のまえしんこと、前田シェフの店、Aux 2 Saveurs(オ・ドゥ・サヴール)に二人を連れていくと、こんなのロンドンでは食べたことがない、と大盛り上がりのヒデとロザンナ(ミカ)でした。ロンドンの方が大都市なのに、やはり、食はパリなのか、とほくそ笑んだ、父ちゃんでもありました。えへへ。
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟
https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator
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