JINSEI STORIES

退屈日記「ロバート・キャンベルさん、宮本亞門さんらと相次ぐ会食で文化交流」 Posted on 2024/01/20 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日は一日、ギャラリーTで昼と夜、料理をしてすごした。
昼は、東大の先生、ロバート・キャンベルさんがやってこられ、彼の著書「戦争語彙集(岩波書店刊)」を手渡された。
気になっていた作品だったので、うれしかった。
ウクライナの詩人(オスタップ・スリヴィンスキー氏)が、ロシアによる進行の直後、その土地で暮らす人々の証言をあつめた散文集で、キャンベルさんの訳著となっているが、出版されるまで、実に長い年月とご苦労があったようだ。
まずは、戦時下のウクライナで暮らすオクタップさんを探し出さないとならない。
いったいどうやって、その詩人を探し出したんですか? と訊ねてみた。
あらゆる手を使って、月日をかけ、諦めず、居場所を突き止め、ZOOMで何度も話し合い説得をしたのだ、という。(ZOOMなどはできるようですね)
その後も戦争は続き、2年以上の歳月が流れている。
詩のような散文で、ウクライナの人々が戦争と対峙したときの、本心が語られてる、ようだ。言葉はそれだけ重要なメッセージを含んでいるのだ、と思う。
帰りの機内で、ゆっくりと読んで、もう少し、ご紹介出来たら、と思っている。
お礼にぼくは料理をした。
そして、二人で、西麻布の高層ビルを眺めながら、簡単な食事をした。ぼくは「鳥の王」という歌も披露した。
キャンベルさんがされたことは小さなことではない、その本を出すために傾けた人間の意味と情熱は計り知れない。
「今日、オクタップさんが来日していて、このあと、会うのです」
とキャンベルさんは言い残して、ギャラリーTを後にした。

退屈日記「ロバート・キャンベルさん、宮本亞門さんらと相次ぐ会食で文化交流」

退屈日記「ロバート・キャンベルさん、宮本亞門さんらと相次ぐ会食で文化交流」



夕方、今度は宮本亞門さんや山種美術館館長の山崎さん、デザイナーの鵜ノ澤さん、経済の専門家、ジャーマンさんがやってきて、ぼくの料理を食べていただいた。
こちらは、リシェスという雑誌が「サロン文化」を紹介するというので、取材を申し込まれ、計画されたのだ。
ぼくはキャンベルさんと同じように宮本さんと食事をする予定だったが、急遽、ギャラリーTの活動を紹介する取材の日となった。宮本さんは、不意に取材になったことに、快く参加してくださった。
カメラマンさんや編集者の方々が大勢見守るなかの、料理会、となった。
山種美術館の館長のお話が興味深かった。昔に描かれた9匹の犬の絵が現代人の心をつかんでいるのだ、という。三四郎を思い出した。
話しは広がり、なぜか、三島由紀夫につながる文学や戯曲、演劇、さまざまな方向へと向かった。
まさに、現代のサロン文化の場所となるような会が演出できたように思う。
もっとも、ギャラリーTはぼくが腕を振るう時は、こういう文化サロンになることが多いはずだが、3月8日以降、一般に貸し出す時には「レンタルキッチンスペース」ということになる。
友だちでパーティを開いたり、ご夫婦の銀婚式、お父さんの還暦祝い、女子会、男子会、同級生の集まり、忘年会、など、多岐にわたって利用方法はさまざま、という文化料理施設を目指しているのだった。詳しくは、また次回にね。
で、ホテルのグランドシェフが、ぼくにかわり、時にはぼくのレシピをもとに、皆さんに料理をふるまう時もあり、皆さんが自ら料理をしてもいいし、ギャルソン、ソムリエを招いて、カクテルだけの会合に使わることなど、使い道は千差万別なのである。
ぼくはここに「匂いをつける役目」なのだ。
友だちを招き、ここを麻布、六本木界隈の文化発信サロンにしたいなァ、と思っている。知の交換をここでやれると、いいね~。おいしいごはんと一緒に。

退屈日記「ロバート・キャンベルさん、宮本亞門さんらと相次ぐ会食で文化交流」

退屈日記「ロバート・キャンベルさん、宮本亞門さんらと相次ぐ会食で文化交流」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ということで、着いたばかりですが、もう、日本に帰ることになります。誰とも会うことができませんでしたが、来月、いよいよ、伊勢丹ギャラリーで個展なので、ぼくのチームは、そこに向かっていますね。でも、伊勢丹は新館の一階にもギャラリーがあるようなので、間違えないでくださいね、本館6階にある「伊勢丹アートギャラリー」ですから。
え? また、来月、日本か、すごいハードな日程ですが、今月末に英国で結成した新ユニットのリハーサルがパリであるんです。それと、フランスの美術関係者とのミーティングなどもあり、身体が一つなので、時差が安定する前に、パリ時間に戻ります。
さて、今年の父ちゃんのスケジュールのお知らせです。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版が1月19日全国発売。
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rittoli社から刊行されました。
●2月28日から、新宿伊勢丹のアートギャラリーで個展(詳しくまたご報告します)
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。(検索ください)
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ!!!
以上です。

退屈日記「ロバート・キャンベルさん、宮本亞門さんらと相次ぐ会食で文化交流」



自分流×帝京大学