JINSEI STORIES
滞仏日記「パリの息子ではない方の、東京の息子くんと言い合いになった」 Posted on 2024/01/19 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、ちょっと体調を崩し、出版社との打ち合わせなどをいきなりキャンセルした父ちゃん、皆さん、ご迷惑をおかけいたした、でござる。
申し訳ない。時差がきつく。
それでも、どうしても行かないとならない用事があり、新小川町の出版社まで出かけたのだった。
というのも、伊勢丹アートギャラリーにあわせて「画集」を出版することになっておる。
その色調整のためだった。
古い付き合いのデザイナー新妻久典氏と印刷会社の技術者五十嵐さん、大塚さんと画面をのぞき込み、じっくりと、色の調整をやった。
実際の絵と写真撮影したものでは、色が違うので、ぼくがどうしても自分の目で確認と調整をしないとならなかった。
ぎりぎりのスケジュールであったが、なんとか、個展までに画集は完成することになった。
画集といっても、美術画集専門の出版社からの自費出版で、超限定販売。増刷はしない。英語、仏語、日本語による、自著解説つき。
というのも、画廊での個展=絵を売る、というのが最初わからず、売れるとその絵はぼくの手元からなくなる、ことが判明・・・、あはは。ですよね・・・。
今日、印刷所の帰り、息子夫婦と食事をした。
実は、東京の息子くん、プロの画家なのである。売れっ子らしい。
7,8年前に、小さな個展を一度観に行っただけなのだが、抽象画画家なのだ。
しかも、伊勢丹での個展に関して、今まで、一度も彼にだけは言ってなかったから、今日、いきなり、会ったとたん、携帯で、個展フライヤーのスクショを見せられ、ギクギク、っとなった父ちゃんであった。
「うあああ、なんだよ、それ、どうした」
ニヤニヤしている・・・。
「ネットで拾った」
とにかく、個展に行くね、と言うので、恥ずかしいから、絶対に来ないでね、と断った。
君はプロなので、恥ずかしいから、見せたくない、と正直に言うと、なんか、ものすごい勢いで、「絶対に行くから、一緒に絵を見ようよ!」と言うのである。
げげげ、・・・わ、笑っておる・・・。
「初日はいるでしょ? 28日に、絶対に行くよ」
「28日だけ、入場制限があるらしいから、入れないよ」
「裏から入るし、知っている人もいるから」
というので、28日の初日は行くのをやめようか、と真剣に悩んでいるところ・・・。笑。
※ このフライヤーが息子画伯の携帯に入っていた・・・。
悪いが、君が来ると、画廊の人たちも緊張するだろうし、そっとしておいてもらえると、助かる、というような押し問答を繰り返した挙句の、ま、いつもの、楽しい食事会なのであった。
ともかく、ぼくの家や事務所に長年飾ってあった大事な絵はもう、ぼくのものではなくなるので(売れたらの場合ですけどね)、画集にして残そうと決めたのだった。
もっとも、超限定発売なので、売り切れたら、そこで終わり、という出版物である。
たいして、刷ってないので、なくなったら、ごめんなさい。
頭痛も息子夫婦二人の顔を見たら、少し、治ってきたので、明日は、きっと頑張れるだろう。熱血~。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
いろいろとありますが、あまり日記では書いてこれませんでしたが、長男君とそのお嫁さんとは仲良くしているのです。もっとも、彼はかなりなアーティストなので、会うと、こういうやりとりになるのだけれど、空手4段のお嫁さんが、絶妙に二人のあいだに、割り込んでくれて、もう、涙しか、出ません。長い人生の道のりでしたが、振り返ると、感謝しかないですね。
さて、今年の父ちゃんのスケジュールのお知らせです。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版が1月19日全国発売。
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rittoli社から刊行されました。
●2月28日から、新宿伊勢丹のアートギャラリーで個展(詳しくまたご報告します)
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。(検索ください)
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟
https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator
●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ!!!
以上です。
※ 三四郎は、今回、マントふみこさんにあずかって頂いております。犬好きで、世話好きのぼくよりも年上のおっとりマダムですので、超、安心ですね。パリは大雪だそうです!
「さんしーさんは、雪が怖いみたいですと」と写真にコメントあり。