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退屈日記「坂本龍馬が残した日本の未来、運輸、商売、投機、開拓の精神を今こそ」 Posted on 2024/01/17   

某月某日、「友だち」と「仲間」と「知り合い」に大別することができる。
しかし、この三つの区分には微妙な違いがあって、とくに「友だち」と「仲間」の差を説明するのは難しい。
どちらにしてもぼくにとって、大事なのは、つかず離れず、影響しあえる、関係である。
この日記によく登場する呑もちゃんこと「野本将文(のもとまさふみ)」は、坂本龍馬と同じ高知県出身、で、このおやじは、龍馬の遺伝子を持っている。
坂本龍馬は、倒幕を企てた張本人で、「幕府では欧米には勝てない」と思っていた。そして、彼がやった功績の中で一番面白いのが、日本で最初の株式会社「亀山社中」を設立したことであろう。これがのちに「海援隊」になる。
龍馬は、これからの日本はビジネスが大事だ、と考え、海援隊での仕事を「運輸」「商売」「投機」「開拓」とした。
武士の生まれではあったが、商いこそがこれから大事になると真剣に考え、そこを追求することになるのだ。しかし、その志半ばの、31歳で命を奪われている。

おなじみ、野本もフレンチのシェフを目指して若いころに渡仏し、修行を重ねたが、欧米のレベルが高すぎて、道半ばでフレンチのシェフの夢は諦めている。
しかし、龍馬的な英知を振り絞り、日本人だからできることをやろう、と計画。
日本を売るべきだ、と考えを改め、讃岐うどんに目を付け、高知出身だから「讃岐」とは謳えず「四国うどん」というネーミングで、パリでもちもちうどんを、ヒットさせた。今から30年も前のことである。

退屈日記「坂本龍馬が残した日本の未来、運輸、商売、投機、開拓の精神を今こそ」

退屈日記「坂本龍馬が残した日本の未来、運輸、商売、投機、開拓の精神を今こそ」



野本の尽力もあり、パリには、うどんの専門店がひしめくようになり、どこも行列ができている。
この男は、おにぎりにも目を付け、おにぎり製造機を日本から輸入し、現在のおにぎりブームの先駆けの一人となった。
ということで、この男の面白いのは、チャンレンジをし続けること、なのだ。
大成功していたうどん屋「国虎屋」を炭火を専門とする焼き鳥屋に大転換させた。同じことをやり続けるより、挑戦する人生を選びたい、とパリの龍馬は思ったのだった。
ちょうど一年前、シャルボン「国虎屋」という焼き鳥屋風和食店がスタートした。正直、最初は、もちろんうまかったが、材料調達や炭の確保に手間取り、日本の焼き鳥には追い付けていなかった。
客も戸惑ったようで、滑り出しは、順調というわけではなかった。
フランス人に本物の焼き鳥の味を伝えるのが難しそうで、大丈夫かな、と心配もしたが、先日、ひさしぶりに食べに行くと、ちゃんとした焼き鳥になっていた。
これが、日本の有名焼き鳥店に負けないくらいの「味」に到達していたのだから、友だち、仲間としては、うれしかった。満席だった。
フランスのブランド鶏「ブレス鶏」にこだわり、皮パリ、肉もちもちの、日本の焼き鳥に負けないものが出せるまでになっていた。
「俺はしょせん、うどん屋で偽物だから、還暦過ぎた偽物が本物を超えるまでは挑戦する」と言い切って一年、ぼくが唸るようなうまい料理が並ぶ店に到達していたのだった。
で、最初はいまいちだったものな、とぼくが本人に言うと、
「馬鹿言ってんじゃないよ」
と生意気に、怒るのだけれど、友だちだから、ウソは言いたくない、まずい時はまずいと言える関係でいたい。なので、おいしかったから、
「まじで実にうまい焼き鳥になったなァ」
と大きな声で喜びを伝えたのだけれど、気に食わないのか、
「馬鹿言ってんじゃないよ。最初からうまいぜよ」
と言い張るのである。
本当は、ほめられてうれしいくせに、素直になれない呑もちゃんなのだ。

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でも、大繁盛していたうどん屋から、高級焼き鳥店への変貌は思ったよりも大変であったに違いない。
しかし、65歳で、いまだ、厨房に立ち、鶏を焼き続けているこの男は、いい仲間だなァ、と思う。友だちといえ、なあなあの関係とか、よくないしね。切磋琢磨してこその仲間なのであーる。
頑張っている、お互い頑張って、だから、たまに会って、乾杯をすると、頑張った者どうしだから、こそ、理解し合えるものがある、というものだ。
足を引きずりながら、厨房の中で、若い子たちに指示を飛ばしながら、日本の伝統料理「焼き鳥」をフランスで広めようとする野本将文の新しいチャレンジ、見守りたい、と思う。
「おいしくなったな、さすがやな、やればできる男やね」
「馬鹿言ってんじゃないよ。最初から、おいしいぜよ」
あはは。
ほんとうは、うれしい、くせに。

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※ トキナンブール、という菊芋の一種。これをスライスし、まるで「ガリ」のようにして、カニとあえた一皿。あのおやじが創作したとは思えない、上品な味わい。

退屈日記「坂本龍馬が残した日本の未来、運輸、商売、投機、開拓の精神を今こそ」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ということで、野本は龍馬の教え「運輸」「商売」「投機」「開拓」をいま、いい年なのに、実践しようとしています。友達なので、応援しているのです。熱血~。
さて、今年の父ちゃんのスケジュールのお知らせです。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版が1月19日全国発売。
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rittoli社から刊行されました。
●2月28日から、新宿伊勢丹のアートギャラリーで個展(詳しくまたご報告します)
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。(検索ください)
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ!!!
以上です。

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