JINSEI STORIES

退屈日記「ごめんなさい。今年一番のパリ・ケーキが年末にもう一つ、出現したのだ。大感動!」 Posted on 2023/12/24 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、先日の日記で、2023年の最高・一等賞ケーキは、リッツ・パリが出した、125周年記念ケーキだと書いたばかりで、さすがに、もう出ない、と思っていたところに、出現したのだった。
今年も残すところあと一週間というぎりぎりのところで、リッツ・パリの記念ケーキと並ぶ、(もしかしたら、もう一度買うならどちらかと言われると、悩むほどに)すごいケーキに出会ってしまったので、ご報告したい。
ぼくが唸ったのは「レイヨナンス」という日本人の若い女性パティシエール二人、ユキさんとルミさん、でやっているケーキ屋さんなのであった。
今回、知り合いからこちらのクリスマスケーキを頂いただけなので、お店に顔を出したわけではないし、お二人との面識もない、彼らの歴史もよく知らない。(ミシュランの星付きレストラン、パジェの厨房で二人は出会った、らしい)
意気投合をした、二人はが今年の9月20日に、開店したばかりのパティスリーなのだ、そうだ。
これらはフランスの雑誌で読んで知っただけなのだけれど、へー、とかいいながら、「ほうじ茶のサントノーレ」にスプーンをさして、口に運んだ瞬間、
「え、」
と腕が止まった。
「おいしい」
次に出てきた言葉は、予想を超える感動の、おいしい、なのだった。

退屈日記「ごめんなさい。今年一番のパリ・ケーキが年末にもう一つ、出現したのだ。大感動!」

退屈日記「ごめんなさい。今年一番のパリ・ケーキが年末にもう一つ、出現したのだ。大感動!」



何せ、ほうじ茶が濃厚なのである。きちんとほうじ茶の香ばしさを感じる。
フランスでこの手の日本のお茶を利用したケーキを食べて残念なのは、ほうじ茶でも、玄米茶でも、その良さがクリームの味に負けていて、存在感が薄いこと。
しかし、「レイヨナンス」のほうじ茶のサントノーレの生クリームは、(ほうじ茶感)強いのではなく、果てしない広がりがある。
口腔に、一瞬で、ほうじ茶の世界観を定着させる、これには、驚いた。
ほうじ茶であることがよくわかる、日本人にはうれしい仕上がりなのだ。(フランス人も、最近、ほうじ茶に目覚めた人が多い。玄米茶好きも増えた)
そして、クリームが命のサントノーレだからこそ、この深い広がりを持つ生クリームに圧倒された。脱帽だった。
「おいしい!!!」
次の瞬間、ぼくはもう、虜になっていた。この二人に感謝をしたい、と思ったほど、世界が変化したのである。
ホイップクリームの上の薄い板チョコは、先に紹介したリッツ・パリほどの薄さではないが、深みのある板チョコが、クリームと混ざるたび、サクサクと口の中で、はじける。添えられているキャラメリゼ(?)されたクルミとのバランスが素晴らしい。
そして、底にうっすらチョコレート系の何かでコーティングされたサブレが敷かれてあり、それとの相性も抜群なのだった。
サントノーレには必ずシューが添えられているが、こちらは中に濃厚なクリームが詰め込まれていて、でも、シューがさすがに日本人パティシエールなんだよね、フランスの普通のシューじゃなく、やや、しっとりとした和菓子とは言わないけれど、こだわりを感じる、しとやかなシューで、これにも唸ってしまった。
あっという間に、ぼくの分は消え去るのだけれど、心に、今年一番かも、という感動が残ったのだった。
他にもいろいろとおすすめがある、とフランスの記事に載っていたので、2024年はパリのお菓子界で、台風の目になること間違いなし。
若いが、偉大な経験を持つこの若いパティシエール二人組に期待とエールを送りたい。
マジで、素晴らしかった、のであーる。ここは、食べてもらいたい。
世界で勝負できる力と感性を持つ二人の未来が楽しみでならない!!!

退屈日記「ごめんなさい。今年一番のパリ・ケーキが年末にもう一つ、出現したのだ。大感動!」

※ 公式サイトより、ユキさん、と、ルミさん。ありがとう。応援しています!!!

パティスリー・レイヨナンス
17 Rue de Maubeuge
75009 Paris 9



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ということで、父ちゃんの個展、近づいてきましたよ。2月28日から、伊勢丹デパート、本館6F,伊勢丹アートギャラリーにて!!!!

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