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滞仏日記「恋ができない父ちゃん、でも、愛がないと生きるのもつらいし、悩むね」 Posted on 2024/01/21 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、文庫版「十年後の恋」を買いに行ったが、その書店、最後の一冊で、最後の一冊を自分が買っていいか、悩んで少しの間、店内をぐるぐる回っていたら、その間に売り切れてしまった。
ということで、買って帰れない事態に、あはは、どうしよう、スタッフさんや、ライターさんに頼まれていたのだが。(特に、長谷っちに)
この小説は、離婚から十年が経ち、もう恋なんかしないだろうと思っていた主人公が、不思議な魅力のある謎の紳士と出会って、自分でも忘れかけていた恋情が芽生え、恋に落ちていくのだけれど、その相手にはちょっと不可解な事情があり・・・、という物語なのだが、これ、実際にあった話を人づてに聞いて小説化した。
さらに、ぼくも個人的に離婚から十年が経ち、子育てが精いっぱいだったので、恋というものとはここまで無縁で生きてしまうと、なぜか、恋はその時はいいのだけれど、そのあとの面倒というか、大変を思い出し、もう頭に思い出よりも苦しみがこびりついており、・・・ある種の恋アレルギーに、・・・。
フランスの美しい女性に口説かれたこともあったが、ところが、昔だったらまず考えられないことに、その申し出をことごとく遠慮させていただいたこともあった。あはは。☜ウソだと思います。すでに作家癖が・・・。
とまれ、愛のあとにくるものが、大変過ぎて、笑、愛のあとに、エネルギーが吸い取られ、打ちのめされ、しばらく、本気の恋情は女性に対して抱けなくなった、というのは事実で、息子たちからも「もうやめとき」と反対をされておるので、三四郎愛で頑張る父ちゃんなのだが、もしも、もしも、これから先、ずっと一人でいいのか、という悩みもある。
結婚はもうしない、と心に決めて生きている。
落ちるような恋も、それをやるだけのパワーがもう喪失しているので、もう、できない、と思う。たまに、カフェでフランス人のマダムと目が合う、きわどい瞬間もあるのだけれど、自分からそらしてしまう、臆病な父ちゃんなのであった。あはは。

滞仏日記「恋ができない父ちゃん、でも、愛がないと生きるのもつらいし、悩むね」



「十年後の恋」の主人公には、自分ができないことを、させてみた、というのが本音で、疑似恋愛的な、書いている時、ぼくはある種、この失われた十年の愛の喪失からのリハビリをやれたように、思う。
ぼくが今、想像するのは、こういうことを書いていいのかわからないが、将来、ぼくを看取ってくれる人、相手に失礼だから、(家事は得意だから)世話になりたいとも思わないが、老人ホームの一番の話し相手のような人と、いつか、出会い、・・・ま、そんな、ソウルメイトがほしくなるかなァ~、と思う時もある、ふふふ。
結婚は契約だから、その後が実にめんどうだし、なんとなく、いつも、話しをしあえる、心の支えのような人が、ほしくなるかもなァ、とは思っているが・・・。
最近、とある女性と握手をしたら、その皮膚感覚にドキッとした。えへへ。
ただ、それは恋だろうか?

滞仏日記「恋ができない父ちゃん、でも、愛がないと生きるのもつらいし、悩むね」



ぼくが欲しいのは恋じゃなく、別れとか、無縁のものじゃないかな、と思う。
こんなぼくの周りにも、ぼくと気が合うママ友たちがいる。
離婚をして今は一人の人もいるし、離婚はしてないけれどご主人とはうまが合わず、いつもぼくとしか話さない奥さんもいる。
結婚をしたことのないマダムもいるし、よく会うけれど、会話のない芸術家の女友だちもいる。
しかし、恋にはならない。
なってもおかしくないくらい近いのだけれど、友だちでいる方が楽しい、ということもある。ぼくの曲の「友情」がまさに、そういう世界観なのだ。
小説「十年後の恋」の主人公も、ぼくと同じ気持ちからスタートしている。十年に及ぶ子育ての過酷さの中で、愛に走る方法を忘れた女性・・・。
その一線を超えるものはなんだろう。
皆さん、一緒に考えてください。

滞仏日記「恋ができない父ちゃん、でも、愛がないと生きるのもつらいし、悩むね」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ということで、文庫版「十年後の恋」は発売されていました。久しぶりに、一瞬、書店で、実物を拝むことができてよかったです。その後、新刊小説が出てないので、予定もないので、ここはぼくの小説を読んでもらうラストチャンスかもしれません。笑。
さて、今年の父ちゃんのスケジュールのお知らせです。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版が1月19日全国発売。
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●2月28日から、新宿伊勢丹のアートギャラリーで個展(詳しくまたご報告します)
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。(検索ください)
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ!!!
以上です。

滞仏日記「恋ができない父ちゃん、でも、愛がないと生きるのもつらいし、悩むね」



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