JINSEI STORIES
滞仏日記「三四郎と父ちゃんの太陽を求めての南下政策、ただいま計画中!!」 Posted on 2023/12/22 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、とにかく、パリが暗いのだ。
雨、雨、雨、どんよりとしていて、カフェに行くとみんな、年末年始を南で過ごすぞ、と騒いでいる。
「アヴィニョンに行くぞ」「モンペリエに行くんだ」「俺はマルセイユだ」
とムッシュもマダムも、南仏に逃げ出そう、と語気を荒げている。そのくらい、クリスマス前なのに、パリがとことん暗いのであった。マジ、暗いわ。
「辻さん、憂鬱になりますね、こんな天気じゃ」
と歯医者のレミー先生も言った。
ぼくの歯はわずか数十分で完治した。
そのあと、ニースとかいいですよね、とレミー先生がつぶやいた。
みんな、みんな、南へ行く計画を練っている、今日の暗いパリであった。
ということで、父ちゃんと三四郎も、南へ逃げ出すことを話し合っているのだ。
「わんわん」
「ふんふん、そうかそうか、暗いか」
「わんわんわん」
「よし、南の浜辺を走りたいんだな。わかった、なんとかしよう」
ということで、犬語が堪能な父ちゃんはさんちゃんにレインコートを着させ、今日も雨のせいで泥沼化している公園を散策したのだった。ああ、ビタミンDを飲もう!
父ちゃんはインターネットで、南仏、地中海方面、北アフリカ、あたりで、太陽を浴びることのできる避暑地はないか、探したのだった。
旅人系日本人ユーチューバーの動画が参考になった!
ふふふ、見ているだけで、楽しい。
NHKの有馬さんから「辻さん、やっぱり、長距離夜行列車の旅がいいですよ」というメッセージも届いた。
確かに、そうなると、オーストリアとかハンガリーとかドイツとかスイスとかになるのだけれど、太陽がね~、寒いしなー、と悩んだ父ちゃんである。
格安航空会社の飛行機で、地中海周辺の島、というのもいいよね。イビサとか、マルタとか・・・。
本当は、ハワイに行きたいけれど、遠すぎる、さんちゃんは無理。
要は、犬をのせられる航空機会社が限られているし、犬と一緒に座れる席も限られているし、専用バックに入れて、8キロ以内でないとならない規則もあったり。
さんちゃん、今、6,3キロもあるので、バックをいれて、ぎりぎり、8キロ手前というところだから、これ以上は太らせることもできない。
いろいろと悩んだ結果、イタリアか、スペインか、ポルトガル、という選択肢が残ったのであーる。最悪、どこも、車で行くことができる!死ぬ気で運転すれば。
今日は実に一日中、南の街の動画とか情報をチェックしていた父ちゃんであった。
具体的には、スペインだと、オレンジで有名なバレンシア、コルドバ、おなじみバルセロナ、カディス、グラナダ、ジブラルタル、セビーリャ、などが候補にあがった。
悩む~。
スペインでも特に南のジブラルタル海峡周辺は、面白いよねー。
だんぜん、食べ物が違うのだ。アンダルシア地方だよね、ディープな味が楽しめる。
豚ロース肉のウイスキーソースがらめってのがあって、一度食べてみたい。
暑い国で太陽をにらみつけながら、スパイシーな肉にかぶりつきたい、おらー、悪玉コルステロールを気にしながら、貪り食べてやりたい~。
ポルトガルだと、リスボンか、ラゴスか、ファロあたりかなァ。
そして、イタリアなら、行ったことのない南のプーリア州、サルディーニア島、ナポリとかか、おお、行きてー。
プーリア州は、食べ物が口にあうし、もうアドリア海の向こうはバルカン半島が広がってるしねー。
ボスニアヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、アルバニア、だもの。今、観光地として、これらの国々は大人気だから、そこもいいんだけれど、でもやっぱ、プーリア州に行ってみたい。
プーリア州の料理って、同じパスタでも、サンドイッチでも、同じイタリアの食べ物なのに、味も触感も全然違う、らしい。いまだ未経験のものがいっぱい、あるらしい、のだ。日本なのに、沖縄行くと食べ物が違うような感じ?
とにかく、イタリアも南が面白そうなのである。
やァ、今日は歯医者さんで歯の治療をした以外は、ずっとガイドブックとか旅系ユーチューブを見て過ごした父ちゃんとさんちゃんでした。
そのあと、ちょっと雨があがったので、三四郎を連れて、シャンゼリゼを歩いたのだけれど、やっぱ、ちょっと暗かった~、ため息。
はー、太陽が恋しい。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
ということで、明日には、獣医さんのところに行き、三四郎にワクチンとか、ノミ撃退薬とかもらわないと。備えあれば患いなしですからね。クリスマス開けには、パリよ、さらば、という感じ目指しています。おすすめの街があったら、教えてください。太陽を求めて南下する予定の人間の父ちゃんと、かわいい犬のさんちゃんでした。めるしー。